農民連 食品分析センターが調査女性農業者の尿から
|
関連/農薬についてしっかり学び賢く農作業しよう /有機野菜を食べてネオニコの残留減らしたい |
しかし近年、ネオニコ系農薬の環境や人体への影響を指摘する研究が出ており、EU(欧州連合)では3成分の屋外使用を禁止。アメリカでも規制の動きが始まり、日本でも「みどりの食料システム戦略」で削減に触れられるなど、世界的に規制が広がっています。
私たちの尿からネオニコ系農薬が検出されることはいくつかの研究が指摘をしていますが、実際に使用する農業者に注目した検査は今まで行われていませんでした。
殺虫剤コーナーにはネオニコ系農薬が… |
そこで今回、農民連食品分析センターと農民連女性部は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの研究助成を受けて、共同で33都府県67人の女性農業者の尿検査を行いました。
農薬ごとの検出率は図1・2の通りです。最も検出率が高かったのはジノテフラン(アルバリンやスターガード、ハイポネックス原液殺虫剤入りなどに使用)です。7成分あるネオニコチノイド系農薬のなかで、日本で最も出荷され、使用作物も多いため、食品や作業環境などから体内に摂取されやすいものと思われます。この農薬は、分析センターで2018年に行った市販玄米のネオニコチノイド系農薬残留調査の結果では、最も検出された農薬で、各地での使用の実態がうかがえます。
同様に2番目に出荷量の多いクロチアニジンも高い検出率を示しています。
ネオニコ類似農薬として検出対象とした7成分のうち、スルホキサフロル、フロニカミド、フルピラジフロンの3成分が検出されました。スルホキサフロルとフルピラジフロンは、ネオニコ系農薬に分類されていませんが、同じような殺虫機構です。どちらも浸透移行性に優れる農薬で、ネオニコ系農薬と同様の使い方ができることから、切り替えが進んでいると考えられます。
また、アセタミプリドは検出率が3%でしたが、N―デスメチルアセタミプリドは7割近い人から検出されました。アセタミプリドを摂取しなければ、体内でN―デスメチルアセタミプリドはできませんから、アセタミプリドの摂取機会は、尿の検出率で示されている結果より多いと推察されます。
分析センターの八田純人所長の話
以前に行った農業従事者以外の検査結果と比較しても、農業従事者だから検出率や濃度が高いといった明確な差は見えませんでした。尿中の農薬は、散布作業などの影響よりも主に食品に由来していると考えられます。また、この結果は、農薬散布時に適切な防護をしている効果もあると考えられます。今後は被験者や耕作種、散布作業の条件、採尿の条件、複数回、連続での採尿など、特化した条件を設けた調査が必要です。
結果は、全国から参加したほとんどの方から農薬が検出されました。
家では夫が農薬散布をし、すぐそばで農薬の霧を浴びながら農作業をする場合がありました。通常、私は、散布した農薬が乾いてから行うか、散布場所とは違うところで作業します。
でも、急ぐ場合は「大丈夫かな」と思いながら、農薬散布と並行して作業することがありました。これからは十分気を付けて賢くなろうと思います。
世界ではネオニコの使用を禁止や、使用規制が進んでいるそうです。食べ物など経口で体内に入った農薬は肝臓で解毒されますが、呼吸から入った農薬は肺から血中に入り、全身に回るので、危険性が高いということです。
生産者も消費者も農薬の影響をもっと理解しなければならないと思います。
内藤さん(右)と有機農業の師匠・鈴木計さん |
ここ5年、ほとんどの野菜や米は自分や仲間が作った有機栽培のものを食べていました。でも外食などの機会もあり、どこでどのように作られたのか分からないものを口にする日もあるので、無理もありません。
ネオニコ系農薬は、ミツバチ減少の原因物質としても疑われており、使用を規制する国も出てきています。しかし日本ではほとんどのお米の栽培に使われ、もちろん野菜にも使われています。何も知らされずに消費者が食べ続けているのは怖いです。
でも、うれしいことに有機野菜を食べ続けると、体内に残留したネオニコチノイドの濃度が激減するという報告もあります。「これはありがたい!」ということで、今日もせっせと野菜作りをしています。そしてできるだけたくさんの人に良いものが届きますようにと願っています。
[2023年4月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2023, 農民運動全国連合会