本の紹介

晃洋書房　河村律子、中村均司、
中村貴子、�燗c晋史 編著
『共感の農村ツーリズム
― 人の流動・経済循環を創りたい ―』

都市と農村の交流に関わる
人々のネットワーク化を

　序章のテーマ「共感に支えられた農村と都市のコラボレーションをめざして」を基調に、11の章、終章、コラムから成る。著者は、農業や農村社会の研究者、生産農家、生協や農産物流通に関わっている人など多彩である。

　第10章「過疎、農業離れ問題をいかに捉え、行動するのか」（安藤和雄）では、京都府宮津市下世屋地区のある家が離村に際して設けた碑について紹介している。

　「阪野家十二代阪野芳太郎は先祖伝来の地　下世屋一四〇五番地に定住したが十三代以降は塵の街大阪へ転出した。秋風秋雨と共に先祖の労苦を偲び愁悲する。市場経済も良いが最後は戦争だ。将来過疎地の世屋はどうなる事か愁意は尽きない　平成十六年十一月」と刻まれている。

　安藤氏はこの碑に出会った時、「転出していくことが本意ではない忸怩（じくじ）たる阪野さんの傷心の思いがぐさりと私の心に飛び込んできた」と述懐する。そして、京都大学東南アジア地域研究所の授業の学生達のフィールドスタディーでは必ずこの碑文を見せてきたという。

　碑文が刻まれて20年ほど経た現在、農業経済学者による『農業消滅』や『世界で最初に飢えるのは日本』などの衝撃的とも言えるテーマの出版物が注目を集めている。抜本的な政策の転換が求められていることは言うまでもない。このような中で、本書は時宜にかなった格好の本と言える。

　Ａ5判・176ページ
　定価　1980円（税込み）
　注文は、各インターネット書店などで。