「農民」記事データベース20230410-1548-04

種子法廃止違憲確認訴訟

国民の「食料への権利」
訴えに不当判決

関連/原告団・弁護団の声明要旨


「種子法は憲法を具体化していない」と
東京地裁

 「主要農作物種子法(種子法)廃止法(2018年4月施行)は、国民の『食料への権利』を侵害するものであり、違憲無効である」として19年に全国各地の農家や消費者が提訴した「種子法廃止違憲確認訴訟」の判決が3月24日、東京地裁で出されました。

 判決で品田幸男裁判長は「種子法廃止法の施行によって、原告らの権利・利益は侵害されていない。種子法が憲法上の権利を具体化したものとは言えない」などとして原告らの訴えを退けました。

 本題に触れず門前払い

 判決後に開かれた報告集会には原告や支援者、報道陣など多くの人が集まりました。その中で弁護団の田井勝弁護士は「今日の裁判所の出した判決は、極めて不当だった」と憤りを表しました。

画像
判決後に「不当判決」を掲げる田井弁護士

 田井氏は「種子法が廃止されたことで、実際にどんな被害が出ているのかを私たちは法廷で示してきた。ここが1つの大きな争点だったのに、判決ではこれについてほとんど触れていない。非常に不満がある」と表明。

 また判決で、種子法が憲法上の権利を具体化したものとは言えない、とした判断について田井氏は「ここが一番納得いかない。ではなぜ種子法が戦後の食料難の時代につくられたのか。種子法にのっとり、なぜ都道府県で農業試験場が作られ、食料の安定供給のために様々な財政措置がなされ、種が作られてきたのか。これは私たち国民の食料への権利、良好な食の提供を受ける権利を保障するものであるはずだ」としました。

 消費者として原告になり、法廷にも立った野々山理恵子さんは「怒りもあるけど悲しい。国は裁判の中でまともな反論を1度もしていない。私たちは国の行く末を考えてたたかっているのに門前払いされた。それでも前向きに、がんばっていきたい」と発言。

 同じく原告で栃木県の有機農家、舘野廣幸さんは「判決では私の名前が読み上げられ、いかにも私に権利がないかのように言われたが、これは国民全員の問題。裁判所は農業の実態を知っていないと思う」と述べました。

 一定認めた憲法上位置づけ

 裁判所が不当判決を下す中で、弁護団が「それでも一定踏み込んだ判断をした」と評価する部分がありました。憲法25条1項「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の実現に向けては、「一定の衣食住の保障が必要となることは否定できない」としたことです。

 弁護士で元農相の山田正彦弁護団共同代表は「今日、戦後の裁判で初めて食料への権利について司法が判断した。不当判決ではあるが『否定できない』とした部分は一歩前進。これからがまたたたかいだ」と述べました。


原告団・弁護団の声明要旨

 本日、東京地裁・品田幸男裁判長は原告らによる切実な訴えを不当にも棄却した。

 現在、種子法が廃止されたことで、栃木県で原種価格が3倍に高騰するなどの事象が起き、また地方自治体による種子供給について十分な財政措置が続く保証はない。判決は、十分な根拠なく原告らの権利が侵害されているとは言えないと判示し、不当としか言えない。

 本判決では、原告らの主張する食料への権利について、憲法25条1項の実現に向けて、一定の衣食住が必要となることは否定できない(判決40ページ)とした。私たちが訴えるこの権利について、25条1項で保障される余地があることに言及した。

 私たちは、今回の不当判決に断固抗議し、控訴審において食料への権利が憲法上の権利であること、種子法がこの権利を具体化することを再度詳細に述べていく。以上

 2023年3月24日

  種子法廃止違憲確認訴訟原告団・弁護団

(新聞「農民」2023.4.10付)
ライン

2023年4月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2023, 農民運動全国連合会