酪農・畜産危機打開へ
ネット署名8万人分提出
第6次畜産要望書 累計1600人超
畜産危機が消費者自らの問題に
インターネット署名「日本から酪農・畜産の灯を消すな! 政府は経営支援策を今すぐに!」と、畜産農家の個人要望書の第6次となる提出行動が3月29日、国会内で行われ、オンライン中継を含めて全国から50人以上が参加しました。
500人が参加した2月14日の院内集会「酪農・畜産の危機は、国民の“食”の危機!――日本から畜産の灯を消すな」を受けて、酪農・畜産への支援策を求める消費者・国民の声を政府に届けようと始まったインターネット署名は、多くの賛同者のツイッターやユーチューブなどを通じて続々と拡散され、この日は約8万1000人分に及ぶ賛同者名簿を農水省に提出。ネット署名の賛同は提出後も増えており、4月3日現在では8万4000人に迫っています。
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農水省に署名を手渡す長谷川会長(左端)ら |
畜産農家の個人要望書の第6次分、約260人分も提出し、個人要望書は1次分から累計で1600人分を超える数に達しました。
1頭10万円の支援を今すぐに
対策パッケージでは全く不十分
提出行動と併せて、農民連と農民連ふるさとネット、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は農水省に対し、一刻も早く酪農・畜産農家に実効性ある対策を求める要請も行いました。
要請では、▽搾乳牛1頭あたり10万円の緊急経営支援、▽配合飼料価格対策の抜本的強化と自家配合飼料への支援、▽乳価の引き上げ支援と、加工原料乳の生産者補給金の期中改定、▽鳥インフルエンザ対策の抜本的強化、▽牧草や飼料用米への支援削減といった水田活用交付金の見直しを撤回すること、の5項目を要求。
農民連の長谷川敏郎会長は冒頭、「ネット署名に短期間で8万人もの賛同が寄せられるなど、消費者にも酪農・畜産危機を自らの問題として考える動きが広がっている。危機を打開できるよう、対策を充実させてほしい」とあいさつしました。
農水省は、3月28日に発表した「畜産・酪農緊急対策パッケージ」で、「新特例」として配合飼料対策を上積みしたことや、自家配合のトウモロコシにも1トンあたり1200円の支援を始めること、国産飼料の利用拡大に1頭当たり都府県で1万円、北海道で7200円を補てんすることなどを説明。
現場の声に応えた支援の実施を
参加者からは「酪農家は経営存続には1頭あたり10万円の補てんが必要と言っているところに1万円しか出ないのでは、続けられない。すぐに次の手を考えるべきだ」の声が噴出しました。
農民連の笹渡義夫副会長は、「中央酪農会議の調査でも酪農家の85%が赤字経営で、6割が離農を検討していると報じられている。国がこの酪農家の倒産・廃業を食い止めるという姿勢を示すためにも、なんとしても1頭10万円の支援を決断してほしい」と要望。
また千葉県の酪農家の金谷雅史さんは、「毎日赤字が膨らんでいるが、借金のある酪農家は、辞めるに辞められない状況だ。このままでは自死を選ぶ酪農家も増えるのではないか。もっと現場の声を聞いてほしい。早期淘汰(とうた)に15万円という補助も、協力したくても現場の実情にまったく合わない条件になっている」と、語りました。
群馬県の養豚農家の上原正さんも発言。「配合飼料の補てんが上乗せされたことは喜ばしいが、飼料メーカーが負担している基金が枯渇して、補てん金の支払いが先送りされている。自家配合飼料についても、1トンあたり1200円では、配合飼料並みにはほど遠い金額だ」と発言。また、水田活用交付金の見直しについて、「国産飼料の利用拡大を掲げながら、まったく逆行することが行われている。専用品種でなく、一般品種でも飼料用米の補助対象として認めてほしい」と要望しました。
(新聞「農民」2023.4.10付)
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