「農民」記事データベース20230403-1547-09

家畜市場で協力呼びかけ、100人超集まる

畜産農家の緊急「要望書」

宮城農民連
千葉哲雄さん(登米市・肥育農家)


「国は対策を!」すすんで署名
畜産農家の思いは皆同じ

 生産コストの高騰など経営危機に苦しむ畜産農家から政府への「要望書」を集める運動が、全国で取り組まれ、各地でドラマが生まれています。

 宮城農民連では、和牛の肥育農家の千葉哲雄さん(登米市)が、2月、3月と、青森県や宮城県内で開かれた3つの家畜市場の会場で、取引に来ていた畜産農家に軒並み「要望書」への署名を訴え、あわせて100人を超える要望書を集めています。

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2016年の共励会での名誉賞受賞を喜ぶ千葉さん

 「いやあ、本当にたいへんなんだでば。もう本当に廃業するしかないような状況」と、危機感を込めて話す千葉さん。

 150頭の黒毛和牛を育てる肥育農家で、この道37年。全農の肉牛枝肉共励会で、みごと名誉賞(チャンピオン)を獲得したこともあり、地域でも高い技術を持つことで知られています。

飼料は高騰、牛肉は安値

 それでも昨年から今年にかけては、飼料代は高騰する一方で、牛の価格は安値が続き、非常に厳しい状況に直面しています。先日の出荷では、2年前に素牛として119万円で買った牛が、128万円にしかなりませんでした。

 「2年間、飼料もこだわって大切に育ててきたのに、9万円しか手元に残らない。もうけどころかエサ代も出ないし、次の素牛を導入する資金も足りない。5頭売って3頭しか買えず、今はそれでもなんとか維持しているが、このままではいつか先細りしてしまう」と千葉さんは言います。

 一方で、飼料代は高騰前の一昨年と比べて約2倍になっています。「穀物は輸入頼みで、ウクライナ戦争のように世界のどこかで事件があると、そのたびに暴騰する。そのしわ寄せがみんな農家の負担になるのは、おかしい」

 畜産の衰退が堆肥不足招く

 こうした畜産農家の苦境と思いは、「みんな同じ」と千葉さん。だからこそ、増し刷りした要望書を携え、市場で「要望書」への署名を訴えた時も、多くの農家が自らすすんで署名してくれました。

 「県内でも酪農家のご夫婦が自ら命を絶ったと聞いた。本当に政府には対策を打ってほしい。要望書の中身は畜産農家みんなの思いですよ。ワラにもすがりたい思いが、要望書のコメント欄にもあふれてますよ」と千葉さんは言います。

 さらにいま千葉さんが懸念しているのは、畜産農家の衰退で、地域に出回る堆肥が減ってしまい、米作りにも悪影響が出ることです。化成肥料が高騰するなか、家畜堆肥はますますニーズが高まっています。

 「“あっちも損、こっちも損”ばかりでは、後継者も継ぐに継げない。もっと農業を守っていく方向に、今の政治を変えなきゃならないね」――家畜市場に渦巻く農家の切迫した願いが、要望書には詰まっています。

(新聞「農民」2023.4.3付)
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2023年4月

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