「農民」記事データベース20230320-1545-15

牛乳でつながる地域の
拠点づくりへ新たな挑戦

福島県福島市・「ささき牧場カフェ」代表の
国府田純さんに聞く


 福島市郊外の佐原(さばら)地区に佐々木牧場はあります。親牛20頭、子牛10頭を飼育し、家族経営で親子二代、64年続く牧場です。直接牛乳を製造し販売するこの牧場で、2016年にカフェを開いた国府田(こうだ)純さんに話を聞きました。

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「ささき牛乳」と国府田純さん

 ――佐々木牧場をつくった父・健三(全国農民連元会長)は「この牧場を人が集まる場所にしたい」と話していました。長女の私(5人きょうだいの一番上)がその思いを引き継いでカフェをつくりました。小学校の教員を早期退職しての決断でした。

 ソフトクリームの販売から始めて、今はパンやチーズの製造・販売もしています。スタッフは私含め8人。カフェの仕事から牛乳配達、パンやチーズの製造を皆で横断的にこなしています。全員女性です。

 牧場は弟の光洋(長男・5人きょうだいの2番目)が07年に父から引き継ぎ、夫婦(妻・裕子さん)で経営しています。私たちのカフェとは経営を分けて、弟夫婦には牧場の運営と牛乳製造を、これまで通り担ってもらっています。牛が大好きなうちのスタッフ2人が週2回牧場の仕事もやっていて、今や牧場の仕事も一人前!

 そんな私たちは今、新しいことに挑戦しています。それはカフェと牛舎の間にある、築100年の土蔵を改修し、パン工房とわさび工房、モーモールーム(多目的な研修室)をつくることです。今月の完成を見越して、大工さんとうちのスタッフ総出で取り組んでいます。

 カフェを続ける中、地元の皆さんや観光で訪れるお客さんも増えてきて、父や私たちの願いが少しずつ形になっている実感があります。でも牧場のまわりで米作りをやめる農家さんが増えています。そういう土地は私たちで借りて、牧草を作っています。うちのパンも、耕作放棄地だった土地で作っている地元・佐原産の小麦です。荒れ地をつくりたくない。これは、ご先祖さまや父から受け継いだ私たちの世代の役目。次の世代に渡さないといけない。

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ゆったりくつろぐ牛舎の牛たち

 土蔵の改修はその思いからです。佐原の魅力をもっと知ってもらいたい。もっとここを訪れてもらいたい。ここから数キロ先の山の中に小さなわさび田があります。カフェのわさびソフトはここのわさびを使っています。高齢の生産者さんたちが生産組合を作って、人知れず努力している。この隠れた名産品も絶やしてはいけない。

 私たちの挑戦の真ん中には、常に「ささき牛乳」があります。63度30分で低温殺菌された、父と母、弟夫婦が守ってきた、地元の人に愛される、瓶詰めされた牛乳です。

 いま酪農が大変な中、酪農家はずっと変わらず牛を育て、毎日牛乳を搾っています。「牛乳は欠かせない食品だから、酪農家は欠かせない存在なんだ。食卓にいつも牛乳があってほしい」。そう思ってくれる人を、牧場とカフェを訪れてもらって増やしていきたい。

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土蔵改修プロジェクトのクラウドファンディングにも挑戦中です!詳しくはこちら

(新聞「農民」2023.3.20付)
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2023年3月

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