60歳からでも思うような農業できる
定年就農は希望がいっぱい
徳島県板野町の高原さん夫妻
道の駅にも新たに出荷
「最初は『なんで私が、農業をやらなきゃいけないのか』と思っていたけど、すっかりはまっちゃった」。徳島県板野町の高原久美さん(73)は笑顔で語ります。
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道の駅で出荷した冬ジャガを手にする高原さん夫妻 |
愛知県小牧市で教師をしていた久美さんは60歳で設計事務所を閉めた夫の洋市さん(74)と、久美さんの実家の板野町に戻りました。家庭菜園の規模からスタートし、出荷量の見込み違いで、野菜を廃棄することもあったと言います。
はじめは渋々畑に行っていた久美さんですが、続けるうちに、農業の魅力にはまります。「畑にいるとみんなが声をかけてくれます。お茶を飲みながら、新しい作物を教えてもらったり、悩みを話したりと『畑サロン』で交流の輪が広まりました」。こうした村を作り上げるような付き合いは百姓の小農家だからできることだと久美さん。
家庭菜園からスタートした農地も、地域の人からの依頼等で広がり、柿や米と少量多品目の野菜を生産。年間20種以上出荷しています。また、洋市さんは農業委員としても活躍しています。
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柿の木の剪定(せんてい)をする洋市さん。
左後ろが自分で建てた作業小屋 |
高原さん夫妻は、昨年4月に町がつくった道の駅に、農民連の仲間と出荷を始めました。「収量は落ちますが秋でもジャガイモを生産できると知り挑戦してみました。8品種をつくっています。他の生産者も同じように取り組み始めました。道の駅は、色とりどりの野菜の品ぞろえが人気で、今では地域のスーパーにも影響し、地場産コーナーができるなど、私たちの挑戦が地域に波及しています」
道の駅自体も好評で、高齢の生産者も出荷に精を出して通うなど、人が集まり地域の活性化につながっています。
また農民連の仲間と町の給食センターに地場産野菜の使用を要望して、交渉をする計画です。給食などの出荷先と提携などができたら、新しい仲間も迎えやすくなるのではと、将来の支部結成めざして奮闘中です。
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白菜を収穫する久美さん |
定年就農にも もっと支援を
高原さん夫妻は「もっと定年就農などに支援を」と言います。「農業は自然が相手です。自然はすべての人をありのままに受け入れます。パワハラなどで傷ついた人の受け皿にも農業はなれます」と語り、「50歳、60歳からでも自分の思い描く農業はできます。国はこうした就農者にもっと支援をすべきです」と話していました。
(新聞「農民」2023.2.27付)
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