全国オーガニック給食フォーラム
農業への支援、持続可能な食生活の推進
フランスでの学校給食有機化の取り組み
前田レジーヌさんの報告(要旨)
10月26日に東京都中野区でオンライン併用で全国オーガニック給食フォーラムが開かれ、海外の先進事例として、フランスの学校給食の取り組みが紹介されました。発言した前田レジーヌさん(翻訳家、国際有機農業映画祭運営委員、フランス在住)の報告要旨を紹介します。
行政や給食関係者の交流や
ネットワークづくり旺盛に
フランスの有機農業について
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前田レジーヌさん
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最初にフランスの有機農業について述べます。
1960年代から農薬・化学肥料の大量使用に危機感をもった団体などが活動を始め、80年代に入ってから有機農業の基準やABロゴマーク(有機認証)が策定され、2000年代になって有機農業庁が設置されました。EU基準、EUラベルが義務化され、09年には環境グルネル法が制定され、22年までに全農地面積の20%を有機農地にするという目標が立てられました。しかし、21年現在、有機農地の割合は10・3%で、他のEU諸国と変わらない水準です。
学校給食についての政策(エガリム法)
フランスでは2018年に「農業・食品業の均等な取引及び健康で持続可能な食生活の推進に関する法律」(通称エガリム法)が制定されました。これは国の食料政策全体の方針です。
3つの目標、(1)農業従事者や生産者に適正な収入を保障、(2)健康で持続可能な食生活の推進、(3)食品廃棄を減らす――から成り立っています。
学校給食に関しては、22年1月1日までに高品質の食材を最低限50%(食材購入価格ベース)にし、そのうち有機食材は20%にすることが義務付けられました。高品質の食材にはABマークの認証を受けたもののほか、原産地・質を保証するAOP・AOC等のラベルやエコラベルのついたものも含まれます。さらに食品廃棄の削減、ベジタリアンメニューの導入も求められています。
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全国オーガニック給食フォーラム=10月26日、都内 |
有機給食の推進に向けて
アンプルスビオ会の取り組み
2002年に「食を通じて地域を変えよう」という共通の思いをもった自治体などが「アンプルスビオ会」を立ち上げ、有機給食の普及を目標に活動を始めました。
13年にはアンプルスビオ会の活動の交流を目的とした「クラブ・デ・デリトワール」が設立され、138自治体が参加しています。各地域の食料プロジェクトについての自治体間の情報共有、交流促進を目標にしています。主な活動は年1回の全国交流会、給食関係者への勉強会などで、南仏を中心に広がっています。
16年から毎年給食大会を開催し、優秀な学校給食が表彰され、学校給食の推進につながっています。17年には有機給食研究会が設立され、有機給食のデータ収集、広報として有機給食ガイドを発行しています。
エコセールのラベルで有機給食100%をめざして
13年に給食認定機関「エコセール」を設立し、オーガニック認証機関として独自の基準で認定評価を行っています。認定基準としては、有機・地場・旬の食材の利用割合、手づくりの実践、食品廃棄の削減、エコ洗剤の使用などを考慮に入れています。21年現在、2714の施設が認定を受け、その多くは学校です。
23年以降、エコセールの認定基準はさらに厳しくなり、認定レベル1を獲得するには有機食材の割合を20%以上、2では40%以上、3では60%以上が必要になります。
地場産有機食材も1で4品目以上、2で8品目以上、3で12品目以上が必要です。(表)
ジェルス県での有機食材100%の学校給食
ラグロレ・デュ・ジェルス小学校
私の地元のジェルス県はフランスの南西部に位置し、人口は19万人、農業が主産業で麦、トウモロコシ、大豆などの栽培、畜産業も盛んです。有機農業の割合も23%です。
最近、有機給食で有名になった小さな村があります。それはラグロレ・デュ・ジェルス村です。人口は約650人。有機農家である村長はマメ、ソバなどを栽培し、村のラグロレ・デュ・ジェルス小学校には40人が在籍しています。
18年から有機食材100%への取り組みが始まり、当初は地元からの仕入れ先が見つからない状態でしたが、約10ヘクタールの直営農場を立ち上げ、有機食材100%をほぼ達成しています。村は20年、給食大会(村部門)で優勝し、エコセールのレベル3を獲得しました。
直営農場では、露地、ハウス栽培、自然療法施設の開設、オーガニックパンの自動販売機設置などを実施し、今後は野菜加工場の建設、教育農場などを立ち上げる計画です。15年間で村の人口がほぼ倍増しました。
県立中学校の給食
次にジェルス県では県立中学校が19校ありますが、県は予算、政策、給食料金を定め、調理師の雇用、教育を担当しています。各学校は食材調達のほか、給食の献立を決めます。
09年から地場産・旬の食材使用など改善に向けて取り組みを始め、20年には有機食材が平均約40%、地場食材約50%です。25年までに有機・地場食材をそれぞれ60%にする目標を掲げています。食品廃棄削減の取り組みでも、残飯が大幅に削減されました。
(新聞「農民」2022.12.12付)
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