「農民」記事データベース20221212-1533-03

もうこれ以上続けられない

11・30畜産危機突破
緊急中央行動のスピーチから
(要旨)


生産保障されるしくみに

千葉県北部酪農農業協同組合組合長
高橋憲二さん

 誇りをもって食料生産をしてきましたが、借金をしながら酪農をしています。あと数カ月ももたない状況で、初めて経験する厳しい現状です。私たちは食料安全保障という生きていく上で一番大事な仕事をしています。

 生産コストに見合った価格で販売されないのはおかしいです。需給で価格が決まるという市場原理だけでは、私たちは生活できません。

 今の段階では緊急支援として農家への直接支払いをお願いしたい。長期的には生産物に対するコストに見合った価格にしていくことがどうしても必要です。その場しのぎでなく、新しいしくみを考えなければならないと思います。


飼料・資材高騰に対策を

北海道・白糠(しらぬか)農民組合職員
阿部志津子さん

 酪農地帯から来ました。牛乳を増やしたくても生産抑制され、思うように乳を搾ることができません。今年は天候が悪く、牧草の収穫が例年より少ない状況です。配合飼料、電気代や資材なども高騰し、子牛を市場に出しても買い手はつきません。農家の元に戻ってきた子牛は安楽死させるしかありません。

 加工向けの多い北海道では積み上がった在庫処理に生産者が乳価の一部を拠出し、さらに赤字が増えている状況です。

 政府の今の対策では解決できず、危機打開のためには緊急対策が必要です。そうでないと来年の酪農の計画が立てられません。消費税を減税し、インボイス導入は中止してください。

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畜産・酪農の厳しい状況を訴えました


命を守る農業を大事にせよ

宮崎県小林市の肉牛肥育農家
〓山 優作さん

 本来ならば、今日は朝から牛に餌をやり、夕方にも餌をやり、夜は牛をみる。そういう生活を祖父の代から毎日しています。そうした生活ができなくなってしまうということはとても悲しいです。

 飼料高騰は自分たちにはどうすることもできないことです。農水省は農家を1軒1軒回って話を聞いてほしい。

 将来に向けて、自分たちはやる気は十分あります。それを支援してもらえるよう国に要望したいです。

 これからも命を守る仕事、農業を大事にしてください。食料政策なしには日本の成長はありません。ぜひ多くの人の意見を聞いてほしいと思います。

※〓は「吉」の異体字。


要望続ければ実現できる

群馬県養豚協会副会長・下仁田ミート会長(安中市)
上原 正さん

 45年間、養豚に携わってきました。配合飼料価格や電気料金の値上げで今ほど危機的状況に陥ったことはありません。

 昨年は配合飼料安定基金からの補てんがありましたが、今年はほとんどの農家が赤字です。基金も枯渇し、銀行から借金して飼料代を払っていますが限界です。

 赤字対応のための経営交付金(豚マルキン)も、飼料代から差し引いて計算されるため、いまだに発動されていません。

 借金もなく廃業できる人を「ハッピーリタイア」と呼んでいます。

 豚の感染症、豚熱の問題では、ワクチンを打つ獣医師が足りないということで、養豚協会などが動き、2回目のワクチンが打てるように改善されました。要求すれば実現できます。


農家の思いを託されて

長野県南牧村の開業獣医師
片桐勝則さん

 人口より多い3200頭の乳牛、300頭の和牛が飼われている長野県南牧村から来ました。「切実な思いを農水省に伝えてくれ」と要望書を託されて、いまここに立っています。畜産・酪農家の思いを要望書に込めて預かってきました。

 いま全国で産業動物を扱う獣医師が不足しています。獣医師は、人と動物と環境を一体に考え、人獣共通の感染を防ごうとがんばっています。さらに牛にストレスをかけない飼い方で病気を減らそうと努力しています。

 農家をはじめ関係者のみなさんによって酪農は成り立っています。生産者と消費者が手を取り合って危機を乗り越えましょう。


人にも鶏にも優しい飼育

さいたま市の平飼い養鶏(鶏卵)農家
浅子紀子さん

 143万人の政令指定都市、さいたま市で養鶏農家は2軒だけです。

 放し飼いなど動物にとってストレスや苦痛が少ない飼い方でアニマル・ウェルフェアに取り組んでいます。何十万羽という密集した場所で飼われているところで鳥インフルエンザは発生しています。

 餌代も高騰するなか、飼料用米、大豆、子実トウモロコシ、麦などで対応しています。

 畜産をはじめ野菜など国民にとって大事な食料を守るのが政府の役割ではないでしょうか。国民の立場で考えてほしい。

 生産者だけでなく消費者が安全安心な国産の食料を食べる生活を送れるよう支援してほしい。

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足元にニワトリを連れてスピーチする浅子さん(左)


後継者が育つ養豚経営に

千葉県横芝光町の養豚農家
山赴`貞さん

 家族経営で養豚を営んでいます。いま養豚家を悩ませているのが豚熱で、野生動物や野鳥などが農場のなかに入り込むことがないようにフェンスの設置等をしなければなりません。

 衛生管理基準では、放牧養豚も許可が必要で、豚がストレスを受けやすい環境になっています。

 こうして野外からの伝染病を防ぐためのワクチンの経費などがかさみ、養豚は厳しい状況です。

 横芝光町の養豚農家は16年前は30軒ありましたが、今は7軒しかありません。そのうち後継者がいるのは3軒のみです。

 息子が「養豚を継いでよかった」と言えるよう畜産危機の解決を求めます。

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農水省に向かって「畜産を守れ!」


家族経営の農家に支援を

島根県酪農協議会会長
西谷悟郎さん

 酪農家の2代目です。戦後の開拓農家として、三瓶(さんべ)開拓酪農農業協同組合の組合長をはじめ全国開拓振興協会会長も務めています。

 これまで酪農をやってきてかつてない危機的な状況です。そんなときに農家からみると農水省は保護者。ここで何もしないということは、保護責任者遺棄致死罪になります。急いで何とかせよと言いたい。

 こんな非常時に兵器を大量に買ってどうするのでしょうか。

 大きな石だけでなく小さな石がうまく組み合わさって城壁の強度が高まり、外観もよくなります。大規模農家だけでなく家族経営の農家も成り立つよう支援してほしい。

(新聞「農民」2022.12.12付)
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2022年12月

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