「農民」記事データベース20221205-1532-01

宮・城 仙台市

地域の学校給食に農産物を納入

手記
宮城農民連 会長 嶺岸若夫

関連/第25回農民連定期大会のお知らせ
  /「農民」2022年11月14日号の誤表記に
   ついてお詫びし、訂正記事を再掲します


生産者に無理のない取り組みで30年

 私は仙台市で水稲5ヘクタールと野菜1ヘクタールを作っており、市内の学校給食に野菜と米を供給して30年になります。いま4つの小学校、2つの保育園と取引をしています。提供しているのは、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンを通年で、そのほか夏にはナス、冬は長ネギや大根、白菜などを届けています。

 先進地の見学や交流を通じて

 きっかけは、当時、仙台市が自校方式の給食から、給食センター方式を中心にして自校方式の栄養士を3校で一人体制にしようとしていたことからでした。

 たまたま私の住む地域の小学校に、以前からの知り合いだった教職員組合の栄養職員支部の支部長さんがいたことから交流が始まり、わが家で生産した野菜などを「無理のない方法で」提供することとなりました。

 その当時、新日本婦人の会のみなさんとの産直で野菜ボックスに取り組んでいました。学校給食の取り組みで先進的な取り組みをしている、福島県熱塩加納村(現・喜多方市)に新婦人の皆さんと見学に行き、学習をしてきました。

 それを機に、他の教職員の方々とも交流が始まり、学童農園で田植え・稲刈りの体験活動に発展しました。今は野菜を提供している学校を中心に、4校で農業体験に取り組んでいます。

 また、地元の小中学校には、月1回、クラスごとに炊飯器で炊きたてのご飯を出す日が設けられ、この日の分のお米はわが家のお米を提供しています。

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学童農園での稲刈り体験では、子どもたちもがんばりました

 品目、価格、規格は生産者お任せ

 生産者にとって無理のない取り組みとは、次の通りです。

 (1)供給野菜は生産者が供給できそうな野菜を前月の献立を作る前にお知らせする。

 (2)価格については再生産が可能な価格設定とし、市場価格に連動しない。

 (3)規格は生産者にお任せで、大きいサイズが望ましい。

 (4)供給野菜が収穫できないときには、2日前までに連絡すること。

 このように、生産者側の状況や要望が十分に反映された取り組みとなっていることが、長く続いてきた理由だと思います。私が田植え作業で手いっぱいになる春は、学校給食への野菜納入は休みになりますが、それもこのような“無理のない”取り組みだからこそと言えるかもしれません。

 同時に、学校からの「ジャガイモの泥はもっとしっかり落としてほしい」「ホウレン草は袋に入れず束で」「玉ネギは皮をむいて納入して」など、対応可能な要望には当方もなるべく応える努力をしています。こうした生産者と、調理師さんや栄養士さんが率直に要望を言い合えるような、コミュニケーションがしっかりとできていることが、学校給食の取り組みではとても大事だと感じています。

 ただし、朝の8時30分までという納入時間の厳守は大変です。配達時間に制約があるため、多くの学校に供給できないという問題もあります。

 残食の量が減り食材価格も安定

 給食食材の提供で変化したのは残食の量が減ったことです。

 “生産者にとって無理のない”取り組みとあって、栄養士さんや調理師さんにはそれに対応する苦労や工夫をおかけしていますが、「野菜の価格が安定しているし、新鮮な野菜が届くのでおいしい」と評価は高いです。ニンジンの価格が高騰した昨年も、「価格が変わらず、本当に助かった」と喜ばれました。

 また、出前授業で児童たちとの交流もできるようになりました。

 学校の廊下には、私たち生産者の写真が張ってあり、「この人が給食の食材をつくっています」というのがすぐにわかり、生産者の顔が見えることが食育にもつながっています。

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生産者として出前授業にも参加し、子どもたちと交流しています

 仲間を増やしてさらに発展を

 しかし、学校給食に地場産野菜を安定供給するには、一人で取り組むのは限界があり、グループでとなると野菜の発注業務が大変になる――などの課題があるのも事実です。

 引き続き、学校給食を通じて児童・生徒に食の大切さを伝えていきたいと思います。

 地場産野菜が必要な学校がまだまだあります。要求と運動から始まった学校給食の運動ですので、仲間作りをしながら、この運動を発展させていきたいと思います。


第25回農民連定期大会のお知らせ
日程 2023年1月17日(火)午後1時〜18日(水)午後3時
▼会場と参加形態
  代議員 東京大田区産業プラザコンベンションホール
  評議員および代議員以外の方
      オンライン(ZOOM)によるリモート参加
 ※第25回大会記念レセプションは中止とします。


「農民」2022年11月14日号の誤表記について
お詫びし、訂正記事を再掲します
 新聞「農民」11月14日付4〜5面「ストップ! 押しつけ輸入米(ミニマム・アクセス米)」の記事のうち、アメリカ・タイ産精米のトン単価を60s玄米に換算して表示する際に換算値に誤りがありました。
 お詫びしますとともに、見出しを「アメリカ米1・4万円、国産米9千円の1・5倍」に訂正し、本文の一部と図表(1)(2)を訂正の上、2、3面に再掲します。
 なお、60s玄米換算値以外に誤りはなく、農家に米価暴落を押しつけながら、国産米よりはるかに高く、需要もないミニマム・アクセス米は、ストップすべきものという11月14日付本紙記事の主張、構成の大筋は、なんら変わりありません。

(新聞「農民」2022.12.5付)
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2022年12月

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