補正予算・総合経済対策批判
消費税引き下げ、
農業と暮らし守る緊急対策を
評判さんざん 岸田補正予算
牛を殺すために金を出すのか
生かすために金を出すのか
問題大臣をかばった末に、世論に追い詰められて首にする――岸田首相が迷走しています。統一協会、国葬、原発推進、軍拡などに対し、国民に「三くだり半」を突き付けられて足かけ3カ月。前にも後ろにも進めず、右往左往するだけです。
物価対策は76%が「評価しない」
岸田政権が「起死回生」の一手とばかりに打ち上げたのが「総合経済対策」と補正予算。しかし、この評判もさんざん。物価対策を「評価しない」が76%で、「評価する」はわずか16%(産経・FNN世論調査、11月14日)。
評判が悪いのは当然です。物価高騰はすべての分野で起きているのに、最も効果的な消費税引き下げと円安対策を行わず、一時的・部分的な対策でごまかそうとしているからです。すでに世界の100カ国・地域で、消費税の減税が実施されています。日本もただちに消費税を5%に減税すべきです。
物価対策のもう一つの決め手は賃金引き上げですが、政府は財界に来年の春闘で賃上げを「お願い」するだけの他力本願。政府の施策として、岸田首相は「労働者の転職を進める労働移動の円滑化、そのための学び直しを進め、構造的賃金引き上げに取り組む」と、いつ実現するか分からない政策を並べるだけです。まるで「昼あんどん」です。
岸田首相が「思い切った対策」という電気・ガス料金負担軽減策も足元の値上げは放ったらかし、来春の統一地方選挙対策として、「来春の値上がり分の肩代わり」するだけです。
唯一の「新政策」は「乳牛淘汰」
農業・食料の分野ではどうか――。
政府は6〜9月にかけて、22年度予算予備費を使って肥料・飼料高騰対策を打ち出してきました。この中には農民連の要求を反映した対策も含まれており、私たちはこれから本番を迎える肥料高騰対策の申請に全力をあげてとりくむ決意です。
同時に厳しく指摘しなければならないのは、肥料・飼料対策は予備費で「一丁あがり」とばかりに、補正予算ではほぼ何もしないことです。
全国で「もう限界だ。地元では夫婦で命を絶った人もいる。このままでは地域から酪農・畜産の灯が消えてしまう」という悲鳴があがっています。
これに対し政府が打ち出した唯一の「新政策」は「乳牛淘汰(とうた)」です。来年9月までに乳牛を殺せば1頭15万円を給付する、10月以降になれば5万円――。酪農家は「いますぐやめれば高い手切れ金を出すが、迷っていると手切れ金を減らすぞ」「搾るな、殺せという政府のメッセージだ」と受け止めています。
鈴木宣弘東大教授は「乳牛1頭当り16〜8万円、総額900億円程度の減収補填(てん)」を行うべきだと提案しています(日本農業新聞、11月14日)。牛を殺すために補助金を出すのか、生かすために補助金を出すのか、どちらがまともな政策かは明らかです。
農民連の要求
農林水産関係補正予算は約8千億円。このうち燃油対策など緊急物価対策は518億円にすぎず、農畜産物輸出に重点を置いた環太平洋連携協定(TPP)関連対策は2704億円、水田活用交付金打ち切りにつながる畑地化関連対策は1144億円にのぼります。「物価緊急対策」の看板に偽りありです。
私たちは政府と自治体に対し、次の要求を対置して運動を進めます。
(1)飼料価格は高騰分全てを補てんする仕組みに改める。国の責任で酪農家の赤字を補てんする新たな制度を創設する。肉牛・豚の経営安定交付金(マルキン)は、国の負担で実質的な生産費に見合う制度に改める。
(2)肥料価格の高騰分全てを補てんする緊急対策に改めるとともに、中長期対策として、肥料価格安定対策を国の負担で創設する。堆肥など国内資源の利用拡大への支援を拡充する。
(3)燃油高騰に対しては農家に直接補てんする。
(4)水田活用交付金の削減を中止するとともに、麦・大豆・飼料作物の生産を維持・拡大するための支援策を行う。
(5)ムダで過剰なミニマム・アクセス米の輸入をやめる。米価下落を抑えるために政府の備蓄買い上げを行い、フードバンク、子ども食堂などに対する食料支援制度を創設する。価格保障・所得補償をアメリカ・EU(欧州連合)並みに抜本的に拡充する。
(新聞「農民」2022.11.28付)
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