「農民」記事データベース20221121-1530-10

ミュージカル
バックトゥザ・フーちゃんU

復興願い公演
福島・二本松市

 福島原発事故を未来に語り継ぐミュージカル「バックトゥザ・フーちゃんU」が10月9日、二本松市で上演されました。午前、午後の2回公演で約400人が参加し、地元・福島県内をはじめ東京、神奈川、新潟、大阪など全国からも駆けつけました。


愛知子どもの幸せと
平和を願う合唱団が上演

 福島を再訪したフーちゃんたち

 2014年初演の同ミュージカルは、「フーちゃんズ」という小学生のグループがタイムマシーンで1967年の福島へ。当時は、原発誘致一色のなかで、福島で震災にあい、避難してきた、フーちゃんズの仲間「ノンちゃん」が「原発事故は起こるんです」と懸命に訴えます。現代に戻ってきたフーちゃんは、「過去は変えられないが、未来は変えられる」と未来に向かって歩き出します。

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おとなから子どもまで楽しんだミュージカル公演

 今回、原発事故から10年が過ぎ、高校生、大学生になったフーちゃんたちは、避難解除された故郷に戻っているノンちゃんを訪ね再会。帰還困難区域の現状、ふるさとを追われた人々の憤りや苦しみを知るとともに、農業の再生や地域の復興、新たな取り組みに挑む福島の人々と交流します。

 公演では、ふくしま公演実行委員長の菅野(すげの)正寿さん(安達地方農民連会員)の開会あいさつに続き、歌と踊りを披露した「愛知子どもの幸せと平和を願う合唱団」団長の清水則雄さんが「福島の思いを伝えるために多くの人々に見てもらいたいとがんばってきました」と表明。二本松市の三保恵一市長も壇上から、「安全・安心な米や野菜を広め、子どもたちが安心して暮らせるふるさとをつくっていきたい。原発事故を二度と繰り返さないためにも、公演を通じて福島の声を未来につなげよう」と訴えました。

 農業再生の願い菅野さんが作詞

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あいさつする菅野さん

 ミュージカルのなかでは、菅野さんが作詞した歌が登場します。「わらび ぜんまい たらの芽の いのちの芽吹く里の山」と歌う「阿武隈の詩」。「耕す 耕す 土を信じて 僕は種をまく 野菜をつくる」という歌詞の「土の力 稲の力」。作曲は全曲、同合唱団の藤村記一郎さんです。

 合唱団のみなさんは、公演に向けて事前に福島ツアーに出かけ、帰還困難区域の浪江町津島地区、二本松市東和地区の菅野さんが経営する農家民宿「遊雲(ゆう)の里ファーム」などを訪問。実行委員の人たちと顔合わせを行い、被災地の視察、里山体験と地元農産物の食事を囲んだ交流会で親交を深めました。

 実行委員会副実行委員長の三瓶春江さん(福島原発訴訟津島被害者原告団)は、「世界に原発事故被害者の思いを届けようと公演を企画しました。私も原告団の一員として多くの出会いがあり、たくさんの手を借りてたたかっています。その一つに『愛知合唱団』のみなさんとの交流があります。子どもたちの幸せな未来を守りたい」と公演に寄せる思いを語ります。

福島原発事故を未来に語り継ぐ

 原発をなくしてふるさと取戻す

 おとなから子どもまで楽しんだ公演。次のような感想が寄せられました。

 「歌声、詩、小鳥の声、自然の音がごく自然に聞こえ、あの当時の数々の思い出がよみがえり、涙が流れて止まりません。平和、おだやかな日々、二度と戻らない。けれども…」

 「心に響く歌、訴え、踊りでした。現実をみつめ、自ら訴える子どもたちの声、心にしみました。また一緒に歌いたい!と強く思いました。おとなと子どもと一緒に歌える合唱団があることがうらやましく思いました。これからも全力で原発をなくすために、ふるさとを取り戻すため、力を合わせていきましょう」

 「オープニングの『いつかまた浪江の空を』は、とてもステキでした。心に染みました。津島の現地をこの目で見てきたので、再度脳に迫りました。人ごとにしない、自分事として考えることがいかに大切か、私がやれることは何かを改めて思わされました。子どもたちがとっても良かったです。未来は子どもたちのものです。それを強く感じました。三瓶さん!!ガンバレ! 連帯を込めて」

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事前学習で「遊雲の里ファーム」に泊まったときの愛知合唱団の皆さんとの交流のようす。ギターを持っているのが作曲家の藤村さん(2020年2月25日)

 未来の子たちに誇れる福島を

 公演を終えて菅野さんは「合唱団のみなさんが何度も福島を訪れ、福島に寄り添って創作したミュージカルだからこその舞台でした。全国からいただいた熱いメッセージを胸に、人と人とがつながるコミュニティーのあるまちづくりの復興、農業の再生、そして未来の子どもたちに誇れる福島をつくるために、今後もみなさんと力を合わせていきます」と、感謝のメッセージを送りました。

 なお、本公演は12月3日に名古屋市民会館中ホールで行われる「2022日本のうたごえ全国交流会『小音楽会』」で再上演されます。

(新聞「農民」2022.11.21付)
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2022年11月

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