“有機で元気!”全国フォーラム開催
日本でも広がるオーガニック給食
オーガニック給食は世界の流れ
子どもたちの健康と
農家を守り、地域で育てよう
「全国オーガニック給食フォーラム〜有機で元気!」が10月26日、東京都中野区の、なかのゼロ大ホールで開かれ、会場1100人、全国61カ所のサテライト会場900人、オンライン1800人が参加しました。主催は「全国オーガニック給食フォーラム〜有機で元気!〜実行委員会」です。
はじめに実行委員長の太田洋・千葉県いすみ市長が開会あいさつ。「オーガニックの波が大きくなり、ますます広がっていくと確信している。子どもたちの健康を守り、日本農業の未来を明るくするためにも一歩一歩前進していこう」と訴えました。
有機給食を実践 韓国とフランス
フォーラムを後援した酒井直人・東京都中野区長は、区内の小中学校すべてに栄養士を配置し、学校ごとの献立などの実践を紹介し、歓迎のあいさつを行いました。
農水省の藤木眞也政務官も「みどりの食料システム戦略」で有機農業・学校給食の推進を後押しする決意を述べ、「食の安全・安心を創る議員連盟」事務局長の川田龍平参院議員は、子どもの未来と命を守るためにも、有機学校給食を推進していく必要性を強調しました。
第1部「オーガニック給食は世界の流れに」では、海外の先進事例を紹介。前田レジーヌさん(在仏翻訳家)は、有機農業が進むフランスで、オーガニック給食が進んでいる取り組みを報告。2018年に「農業・食品業の均等な取引及び健康で持続可能な食生活の推進に関する法律」(エガリム法)が制定され、政府は農業従事者や生産者に適正な収入を保障するとともに、健康で持続可能な食生活を推進し、食品廃棄を減らすことなどを目標にしています。
自治体や給食関係者のネットワークづくりが進み、そこが主体となって有機給食、地場産農産物の活用などの工夫が実践され、さらに調理環境の整備、有機食材の調達や利用、環境負荷の低減や地元経済活性化などの効果をあげていることを紹介しました。
韓国のカン・ネヨンさん(地域ファシリテーター)は、親環境無償給食が全国で普及し、憲法がうたう「義務教育は無償」の実践として学校給食の無償化が実施され、学校給食法の改正により、「優秀農産物」認証の使用義務化、給食の直営が基本となったことを報告。その背景には、「子どもために良い食材を使い、良い給食にしてほしい」という親たちの願いと、給食に地場産農産物を使うように求めていた農民運動との出会いがあり、各地で条例制定運動が進んだ経緯を紹介しました。
日本の農水省・文部科学省の担当課長・係長からも、有機給食を後押しする政策と予算の充実化の話がありました。
|
報告者の発言に共感の拍手が送られました |
日本全国各地で自治体が先頭に
第2部では「日本でも広がるオーガニック給食」をテーマに、オーガニック学校給食の実現を進めている自治体からの報告がビデオレターのリレー方式でありました。
宮崎県綾町では1988年に「自然生態系農業に関する条例」が制定され、自然生態系を生かし、育てる町づくりを追求しています。給食で町産の米や野菜が提供される際には校内放送や掲示物で生産者名が子どもたちに紹介され、食育にも力を入れています。
愛媛県今治市は、88年に「食の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」が市議会で採択され、「食と農のまちづくり条例」も制定されました。食材の選定では、今治産の食材を優先的に使用しています。
千葉県木更津市では2016年に「人と自然が調和した持続可能なまちづくりの推進に関する条例」(オーガニック条例)を制定し、市内公立小・中学校の有機米化の取り組みをスタートさせました。生産者、取り組み面積も年々増加しています。
新潟県佐渡市は、トキの野生復帰にあわせて「朱鷺(とき)と暮らす郷づくり認証制度」を進め、トキが餌をとれる環境づくりを行ってきました。生物多様性を守るために佐渡農協ではネオニコチノイド系農薬を使わない米づくりを進めています。
JAと自治体も食育の一環で
第2部の後半では座談会「オーガニック給食奮闘記」が行われ、司会を作家の島村菜津さんが務めました。
スピーカーを3氏が行い、茨城・常陸農業協同組合の秋山豊代表理事組合長が、「JAもオーガニックでなければ生き残れない」と発言。「TPP(環太平洋連携協定)のたたかいを通じて、関税引き下げになれば日本の農業は壊滅的打撃を受けることから、付加価値をつけた農業、オーガニックが必要だと思うようになった」と述べました。ジャガイモやカボチャの有機栽培で職員も「これならやれる」と自信を深めた実践を報告しました。
2017年に市内の学校給食を100%有機米にした、いすみ市農林課の鮫田晋主査は、コウノトリの野生復帰に取り組む兵庫県豊岡市に学び、「自然と共生する地域づくり」を市と事業者、農家、市民が一体で進めた経緯を報告。「有機農家と慣行農家とが、地域社会の転換をめざし、無理なく取り組んできたことが成果につながった」と述べました。
元栄養教諭で学校給食地産地消食育コーディネーターの杉木悦子さんは、「子どもが豊かに自立するための食育は、地産地消の給食で運営することが基本で、そのなかでオーガニックを取り入れることが必要。給食は教育として行われるので、食育として、学校に教育施設としての給食室があり、栄養教諭と正規の調理員がいることが求められる。地域全体で取り組むことが大事」と訴えました。
|
オーガニック給食の実践が生き生きと語られました |
米国の食料戦略に対抗する実践
第3部は、リレートーク「オーガニック給食で何が変わる?」をテーマに3氏が登壇。東京大学の鈴木宣弘教授が、給食にアメリカ産小麦使用を強制し、食生活の変化をもたらした要因が、子どもたちを標的にした戦後の洗脳政策にあることを指摘。ゲノム編集トマトを小学校に無償配布しようとしていることを批判し、安全・安心な食で子どもたちの健康と農家の生産を守るために、「農業全体を国民で支える政策を再構築することが必要だ」と呼びかけました。
アジア太平洋資料センターの内田聖子共同代表は、食のグローバル化をはじめ、気候危機やコロナ禍、生物多様性の喪失など、人間の生存基盤が失われつつあることに危機感をもつことが重要だと述べました。「学校給食は、こうした危機や貧困・格差を乗り越える重要な地域戦略だと位置づけられる」と語りました。
半農半歌手で環境活動家のYae(やえ)さんは、神の恵みを高らかに歌い上げた「アメージング・グレース」の歌声を響かせ、「土の中にたくさんの命が生かされている。オーガニック給食を広げて実現しましょう」と呼びかけました。
最後に「今、全国各地で多くの人たちがそれぞれの立場の違いを超えて給食をオーガニックに変えようと動き始めています。より安心で安全なオーガニック給食に変えていくために、全国の仲間たちと力を合わせていくことを誓います」とするオーガニック給食宣言が読み上げられ、参加者の拍手で確認されました。
(新聞「農民」2022.11.14付)
|