農民連全国代表者会議での発言
農民連全国代表者会議(10月6日)での北海道と宮崎県の発言を紹介します。
雄子牛110円でも買い手なし
大規模酪農ほど経営困難に
北海道農民連 酪農家(別海町)
岩崎和雄さん
いま北海道では、水田、畑作、酪農などすべてで大規模化が進められ、酪農ではTPP(環太平洋連携協定)対策として、畜産クラスター事業が進められてきました。この事業は、規模拡大して“高収益化”をめざす、そのための施設整備や機械導入に補助金を出す、というものです。
しかし実際には生産コストは非常に高いままで、収益性は低かったところに、ここにきて円安と穀物価格高騰で、ものすごい苦境に陥っています。
農協も貸し倒れを恐れて「セーフティーネット資金を借りてくれ」としきりにアピールしていますが、数千万円単位で借りなければ年末を越せないという非常に危機的な状況です。
輸入穀物や燃料が安いことを前提にした農業では、やればやるほど赤字が増えていく。これらに依存した国の政策を考え直すべきときです。
8月以降はさらに、肥育の素牛にされるホルスタインの雄子牛が、最低価格で110円にまで暴落しています。売れればまだいい方で、半数から3割くらいの子牛は市場に出しても買い手がつきません。2回市場に出しても買い手がつかない場合は、安楽死させるしかありません。
飲用乳価は11月から1キロあたり10円上がることになっていますが、加工向けが多い北海道では、積みあがった加工原料乳の在庫処理に生産者が2〜3円を拠出している状況で、実質的には値上がりしません。
今はもう、普通のやり方では乗り切れない状況です。他の地域の仲間とも協力して「要請書」を集め、酪農家の「農民一揆」を起こしていきたいと思っています。
45歳の和牛農家が命を絶つ
足運び「一緒にたたかおう」
宮崎県農民連 書記長
来住誠太郎さん
宮崎でも、いま畜産農家に本当に厳しい状況が押し寄せています。牛の価格が下落し、飼料は高騰し、農家を回って話を聞くと、「このままでは正月が越せない」「いや12月がどうなるか。先が見えない」と言います。
畜産クラスター事業が始まった当初は牛の販売価格も良く、規模拡大してがんばっていこうと大きな借金をした人が、その支払いが始まる今になって、「このままでは払えない」と頭を抱えています。
養鶏でも鶏の値段は上がらないのに、飼料代は年間450万円も上がる請求が来た、という話も聞いています。またJAが経営の厳しい農家にはお金を貸さないという「整理」を始めた、という話も出ています。
宮崎県農民連ではまず手始めに、畜産の会員240軒に、「緊急要望書」と実態アンケート、切手を貼った返信用封筒を付けて郵送しました。県内の畜産農家は、4859軒。農民連会員は約5%で、まだまだ足りません。多くの人にこの要望書を広げ、農民連運動が農業を守る力になると示したい。
えびの市では、45歳の繁殖農家が自ら命を絶ちました。組合員ではありませんでしたが、離農を考えていた矢先だったようで、こういう農家が今どんどん広がっています。農民連で畜産農家に足を運び、「自殺しないで、一緒にたたかおう」と呼びかけていきたい。
全国で声を上げれば、危機も打開できると信じています。
(新聞「農民」2022.11.14付)
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