中核都市で全国初
小中学校給食無償化
青森市で実現!!
「学校給食無料化をめざす青森市民の会」代表世話人
坂本麻衣子さん
(手記)
ウクライナ危機や円安。新型コロナ禍などで高騰する食材費や燃料費のため、全国の学校給食もコスト高に直面しています。家計の負担を減らすためにコロナ対策費として充てられる国の地方創生臨時交付金を活用して給食費を無償化する自治体が増えています。青森市は今年の10月から臨時交付金を活用して、市立小中学校給食が無償になりました。中核都市としては全国で初めてです。無償化を実現した青森市での運動と取り組みを紹介します。
シール投票・宣伝で
市民に広く知らせて
全国の無償化の流れの現状学び
わが家は子どもが5人いるのですが、4年前の2018年、一番上の子が小学6年でした。「今は小学生が2人で毎月の給食費はまだ1万円だけど、来年からは中学生が1人と小学生が2人で毎月1万6千円。負担が大きいな」と思っていました。ちょうどその年の10月、青森市議選が行われ、学校給食無料を公約に掲げていた6人の共産党候補が当選しました。まだその頃は「実現すればうれしいけど、できるのかな」と思っていました。
19年に「市民運動の会を立ち上げよう」と、呼びかけ人を募り、私も代表世話人3人のうちの1人になり、5月に「学校給食の無料化をめざす青森市民の会」を立ち上げました。年に1回総会を行い、団体加盟と個人加盟を増やし、ニュースを発行しながら運営してきました。事務局会議はほぼ毎月行ってきました。
多くの市民が集まる場所でのシール投票をするなど、多くの人に知らせることと市民の声を聞くことを大事にしてきました。また、学習も大事にしてきました。給食の歴史や全国の無償化の流れの現状を学び、他県の学校給食無料化の運動の様子や、「なぜ学校給食は無償にすべきなのか」なども対面やオンラインで講師をお呼びして学習してきました。
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春まつりで風船を配りながらシール投票 |
毎年、請願署名にも取り組みました。のぼり旗を作り、毎年5月から12月までは毎月土日や休日を選んで親子連れがよく通る百貨店前で街頭署名&シール投票行動を行いました。返信用封筒とチラシと署名用紙をセットにして、学習発表会など学校行事がある日に歩いてくる保護者の方に手渡して100人分ほど返ってきたときもありました。署名は3年間で6449人分集まりました。
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街頭宣伝で配布した風船 |
市民の声を聞いて
学習も大事にして
3年連続で請願否決されたけど
12月議会に向けて、請願署名を小野寺晃彦市長と市議会議長あてに提出し、請願も提出してきました。初めて「給食無料化を求める請願」を提出して全会派を回った際に「本来は国がやるべき」という議員もいて請願が不採択になったことから、次の年には国へ意見書をあげてほしいという請願も出しましたがそれも不採択に。「それなら外堀を埋めていこう」と「市民の会」は、県内の市町村議会に意見書採択の請願や陳情を出し、現在は県内40市町村のうち25の議会で国への意見書が採択されています。20年には青森市でも国への意見書は採択されましたが、21年まで3年連続で給食無料化を求める請願は否決され続けました。
しかし、私たちも運動を続け、他県や県内の無償化が進んできている現状や、なぜ無償化が妥当なのか(憲法26条や学校給食法では学校給食は教育の一環であることなど)を伝えているうちに、今年は特に署名への反応もよくなっていっていると感じていました。
私たちの会の代表世話人でもある村川みどり市議も、毎議会で常に学校給食無料化を迫り続けました。今年6月議会でも青森市教育委員会は村川市議の質問への回答で「保護者負担が必要」と答えていました。
運動と市民の声が
市長と議会を動かした
選挙の争点にもすることが大事
ところがそれから1カ月もたたない7月21日に小野寺市長は「(共産党以外の)5会派からの要請があった」として市立小中学校の学校給食を10月から無償にする、と突如発表しました。私たちは10月の市議選に向けて公開質問状を準備していたのでとても驚きました。これまでの経緯を考えると何とも腑(ふ)に落ちない実現の仕方ではありましたが、何はともあれ「私たちの運動と市民の声が市長と市議会の姿勢を動かした!」と喜びました。
首長選挙や地方議員選挙も、私たちの要求を実現させるためにとても大事な機会でした。県内を見ても学校給食の無償化は市民からの関心がとても高いため、争点となり選挙の前後に実現することがあります。候補者に学校給食無償を公約に掲げさせるためにも市民の運動とそれに伴う世論の高まりがとても大事だと思います。
学校給食無償化の妥当性や全国の運動に学び、幅広い多くの市民に呼びかけ、働きかけて世論を高めながら、議会への請願活動などを重ねていくこと、選挙の争点にもすることが大事だと感じた私たちの運動でした。
これからは他自治体の学校給食無償化が進むように、また、憲法で「義務教育は無償」としている国が学校給食無償化に責任を持つように運動していきたいと思います。
(新聞「農民」2022.11.14付)
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