「農民」記事データベース20221107-1528-01

今すぐ抜本的な支援強化を
緊急要望書 第一次提出

このままでは
経営続けられない!

畜産農家の悲鳴 農水大臣へ

関連/畜産個人要望書の取り組み各地で


農水大臣
今の困難乗り越える
支援が必ず必要だ

 「飼料も何もかも高騰しており、このままでは経営が続けられない。畜産農家への支援を早急に行ってほしい」――農民連は10月21日、この日までに全国の畜産農家から寄せられた「畜産経営を継続するための緊急要望書」を、長谷川敏郎会長から野村哲郎農水大臣へ、手渡しました。

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野村農水大臣(中央)に要望書を手渡す長谷川会長(左から3人目)ら

 この要望書は、飼料や燃料など生産コストの高騰で危機に直面している畜産への抜本的な支援強化を求めて、畜産農家一人一人が個人で署名するもので、いわば畜産農家の「直訴状」です。

 要請には、自らも和牛の繁殖農家である長谷川会長のほか、養豚農家の上原正さん(群馬農民連副会長、群馬県養豚協会副会長)と、山赴`貞さん(千葉県農民連執行委員)が参加しました。

 自家配合飼料にも支援強化を

 長谷川会長は、「子牛の価格も暴落しており、私の地元の島根ではつい最近、45歳の繁殖農家から“先が見えない”と離農の相談があった。宮崎からはやはり40代の畜産農家が自ら命を絶ったという知らせも届いている。要望書に込められた農家一人一人の思いを受け止め、畜産農家が何とか年が越せるよう、高い政治決断で抜本的支援をしてほしい」と求めました。

 養豚農家の山浮ウんは、「エサ代を払うと何も残らない現状なのに、現在もさらに値上がりが続いていて、今後が本当に不安だ。国として対策をとってほしい」と要望。母豚1300頭という比較的大きな養豚会社を多くの仲間と共同で運営している上原さんは、「飼料などが高騰し、今年は億単位の赤字になるだろう」と述べ、現行では支援策のない自家配合(自分で複数の種類の餌を仕入れ、混ぜ合わせる)をしている農家にも支援を行うよう訴えました。

 野村大臣は、「自家配合への支援問題では、牛の肥育農家から非常に強い要望が届いている。豚もなんですね」と応答。

 また、長谷川会長が、酪農では畜産クラスター事業を使って規模拡大した農家が、これから返済が始まるという今になってエサが高騰し、子牛価格は暴落するという現状にあることに触れると、野村農水大臣も「確かに規模拡大をした酪農家ほど厳しいと聞く。とくに乾燥牧草が高騰している。やはり自給飼料が大切だ」と述べ、「畜産農家が今をなんとか乗り越えるための何らかの対策が必要だ。いま補正予算の編成中で、具体策があと少しでまとまるので待ってほしい」と応じました。

 離農続々今すぐ経営継続支援を

 同席した日本共産党の紙智子参院議員も、「北海道でも酪農家の倒産が相次いでいる。この要望書1枚1枚にこもった畜産農家の切なる思いを真剣に受け止めて、対策に反映してほしい」と要望。

 同じく日本共産党の田村貴昭衆院議員は、「自家配合への支援については、既存の飼料価格対策で難しいのであれば、別の制度を設けてでも支援する必要がある。前向きに検討を」と求めました。

 長谷川会長は重ねて、「畜産農家は今まさに経営が立ち行かなくて、毎日離農が相次いでいる状況で、今支援がなかったらもう終わりというほどの危機だ。ぜひ対策を」と訴えました。

 この日までに届いた8県、90人分を第1次として提出。農民連では今後も全国の畜産農家に要望書への参加を呼びかけます。

 ※要望書は農民連のホームページからダウンロードできます。畜産農家であれば規模の大小にかかわらず、どなたでも署名できます。農民連本部まで原本を郵送でお送りください。


畜産個人要望書の取り組み各地で

 要望書寄せた農家が農民連加入
 宮城

 宮城農民連では畜産農家に足を運び、10月31日現在で25人を超え、農民連会員ではない畜産農家からも要望書が寄せられています。このうち1人の畜産農家は、農民連に加入し税金申告も農民連ですることになりました。

 訪問して判明 8軒いた酪農家が離農で4軒に
 千葉

 千葉県市原市農民組合結成準備会の西山一雄さんは、要望書を持って市内全部の酪農家を訪問し、訪問した全ての農家が要望書を寄せてくれました。

 この飼料高騰を受け、8軒あった酪農家のうち4軒がつい最近廃業していることが判明。西山さんは「これほど大きなショックを受けた訪問活動は初めて」と言います。

 がんばっている農家も「エサ代が3倍近くになった」「もう本当に参った」と対話に。西山さんは「この要望書は本当に情勢に合った呼びかけだ」と、さらに広く酪農家を回ることにしています。

 初対面でもその場で署名
 東京

 東京農民連は10月22日、武山健二郎さんと横山昭三さん、農民連本部の満川暁代常任委員が東京・清瀬市内の酪農家3軒を訪問。住宅地と隣り合う条件のなか、そのうち2軒は30〜40代の後継者ががんばっていました。

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東京・清瀬市の酪農家(左)と対話する東京農民連の武山さん(中央)ら

 ほぼ初対面でしたが、要望書の取り組みを話すと、「エサが高くてやっていけない。電気代も高い」「いつやめようか、家族で話し合っている」と、どの家でも苦況が語られ、最後に行ったお宅では、「国のやりかたはおかしい」と、その場で要望書を書いてくれました。

(新聞「農民」2022.11.7付)
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2022年11月

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