農家のための
税金コーナー
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農業赤字が雑所得!?
運動の力で見直しに
国税庁が8月に公表した雑所得の取り扱いの改正案が運動の力で見直されました。
そもそも「雑所得」とは、農業などの事業所得や不動産、給与所得など9種類の所得のどれにも当てはまらないもので、「雑所得(公的年金等)」と「その他の雑所得」の二つに分類されます。「その他の雑所得」の赤字は「雑所得(公的年金等)」のみと損益通算できます。
当初の改正案は、「その所得がその者の主たる所得ではなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得として取り扱って差し支えない」というものでした。
サラリーマンが多額の赤字の副業を事業所得に計上して損益通算し、本業の所得を減らす「副業節税」の規制をねらったものです。
この改正案が通り、300万円で一律に判断されると、低米価のせいで赤字を余儀なくされている米農家など兼業農家の農業赤字が農業所得として認められず雑所得扱いとなり、損益通算できずに多くの税負担を求められる危険性がありました。
国税庁は8月1〜31日の間、パブリックコメントを実施。7000件を超える意見では、実質的な増税となりかねないことから「事業性の有無を一律基準で判断すべきではない」「真面目に記帳等をしている者は、収入金額300万円以下の副業であっても事業所得と取り扱うべきではないか」など懸念の声が多く寄せられていました。
この改正案に対し、全国商工団体連合会(全商連)を先頭に国税庁交渉を実施。農民連も、改正を食い止めるための働きかけを進めました。
国税庁は多くの懸念の声を受け、10月7日に発表した改正では300万円とした一律基準を撤回。記帳や帳簿の保存がされている場合は年間300万円以下でも事業所得として認められることになりました。
問題は、3年連続して赤字が続く場合は「赤字を解消するための取り組みを実施していない」として「営利性が認められない場合」と判断され、雑所得とされかねないことです。国の農業つぶしで苦しむ米農家や生産者を、勝手に「事業性がない」と決めつけることは断じて許されません。
年金や兼業収入で赤字を穴埋めしている実態を明らかにするためにも、記帳をすることがますます大切になります。農民連の『農業収入・支出記帳簿(税金ノート)』も活用し、自主記帳・自主申告を進めましょう。
(新聞「農民」2022.10.31付)
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