「農民」記事データベース20221031-1527-01

ゲノム編集トマト
苗を小学校に配布しないで

全国交流集会開

 ベンチャー企業のサナテックシード社(東京都港区)は、ゲノム編集されたトマトの苗を今年度から福祉施設で、来年度から小学校で配布する計画を発表しています。福祉施設の人たちや小学校の児童たちが半ば強制的に栽培させられ、食べさせられる恐れがあり、全国各地で苗の配布に反対する活動が始まっています。10月19日に、「ゲノム編集トマト苗配布問題に関する全国交流会」がオンラインで開かれ、参加者は250人を超えました。主催は47の団体で構成される実行委員会。農民連も実行委員会に参加しています。


花粉飛散し環境を汚染
食の安全もおびやかす

 海外・日本でも批判多く不人気

 基調講演を「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」代表の天笠啓祐さんが行い、ゲノム編集トマトとは何か、何が問題かについて解説しました。

 2012年にゲノム編集技術の開発が容易になり、その後、アメリカではカリクスト社が高オレイン酸大豆の開発を進めますが、今年になり同社が経営破たん。世界でも市場流通しているゲノム編集作物は、血圧を低く抑えるなどと宣伝されている日本の高ギャバトマトだけになったことを指摘しました。

 日本でもゲノム編集トマトへの消費者の不評が大きく、サナテックシード社は販売価格を下げるなどするなかで、無償で学校や福祉施設に苗を提供することを打ち出しました。天笠さんは「ギャバが健康に良いという根拠はない」という『サイエンス』誌の論文と、「高ギャバが健康に悪いということは否定できない」とする欧州の科学者グループの指摘を紹介しました。

 オフターゲットを引き起こす

 さらに、ゲノム編集技術は、遺伝子の類似の配列を壊すオフターゲットを引き起こし、大規模な染色体破砕を招く危険性があるなど粗っぽい技術であり、正確な効果を求める医療への実用化は困難などの問題点を指摘しました。

 花粉飛散による汚染が起きる可能性を述べ、「学校や福祉施設への無秩序な苗の配布は汚染源を拡大し、そこで収穫したトマトを食べることで、健康への悪影響が広がりかねない」と強調。最後に「食の安全を守り、生物多様性を守り、未来の世代を守るために、ゲノム編集トマトの配布を止めよう」と呼びかけました。

 北海道と徳島で要望書送り回答

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山負h子さん

 次に、「北海道食といのちの会」事務局長の山負h子さんが北海道の取り組みを報告しました。

 学習会などでゲノム編集とは何かを学んで、ゲノム編集トマト受け取り拒否を求める要望書と回答書を道内全179市町村の首長と教育長あてに郵送。回答のない自治体へは電話かけで送付を促すなどし、134自治体(75%)から回答を得、「受け取らない」が39(29%)、「受け取る」がゼロだったことを紹介しました。

 記者会見などを開き、結果をメディアに公表。「全国に広がっている各地の運動と連携して世論を強めたい」と述べました。

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柴田憲徳さん

 「食と農を守る会徳島」代表の柴田憲徳さんは、30団体12個人の連名で取り組み、県内24市町村の自治体と教育委員会を直接訪問して要望書を提出しました。

 その結果、「受け取らない」が48のうち18、「受け取る」はゼロでした。しかし、慎重な対応のところも多く、「引き続き、議会での請願採択や条例制定をめざす必要がある」と語りました。

 「受け取る」は全国各地でゼロ

 そのほか、「県内全自治体を直接訪問し、多くが『受け取らない』と答えたが、ゲノム編集自体を知らないところも多かった」(香川)、「郵送で要望書を送り、8自治体から『受け取らない』と回答があった。県内の環境団体や生産者とも連携して取り組んでいきたい」(宮城)、「生協会員の議員に質問してもらった。自治体への働きかけを強めたい」(長野)など、各地の経験を交流しました。

 最後に、司会も務めた原野好正さん(OKシードプロジェクト運営委員)が、「受け取らない」と表明した自治体などが全国で153になったことを報告し、「まだ働きかけをしていない府県もある。今日の交流会を機に全国で活動を広げよう。各地の情報もぜひ寄せてほしい」と結びました。

(新聞「農民」2022.10.31付)
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2022年10月

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