新婦人との産直ボックスが
私たち夫婦を成長させてくれた
新規就農して3年目
長谷部太郎さん 犀さん
山形県甲斐市
不耕起の自然農で
固定・在来種70品目
「新日本婦人の会との産直ボックスが、農業を始めたばかりの自分たちを引っ張って、ここまで成長させてくれました」
山梨県甲斐市で2020年4月から就農し、不耕起の自然農で、1ヘクタールほどの農地を借り年間約70品目の固定・在来種野菜を栽培している、たろうファームの長谷部太郎さん(36)、犀(さい)さん(38)夫妻はそう話します。
「1年目の野菜もまだできないうちから、山梨県農民連の谷口和美さんに、声をかけていただいて出荷することになりました。1〜2年目はがむしゃらにやってきましたが、3年目になって、手応えや見通しができてきました」
現在は週7〜10セットの野菜ボックス(5〜7品目)を出荷。アルバイトも雇いながら、年間を通じて出荷の体制を作っています。また、毎年1回、長谷部さんの畑で交流会をしています。「今年の交流会はサツマイモの収穫体験を計画中です。野菜ボックスはやっていて楽しいです。新婦人の会員さんの家庭に直接届けるので、箱詰めの時に相手の顔が浮かんできます。毎週おたよりも入れることで、思いを発信したいという自分の願いに気づかされました。ずっと続けていきたいです」
10代のころは引きこもりを経験した太郎さん。20代になり各地をアルバイトしながら旅をする中で、農業への思いが形作られました。「温暖化で自然の循環が壊れ、地球環境にひずみが出ているのを感じていました。また、自然農の野菜を食べたとき、味がほかのものと違ったこともあり、安全でおいしいものをエコロジカルに作りたいと思い、自分にできる究極の形が自然農ではないのかと至りました」
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収穫まっさかりのナスの手入れをする長谷部夫妻 |
やりがいを感じ農業の道へ進む
犀さんは「もともと体を動かす仕事がしたいと思っていました。20代のころに農業は作ったものを色々な人に食べてもらえるやりがいのある仕事と思い、5年前から農業のアルバイトを始め、その中で太郎さんと出会いました」と語ります。
これまでには様々な苦労もありました。「刈った草を覆土代わりにして種を一粒ずつまいていくのですが、毎日2時間、2週間かけてまいたニンジンの種が、ほとんど発芽しなかったこともありました。すべてが手作業なので、横着ができず自分と向き合っていかないといけません。最初は土壌の環境がよくなってカチカチだった畑の土が、最近は土壌の環境がよくなって柔らかくなり、作業も楽になってきました」
社会のひずみを是正する
農民連の活動がんばりたい
麦や大豆を生産自給率上げたい
たろうファームでは野菜ボックスのほかにJAの直売所2軒と甲府市内の自然食品店にも出荷。口コミで個人販売のお客さんも広がりました。しかし、それでも2人で生活するのがやっとだといいます。「毎日働いても稼げず、悔しい思いもあります。この状況ではほかの人にも勧められません。このままの社会ではつぶれてしまいます」
それでも2人は前向きに語ります。「今は野菜だけなので、麦や大豆などの穀物や、菜種なども生産し自給率を上げていきたいです。また地域では90代の農家でやめる方もおり、その農地を守り、品質も上げていきたいです」
「新聞『農民』や『新婦人しんぶん』には求めていたテーマと近い情報があり、とても参考になります。今の社会は、ひずみが農業や弱者に出ていると思います。それを是正する農民連の活動に、自分たちも少しでもかかわってきたい」と決意を話す長谷部さん夫妻でした。
(新聞「農民」2022.10.10付)
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