熊本県の学校給食パン
国産小麦100%に
県民の願い、給食関係者の努力実る
熊本県では、2022年度2学期から、学校給食のパンが国産小麦100%で提供されます。2学期スタート時には、熊本県産70%・北海道産30%の割合です。実現の背景には、学校給食パンに国産小麦使用を求める署名活動への大きな協力の輪の広がりがありました。県では昨年度から、品質の優れた国産小麦で学校給食パンを完成させるため、県学校給食会、県パン協同組合、熊本製粉の3者で協議・試作を重ねてきました。こうした学校給食関係者の努力も実現の力になりました。
農民連食品分析センターの調査をきっかけに
輸入小麦を国産・県産にと運動
くまもとのタネと食を守る会
学校給食署名プロジェクト
國本聡子さん
「くまもとのタネと食を守る会」(くまたね)では、2020年春、学校給食署名プロジェクトとして子どもたちが学校給食で食べるパンの原料小麦を国産小麦(できれば県産)へ変えてほしいという声を行政に届ける活動を始めました。海外産輸入小麦を使った商品や学校給食のパンに除草剤(ラウンドアップ)の主成分グリホサートが残留する現状を報告した「農民連食品分析センター」の調査・分析リポートが大きなきっかけけです。
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学校給食のパンについての要望書と署名を届けました=21年1月20日、熊本県庁 |
熊本県の学校給食は地産地消食材の利用率も高い方ですが、学校給食用パンの原料小麦は大部分が輸入小麦でした。より安全な「学校給食」を求めて、おとな世代が食材への理解を深める必要を感じて、熊本県教育委員会委員長と県知事あて要望書「熊本県の学校給食に国産小麦を使ってください」を作成して周りの人に知らせることを始めました。
署名用紙の配布スタートの20年9月に「除草剤グリホサートなど農薬のヒトへの毒性について」の勉強会を開催しました。
グリホサートやネオニコチノイド系農薬など合成化学物質が私たち、特に幼い子どもに与える影響がどういうものか、理解を深める機会を設け、情報収集も積極的に行った上で県教育委員会と県学校給食会に直接訪問。署名活動の趣旨を説明して輸入小麦を使った商品からグリホサート残留が検出されて健康影響を懸念していると伝えて情報提供するなどの活動をしました。
昨年12月には、県議会議員の方に同行して学校給食用パン原料小麦を納入する熊本製粉を訪問し、ぜひ、国産・県産小麦パンの提供に協力してほしいとの思いを伝え、国産小麦への切り替え実現の課題などについて意見交換。12月熊本県議会での一般質問で取り上げられました。
その後、「熊本県の学校給食に国産小麦を」要望書の趣旨を記した署名用紙を配る活動への賛同の輪が広がり、1万5千人分(22年3月現在)を超える署名を届けることができました。署名活動の広がりは大変うれしく勇気づけられています。
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出席者から要望理由や要望する思いを伝えました。あいさつする「くまたね」の田尻和子代表(左、立っている人) |
最近、学校から「2022年2学期から給食のパンを国産小麦100%にします」とのお便りを子どもたちが持ち帰ったと連絡があったときは本当に驚き、こんなに早く実現された関係者の方々に感謝・感謝でした。なにより、多くの署名を集めて「くまたね」に託してくださった皆さんの思いが形になりほっとしています。
学校給食への公的援助と
地場産・国産を求めて
新婦人県本部副会長 上田たかこさん
戦後、学校給食はアメリカの余剰小麦と粗悪な脱脂ミルクで賄ったと知ったとき、大きな衝撃を覚えました。新日本婦人の会の先輩たちは「給食には生乳を」と運動を広げたと聞いています。
それから半世紀以上が経ち、感染症までがグローバルに世界を襲っています。新婦人熊本県本部では、コロナ禍の中で物価高が止まらず家計に深刻な影響が出ていると受け止め、学校給食への公的援助の早急な実現と、国際情勢に左右されないよう給食に地場産、国産の食材を!! と熊本県へ要請・懇談をしました。
9月に入り、国産小麦100%で焼いたパンが子どもたちの給食に出されるというビッグニュースが飛び込んできました。全国に広がって生産者が増え、麦畑が広がり、誰もが国産小麦のパンのおいしさを味わえる世の中になってほしい。
県産の農産物を推進する
姿勢は生産者の励みに
県農民連女性部 紺屋本裕美子さん
わが家では小麦は作っていないのですが、学校給食に県内産の農産物使用を積極的に進める県の姿勢は、生産者としてとても励まされます。
熊本は野菜でも果物でも何でも作っているので、他の農産物にもこの動きが広がるといいなと思います。
学校給食への出荷は規格や納品など課題も多いですが、自治体や農協などとも協力すればもっとできることも広がるはず。
熊本県農民連でも「くまもとのタネと食を守る会」の皆さんをはじめ、いろいろな市民運動とももっと協力して、運動を強めていきたいです。
(新聞「農民」2022.10.10付)
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