クルミに病気が大発生
岩手県九戸村 小井田寛周さん
高温多湿、雨つづきで
病原菌が爆発的に発生
岩手県北部の九戸村で、手打胡桃(テウチグルミ)を基点に家畜を取り入れた循環型農法の「立体農業」で農薬・化学肥料に頼らないクルミを生産しています。
春の受粉上々で豊作期待したが
2・7ヘクタールの農園ではクルミの成木50本を栽培しており、長いものは樹齢70年を超え、樹高は20メートル程にもなります。そんなクルミに、これまで経験のない病気が発生しています。本来、10月下旬から落葉するはずの葉が、7月頃から変色後落葉し、果実に養分が行き渡らず未熟のまま落ちてしまうというものです。
昨年は4、5本に症状が出る程度でしたが、今年は全ての木に感染が広がり、9月現在、果実に影響が出るほど症状が進行してしまった木は全体の3分の2まで及んでしまいました。今年は春の受粉も上々でたくさんの実が付き、豊作を期待していただけに非常に残念な状況です。
気候変動防止が何よりの対策
8月上旬の長雨で湿度異様に高く
調査の結果、クルミ黒斑細菌病という病害だということが判明しました。2013年頃から長野県で発生が確認された病気で、数年をかけ北東北にも到達してしまったと思われます。
病気がまん延した原因と考えているのは異常気象です。病気の発生はあったものの農園中にはまん延しなかった昨年に比べ、今年は雨、そして高い湿度が続いた夏でした。
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病気で落葉したクルミ |
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正常なクルミ
(上の写真と同日に撮影) |
特に8月上旬には雨が降り続き、湿度の高さもこれまでこの地域では経験したことがありませんでした。高温多湿状態で、菌が爆発的に増殖してしまったと考えています。
農薬に頼らず木の生命力
高め共生の道を模索
農園に家畜放牧 農薬使わず対処
長野県では防除として、特に農薬の散布を推奨していました。しかし農薬は家畜を放牧している以上、使用が難しく、できる限り使用したくありません。
わが家では木に病気への抵抗力をつけてもらい、農薬に頼らない方法を探りたいと考えています。木の生命力を高めることで病気の根絶ではなく共生の道を模索したいです。
またこの件で、改めて異常気象がもたらす恐ろしさを痛感しました。これまで経験のない病害がいとも簡単にやってくる、気候変動への対策が何よりの抜本的対策だということだけは、今言える確実なことではないでしょうか。
(新聞「農民」2022.9.19付)
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