参院選の結果と
これからの政治
(中)
神戸女学院大学
石川康宏名誉教授の講演から
当面の政治の大きな課題
国葬押しつけ許さず
旧統一協会との癒着究明を
岸田首相は選挙直後に「できるだけ早く改憲発議したい」と述べました。振り返っておけば、自民党は2010年の新綱領で「我が党は平成21(2009)年総選挙の敗北の反省のうえに…日本らしい日本の保守主義を政治理念として再出発したい」(前文)と、保守の名で右翼色を前面に出し、その上で政策の第一に新憲法制定、そして一国平和主義を観念論として排することを掲げました。
改憲・軍拡の「黄金の3年間」を許さない
12年からの安倍政権がこれを本格的に推進する政府となりますが、驚いた野中広務元幹事長は13年の講演で「いまの日本のあり方が私には本当に恐ろしい」「その裏側にアメリカの大きな力が働いているのではないか」「戦争はやりません、憲法は変えません。その思いを新たにする今日であってほしい」と述べています。
今後、改憲策動や「戦争する国づくり」への攻勢が強まると思います。しかし見ておくべきは、12年から19年にも改憲派が国会議席の3分の2以上を占める「黄金」の期間があったということです。それを「黄金」にさせなかったのは、国民投票が実施されれば改憲を跳ね返したであろう世論の力でした。それが改憲発議を彼らに思い止まらせる力になりました。
自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などにも具体的な改憲案での合意はなく、そのすり合わせには一定の時間がかかるでしょう。
他方で「9条守れ」「核兵器禁止条約に参加せよ」「武力でなく平和外交優先を」の国民の願いは多数派です。ここに私たちが、再び「黄金」を空振りに終わらせる力の源があります。さらに広く手をつなぎ、合意をより確固としたものにする取り組みが必要です。
国葬はアベ政治継承の正当化
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国葬に反対する市民のデモ=8月16日、東京・新宿区
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同じく選挙直後に、安倍派(清和会)会長代理の下村博文氏は「(自民党や閣僚の次の人事で)保守派を疎んじるな」と岸田首相に迫りました。これまでの強引なアベ政治を継続せよということです。安倍氏国葬の提起も、自民党内右派が岸田氏を従わせたものとなっています。
岸田政権は、9月27日に国葬を行うことを決定しましたが、それには根拠法がなく、国会での予算の審議もなく、憲法の「法の下での平等」「内心の自由」にも反しています。これが市民の非常に大きな反発を呼んでいますが、それは2012年からのアベ政治そのものの批判を含むものとして、非常に大きな意味をもっています。
軍事優先・生活圧迫予算を許すな
さらに政府は、2023年度予算に向けた概算要求で防衛費に上限を設けないことを決めました。2%への軍事費倍増方針の具体化です。
金額を増やすだけではありません。その使い道は、南西諸島の対中国ミサイル要塞化や、装備の変更によって核爆弾を搭載できるF35A戦闘機の爆買いなど、中国を仮想敵とした敵基地攻撃能力を強化するものです。それはアジアの軍事的緊張を高めるものでしかありません。
軍事費の増大は市民の生活関連予算の削減をもたらしますが、その削減の目的が「台湾有事」を口実とした対中戦争の準備であることをあわせて伝えていくことが必要です。
追及されるべき統一協会との関係
自民党等と統一協会(現世界平和統一家庭連合)の癒着が暴露されています。
統一協会の政治部といわれる国際勝共連合は、安保法制を推進し、野党共闘を批判するキャンペーンをホームページに誇らしげに書いています。反共の政治家と力を合わせ、選挙で応援してきたことも明言しています。
統一協会は「霊感」を根拠に「洗脳」した市民から財産をまきあげる反社会的団体ですが、それと力を合わせる人間に議員の資格はなく、もちろん政権担当の資格もありません。
自民党と統一協会の改憲案がよく似ていること、自民党の改憲実現本部の役員には統一協会と関係の深い議員が多数含まれていることも明らかになっています。
この両者の異常な癒着を暴露し告発することは、自民党政権の正当性を揺るがす重要な論点となっていくでしょう。
(つづく)
(新聞「農民」2022.9.12付)
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