「農民」記事データベース20220829-1518-10

広げよう!
地産地消の学校給食

寄稿
市議会議員
いまい農場(平飼い自然養鶏)
今井和夫


兵庫 宍粟市
米はほぼ100%宍粟産
他も地元産・県産・国産の順に

 人口約3・5万人の兵庫県宍粟(しそう)市は、学校給食食数約3200食(教職員含む)です。宍粟市学校給食の優れた面の主なポイントは次の通りです。

 保冷庫の設置で1年中地元産を

 (1)ほぼ100%地元産コシヒカリ米飯給食。他も経験させたいと、地元産の小麦をナンに加工して出している日が1日だけありますが、それ以外はすべて米飯、地元産コシヒカリです。

 (2)その他の食材も、まずは地元産、次に県産、次に国産で用意しています。地元産野菜の使用率は7割を超えています。ジャガイモ、タマネギは年中、地元産が使えるように保冷庫も作っています。

 (3)インスタント食品・冷凍食品は使いません。基本はすべて手作り。カレー、シチュー、ハンバーグ……。みな、素材から調理して作ります。だから、もちろん、一般に使われている食品添加物等は一切使われていません。

 (4)しょうゆ、塩、みりん等の調味料も極力こだわりのものを使っています。みそも地元の米と大豆を使って、こうじから地元の加工所でつくります。

 (5)小麦粉も大豆も地元産です。豆腐や油揚げも。

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給食で使用する豆腐や油揚げは、地元業者が市内で生産された大豆を加工して作られています

 (6)鹿肉、牛肉、川魚(アユ・アマゴ)等、特徴的な地元産も使えるよう、市から補助金が出ています。(市内食材補助として年間約1400万円)

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市内で狩猟により捕獲された鹿の肉を食材に使用しています。鹿肉を使った献立(もみじカレーライス)

 (7)安い給食費。加工食品・インスタント食品を使わず、地元産率が高いので、給食費は現在のところ、一食あたり小学生220円、中学生240円と県下でも1、2の安さです。現在では、食材費高騰のため、市がさらに補てんしています。

インスタント・冷凍使わず
基本はすべて手づくり

 栄養教諭先頭に生産者らが協力

 ここに至るまで、特に栄養教諭のリーダーシップが大きく、それに、調理員、職員、生産者が協力してここまでの内容を作りあげてきました。平成25(2013)年には農林水産大臣賞も受賞しています。

 さらに素晴らしいところは、この内容が新しい栄養教諭や職員に伝えられているということです。

 中にはインスタント食品を使いたがる方もいると聞きますが、当市では「地元産・国産・手作り」はしっかり受け継がれています。

 今後の課題は、食材の有機化です。もともと、中山間地なので米、野菜等、一般に売られているよりは農薬の使用量は少ないか、あるいは、家庭菜園の延長で無農薬のものも多いのですが、市内全般に有機食材の生産者は極めて少なく、それがこれからの課題です。

 その対策と山間地の農業振興も兼ねて、今年から特別栽培米をJAと市が中心になって取り組みを始めました。

 「安全な食材を再生産可能な価格で農家から買い取る」こと。その差額をどうするか。あるいは、どのようにして真っ当な価格で消費者に買ってもらうか、それがこれからの大きな課題かと思います。

 以上のような皆さんの努力の結果、宍粟市学校給食の喫食率(残さずに食べる率)は98・0%です。

(新聞「農民」2022.8.29付)
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2022年8月

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