検証 断罪
「アベノミクス」農政
(2)
「戦後レジームの解体」
家族経営守る制度に対する
最悪の攻撃
総自由化体制に突入
安倍元首相が「毒」を「薬」と言いくるめて強行したTPP(環太平洋連携協定)を皮切りに、日本は史上最悪の農産物総自由化体制に突入しました。
2018年9月の国連総会で、トランプ前大統領が「アメリカ・ファースト」「グローバル化拒否」を宣言するかたわらで、安倍元首相は「自由貿易の旗手として立つ」と声を張り上げました。
その言葉通り、アメリカが脱退してTPP11となった協定が発効したのは18年12月。19年2月には日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(日欧EPA)、20年1月には日米貿易協定が発効しました。
その結果、20年度の食料自給率は史上最低の37%に下がり、17〜20年の農畜産物生産額は3400億円減少しました。これには、新型コロナウイルス禍などの影響もありますが、TPP11、日欧EPA、日米貿易協定の3つのFTA(自由貿易協定)発効に伴う輸入増が有力な要因です。
政府は、3FTAによる生産減少額を10〜15年後に3700億円と試算していましたが、発効後1〜2年でこれだけの被害が出たのです。
空前の安倍政治不信
TPP大筋合意後に行われた全国農協組合長アンケートでは、9割を超える組合長が「TPPは日本農業に悪影響がある」(96%)、「安倍農政を評価しない」(93%)と答えていました(図)。安倍政治不信は空前の規模に達していました。
これに対し、農林水産省幹部は「安倍さんを怒らせたら農業対策費が1円も出なくなるぞ」と脅していました(「日経」15年10月15日)。
脅しが効いたのか、TPP反対の国民的共同の一翼を担っていた全国農協指導部は、潮が引くように運動から撤退していきます。しかし、これでは終わりませんでした。
「戦後レジームの解体」
安倍氏はもともと、第1次政権時に「戦後レジーム(体制)の解体」を叫んでいました。
農政における「戦後レジーム」とは、戦後農地改革で創出された家族農業経営を支えるための制度・政策的枠組みです。安倍元首相は、これを「既得権益の岩盤規制」と激しく非難し、「日本を世界で企業が一番活躍しやすい国にする」「民間企業が障壁なく農業に参入できるようにする」ことを狙って、最悪の農政改革を強行してきました。
(1)農地制度の改悪――家族経営を追い出し、民間企業を含む「担い手」に農地の8割を集中させる。
(2)家族経営の協同組合である農協をつぶす。
(3)価格保障の解体――戸別所得補償と生産調整を廃止、米価暴落を放置。
(4)種子をアグリビジネスに明け渡す――主要農作物種子法廃止、種苗法改悪。
(5)国境保護を廃止し、農産物総自由化体制に突入する。
(6)世界最低の低自給率国である日本を、世界3位の食料輸出国にするという大ボラ。
農協解体攻撃
TPPに次いで安倍政権が着手したのは、農協解体攻撃でした。安倍政権にとって、農民の協同組合である農協自体が邪魔物であったのに加えて、TPPに反旗をひるがえしたからです。
その狙いは、(1)共同販売と共同購入を崩して、農産物の買いたたきと資材価格つり上げを狙う大企業の要求にこたえ、(2)単位農協から信用・共済事業を引きはがし、(3)最終的には、農協事業と140兆円の農協マネーを巨大資本に引き渡す――ことにありました。
この狙いのほとんどは、強力な抵抗によって道半ばになっていますが、規制改革推進会議などで火種はくすぶり続けています。火種は消さなければなりません。
(つづく)
(新聞「農民」2022.8.29付)
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