岩手・陸前高田
海の豊かさを守る
持続可能な漁業をめざして
第6回食と漁の地域未来フォーラム開催
SDGs(持続可能な開発目標)17のうちの14番目「海の豊かさを守る」をテーマに、「第6回食と漁の地域未来フォーラム」が7月24日、岩手県陸前高田市で開催されました。国連・小規模漁業国際年2022を記念し、小規模沿岸漁業の振興や水産資源の管理について、報告と討論が行われました。
JCFU全国沿岸漁民連絡協議会、岩手県漁民組合、岩手県農民連、NPO法人21世紀の水産を考える会の共催。漁業者、農家、自治体関係者、地方議員、大阪や東京からの消費者を含め51人が参加しました。
小規模漁業国際年を記念して
浜の文化・環境 次世代につなぐ
岩手県漁民組合の瀧澤英喜副組合長は、沿岸漁民にサケ刺し網許可を求める取り組みや大型底びき網漁による乱獲・漁具破壊の規制を求める漁民組合の運動を紹介したうえで「漁船漁業と、浜の環境・社会・食文化をどう次世代につないでいくか、共に学び深めあおう」とあいさつ。
二平章・茨城大学客員研究員は、今年は国連が決議した「小規模漁業国際年」であること、世界の小規模家族農業・漁業が世界の農業・漁業経営体の9割以上を占め、食料の8割を生産していることにふれ、「規模は小さいが価値は大きい」と強調しました。
一方で、日本の漁業政策が国連の提起する「家族農業(漁業)10年」や「小規模漁業国際年」を無視し、「新漁業法」のもとで資本漁業優先の「規制改革」にまい進し、国際的な流れに逆行していることを批判しました。
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漁業の未来について話し合ったフォーラム |
原発汚染水の海洋放出やめよ
また、21世紀の水産を考える会の栗原春樹氏は、「原発汚染水の海洋放出をやめさせ『海の豊かさを守る』ための代替案」として報告。米国における原発100マイル以内の郡の高い乳がん死亡率、北海道泊原発近くの泊町の高いがん死亡率を紹介し、原発の排気にはトリチウムが多いことを合わせて考えると、人間に取り込まれている可能性を示唆。海洋放出の場合は、植物プランクトンが有機結合型トリチウムに変換し、食物連鎖を経て、やはり人間に取り込まれる可能性を指摘しました。
また、海洋放出すれば「風評」被害が漁業に大きな打撃を与えると述べ、(1)大型タンクによる陸上保管、(2)モルタル固化による処分、(3)濃縮分離処理、(4)大深度地中貯留など海洋放出に代わる方式を採用すべきだと訴えました。
漁業資源を守る若手漁業者たち
千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合の鈴木正男組合長、酒井光弘、渡辺秀人両副組合長と主婦の今井和子さんが「SDGs県認証を受けた千葉外房漁民のキンメ漁業管理」として報告。16地区の漁民が全員一致の原則で、操業時間や禁漁期間、隻数の制限などでキンメ資源を守り続けてきた漁民の自主的管理内容を紹介。千葉県のキンメ漁獲量が日本一となったこと、SDGs県認証を受けたことなどを紹介しました。
地元、岩手県からは、陸前高田市と大船渡市の若手漁業者3氏が発言。より浅い水深に養殖かごを設置して品質向上や省力化をはかるカキ養殖の新技術や、深夜・早朝に集中しがちなホタテ養殖の就業時間の改善にむけた思い、ボランティアダイバーを受け入れてのウニ駆除など、カキ養殖3代目若手ならではの取り組みを紹介しました。
自治体独自の支援制度も紹介
パネル討論では、陸前高田市議会議員の伊勢純氏が、「小さなまちの大きな支援―岩手県陸前高田市の漁業支援策―」について新規・後継ぎ就業者への支援策や漁獲共済制度への補助など陸前高田市独自の補助制度を紹介しました。
議員が先頭に事業復活支援金の申請サポートを広げた事例も紹介しながら、漁業者の要求に寄り添った対策の必要性を強調しました。
会場からも「孫の代を考えると心配。食の問題、温暖化の問題に対し、国はまじめに対策を進めていない。本腰を入れなければダメ。いろいろな場所で発言するようにしている」など市民として地域の未来、国の未来を心配しての発言もありました。
JCFUが全国各地で開催している「食と漁の地域未来フォーラム」に消費者もたくさん参加し、生産者と一緒に学ぶことが持続可能な社会づくりに欠かせないことであることを強く感じさせるフォーラムでした。
(新聞「農民」2022.8.8付)
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