「農民」記事データベース20220801-1515-01

どうなる!? 22年産の米情勢

政府は米価と需給に責任を持て

3年連続下落のおそれ

関連/米屋さんと生産者をつなぐ交流会中止のお知らせ


このままでは米づくりは困難

 2年に及ぶコロナ禍は、中・外食を中心にした米需要を大幅に減少させ、市場に過剰在庫を生みだし、2年連続の米価暴落を招きました。

 2021年産米市場価格は、前年比3000円以上の大暴落となり、JA概算金・仮渡金は一部地域・銘柄を除いて、60キロあたり8000〜9000円という大規模経営でも大赤字となる水準でした。

 安倍・菅・岸田の歴代自公内閣は、過去最大規模の「減反」拡大を推し進め、21年産6万3000ヘクタール、22年産では、さらに4万ヘクタールも上積みする以外、何も米価対策をとりませんでした。そのため、米価が下落しても販売は進まず、卸売業者等は21年産米の仕入量を徹底して抑制しました。

 新型コロナの感染拡大が進んだ年明け以降も販売環境は改善せず、米価は下落し続け、21年産米の22年6月時点の相対平均価格は1万1683円(消費税別)となりました。この水準は14年産の1万1081円に近づき、実勢価格はさらに下回るような状況となりました。

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 22年産米への 「期待」も、在庫・作柄・新型コロナで消滅

 21年産米の集荷数量は290・5万トン(5月末時)で、対前年差▼(マイナス)4・2万トンとなっています。うち契約済み数量は266・9万トンで同プラス9・8万トンとなっています。これには11月以降に販売が開始される周年供給事業の約40万トンが含まれます。

 一方、販売数量は155・4万トンで同▼0・4万トンとほぼ前年並みとなり、この結果、倉庫に在庫はあるのですが、市場で取引される米は少なくなり、現在、市場取引価格の上昇が見られる結果ともなっています。

 5月末の民間在庫は前年より5万トン多い204万トンとなり、2015(平成27)年産からの統計で5月末の在庫量が200万トンを超えたのは初めてで、今月末の食糧部会で表される6月末在庫は220万トンを超しかねない水準です。

 米業界ではこの1年間、仕入れを抑制した卸売業者などは、21年産米の在庫負担が軽減されており、新米仕入れを昨年より早く、価格も上昇するとみる業者が多くなっています。

 しかし、22年産米が平年並みの作柄となり、コロナ禍が継続することになれば、想定以上に米価下落が継続する可能性が高まります。

「作付け減らして米価維持」の政策は大破たん

実効ある肥料・資材高騰対策を

 「米を守れ」国民合意の大運動を

 農民連と農民連ふるさとネットワークは、全国で米価下落阻止のたたかいを20年春から展開し、昨年秋には岸田内閣に20年産米の「15万トン特別枠」という、実質「市場隔離」を実行させました。しかし、数量が少なく、条件が合えば販売も可能なため、市場に影響を与えるには至らず、価格上昇にはつながりませんでした。

 さらに、米づくりに苦難を強いているのが、肥料はじめ生産資材の高騰で、大規模経営でも採算がとれない事態の中で、22年産米の収穫期を迎えようとしています。

 減反を拡大しても米価を維持・回復させることはできません。政府の「生産量を減らせば米価が維持できる」という政策は大破たんしています。このままでは、離農の連鎖となり、米づくりをする農家は消えてしまいかねません。

 ロシアのウクライナ侵略以前から世界的に穀物価格が上昇しているなか、「米減らし」だけを続けたら食料安全保障は確保できません。

 異常な猛暑と少雨で夏野菜の生産に甚大な被害が広がっています。燃油、飼料、肥料、資材などの高騰によるダメージも大きくなるばかりです。全国各地から生産規模を問わず、「国はいつ支援してくれるのか」という悲痛な声が大きくなっています。

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出穂を前に、畦道講習会で意見を交わす生産者たち

 最大の問題は市場に丸投げの政府

 いま、日本の農業と米作りは危機的事態を迎えています。

 政府が米価と需給への責任を放棄し、市場に丸投げしていることが最大の問題です。

 37%という異常な食料自給率を引き上げるためには、稲作を持続可能な方向に転換することが不可欠です。そのために、せめてアメリカ・EU(欧州連合)並みの価格支持・所得補償、実効ある肥料・資材高騰対策、自然災害等による被害をカバーする補償対策などが必要であり、農業政策・予算の抜本的転換、自給率向上を確実にめざす基本計画の見直しなど、国民合意の運動で進めていくことが求められます。

米政策の転換求める 農水省への要請に
全国からオンラインでぜひ参加を

 8月5日には、米価下落対策、水田活用の直接支払い交付金カットの中止、減反から増産への転換、ミニマム・アクセス米削減・中止など、米政策の転換を求めて農水省要請を行います。オンラインで全国から参加しましょう。


米屋さんと生産者をつなぐ交流会
中止のお知らせ

 2年連続で中止となった「米屋さんと生産者をつなぐ交流会」について、今年は開催の方向で準備してきたところですが、新型コロナ感染拡大の状況から、中止を決定しました。産地情報等についてはあらためて集約し、発信します。
2022年7月
農民連ふるさとネットワーク

(新聞「農民」2022.8.1付)
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2022年8月

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