「農民」記事データベース20220725-1514-01

FFPJ(家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン)
第16回オンライン講座から

韓国の無償給食はなぜ実現できたのか?
(上)

慶熙大学フマニタスカレッジ講師
ソウル市麻浦区まちづくり運営委員
姜 乃榮(カン・ネヨン)さんが講演

関連/役員・専従者研修会の開催変更について


給食は民主主義の決定版

画像  家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)は7月15日、第16回オンライン講座「韓国の無償給食はなぜ実現できることになったのか?」を開き、韓国の姜乃榮(カン・ネヨン)さん(慶熙大学フマニタスカレッジ講師、ソウル市麻浦区まちづくり運営委員会委員など)が講演しました。姜さんの報告の要旨を2回にわたって紹介します。

 親環境無償給食

 韓国の給食は小さな民主主義の決定版と位置づけられ、なかでも学校給食は、親環境無償給食と言われています。

 これは、健康と環境、生態的な関係を最優先に考慮し、すべての食材について、生産・加工・流通過程が生態的・持続可能で安全になる給食を実現し、必要とする経費すべてを国または自治体が負担することです。

 無償給食は人権です。その根拠は、韓国の憲法31条3項に「義務教育は無償にする」と書かれており、無償給食は義務教育の一部と位置づけられ、普遍給食または国民給食と言い換えることもできます。

 その具体的な中身は、自治体の条例でも、放射線ゼロ、非遺伝子組み換え、ローカルフード(在来種農産物使用)が規定され、ソウル市教育庁は5無給食(残留農薬・放射能・抗生剤・化学合成添加物・遺伝子組み換えのない給食)を定めています。

 韓国の学校給食運動の歴史

 韓国では、2002年に「学校給食全国ネットワーク」が結成されました。そのきっかけは、学校の民主化運動と農民運動が出会い、学校給食運動が本格化したことでした。学校の民主化運動は、1998年に学校運営委員会を正常化するための活動を通じて、2002年4月27日に「学校給食全国ネットワーク準備委員会」結成に結実しました。

 農民運動の分野では、「私たちの米を守る農業回生連帯100人100日リレー」というキャンペーンとして、学校給食に地場産農産物使用の制度化を求める運動を行いました。

 2002年7月19日に当時の民主労働党が主催して学校給食法を改正するための討論会が実施され、農協調査部、給食ネット準備委員会、全国教職員労働組合、真の教育学父母会、農業回生連帯などが参加し、全国レベルのネットワークが発足したのです。

 地域でのワークショップも盛んに行われ、給食運動参加要請の文書には、「子どもたちに健康を!われら農業に希望を!!」というスローガンが掲げられました。

 これは、子どもたちの幸福権、健康追求権などの基本権はもちろん、学習権、自治権の保障を満たし、学校給食改善の実現を通じて子どもたちの人間基本教育を学校主体で主導的に行い、社会的合意を実現しようとするものです。

 当時、社会にまん延している競争学習中心の学閥社会の打破、非民主的学校行政と腐敗、グローバル化一辺倒の経済及び輸入自由化推進の国家的課題を解決するために、最も容易で望ましい教育参加・実践として「学校給食改善国民運動」が行われ、親環境無償給食法改正と条例制定運動が開始されました。

 親環境給食運動は運動自体が持っている意義だけでなく、学生の健康はもちろん、自然環境の改善や食料需給の安定と国民の高い生活の質にも寄与できる、全社会に発展的な動機を提供する意味のある進歩的な運動でした。

 こうした運動が学校給食の質の改善要求、原則と哲学を持った学生を中心とする教育として学校給食、親環境給食の国家支援へとつながりました。

 韓国のフードプラン

 韓国では、国単位、地方単位でフードプランが策定されています。その背景の一つは、輸入農産物・食品の急増に伴う国民の不安と食料安全保障への懸念、肥満などの食生活関連の疾患の増加など、さまざまな食べ物の問題があったことです。

 第2に、二極化などで食生活がぜい弱な階層の増加などにより、基本的人権として食べ物への保障の強化が必要になったこと。第3に、食生活の西洋化などによる国産農産物の消費の低下により、農業の持続可能性への懸念が増大したことです。

 フードプランの歩みは、2009年に国内の専門家と農業界で食べ物と関連した総合戦略策定の要求があり、15年には、韓国政府が都市食料政策ミラノ協定(注)を51カ国117都市と締結し、6大戦略と37の課題を提示しました。

 ソウル市では、都農共生の公共給食が実施されています(表)。これは、都市の子どもたちが農村に出会い、相生(共生)を学び、生命を尊重する食卓を実現することをめざすものです。

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(次号につづく)

 (注)都市食料政策ミラノ協定とは、2015年5〜10月にイタリア・ミラノで国際万国博覧会が開催された際、並行して持続可能な都市食料政策を検討する行事が実施され、この取り組みを継続し、世界に発信するために各国の市長により署名された宣言文書。


 役員・専従者研修会の開催変更について
 7月11日付で「農民連役員・専従者研修会」の開催をお知らせしましたが、コロナ感染が拡大している中、対面での開催は困難と判断し、「農民連夏のオンライン研修会」と名称を変更し、1日のみのオンラインでの研修会を開催いたします。
 来年の農民連第25回定期大会に向けて、地域に影響力をもち、根を張った農民連を建設するための学習の場として、役員・専従者に限定することなく、多数の会員の皆さんの参加をよびかけます。

●日程 8月8日(月)午後1時半〜4時半
●参加費 1500円(資料代)
●内容
 記念講演‥石川康宏・神戸女学院大学名誉教授
  「改憲、軍拡が日本をどこへ導き、国民生活に何をもたらすのか」(仮題)
 長谷川敏郎・農民連会長
  「食料・農業危機を乗り越えるたたかいと、農民連の建設」
 行動提起
●申し込み締め切り 7月29日(金) 
  申し込みはできるだけメールでお願いします。

(新聞「農民」2022.7.25付)
ライン

2022年7月

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