「農民」記事データベース20220711-1512-09

ひょう被害深刻に
救済へ運動広がる


福島県北部 果樹地帯

共済・収入保険の補助拡充を

摘果直後の桃・梨・リンゴ直撃

 6月3日、福島市北部から北側のエリアに降ひょうがありました。福島市や桑折町、国見町など果樹地帯への降ひょうで、作物への被害が広がっています。福島県北農民連会長の阿部哲也さん(福島市=梨を中心にリンゴ・桃も栽培)は「一昨年の病害虫、昨年の霜害、今年のひょう害と30年農家をやって初めての災害が3年続いています」と話します。

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被害状況を説明する阿部さん(右)

 3日の11時30分頃に、「西の方からまるで竜巻でも来るかのような真っ黒な雲がやってきた」と阿部さん。雷雨が来るのかと家に避難した後に、ばらばらと音を立てて大きさ5ミリ程度のひょうが3〜4分間、横殴りの風とともに降り続けました。

 2キロほど離れた場所では降っていないなど、被害のエリアは限定的で農家によって被害の規模は大分異なります。ちょうど摘果の終わる時期ですが、順調に終わっている農家ほど、ひょう被害のダメージが大きく、風とともに吹き付けたので、樹体の裏の果実は、被害が少なくなっています。

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果実の被害を確認中

 果実への被害はありますが、どれくらい収穫に影響があるのかは、いまの段階でははっきりしません。「農協の営農指導員からは、『果肉にまで傷が達したものは廃棄するが、傷が浅いものは残しておくように』と指導がされています。小さな傷は成長とともに目立たなくなることもあるそうです」と話します。傷のある果実の販路確保も必要です。

病害虫霜、ひょう… 3年連続の自然災害
共済・保険の加入率は40%弱

 厳しい被害補償

 被害の補償も厳しいものがあります。「青色申告に移行して収入保険への切りかえが始まっていますが、果樹共済だけが頼りという農家が多いです。しかし、福島県では両方合わせても40%弱の加入率でしかありません」と阿部さんは話します。

 「共済は掛け金が高く、報告に求められる書類も多くなります。また、畑の一部だけの加入が認められないので、私も収入保険に切り替えました。福島市は掛け金のうち掛け捨て分の1割を補助していますが、共済金や収入保険の掛け金への補助をもっと手厚くすることが必要です」

 これから台風シーズンを迎えます。「昨年の霜害に比べ、果実が残っただけ状況は良いですが、ひょう害は防ぎようがありません。例年にない災害が3年続き、今年の台風も心配です。共済・収入保険への補助のほかに、農業者用の給付金制度の創設などが営農継続に必要です」と話していました。


埼玉農民連

ハウス被覆材など
資材の高騰・不足に強い不安

支援強化求め、県に申し入れ

 埼玉農民連は6月20日、6月上旬に2日連続した降ひょうで被災した農家への支援を求めて、埼玉県へ要請しました。

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要請書を手渡す(左2人目から)立石会長、関根事務局長、村岡正嗣県議

 埼玉農民連は、(1)激甚災害法の適応、(2)農産物や施設等の被害への補償、(3)2014年の大雪被害並みの支援、(4)収入保険に白色申告者の加入を認めること、を求めました。

 立石昌義会長は、「大野知事は被害のあった翌日に現地調査に入るなど素早い対応で、県独自の支援策も発表された」と評価する一方、「支援策には農産物や農業施設への直接支援がない。資材や肥料などの値上がりもあり、農家は非常に不安に思っている。実際に廃業を考えている農家もいる。2014年の大雪災害並みの支援を」と訴えました。

 対応した農林部長は、「大野知事からは“今回のひょう害で1人の離農者も出さないように”と言われている。被害の規模が大きく、県だけでは対応しきれない部分もあるので、国にも働きかけていく」と話しました。

 被災農家はビニールの張り替えなどを業者に依頼していますが、業者も限られるため、張り替え時期が決まっていない人が大半です。秋冬の播(は)種、定植は7月中旬から始まり、多くの生産者が苗も発注済みです。

 また、代替作物の苗も地域のホームセンターでは品切れの状態です。

 埼玉農民連では関東ブロックの各県連とも協力し、引き続き農作物、農業施設への直接支援を求めて、関東農政局への申し入れを行う予定です。

(埼玉農民連 関根耕太郎)


北海道・小清水町

ひょう・豪雨
タマネギ、ビートに被害

茎葉損傷、土砂流入など370ヘクタール

 北海道オホーツク地方の広い範囲で6月19日に、降ひょうや豪雨で大きな農作物被害が発生しました。

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被害を受けたビート畑

 最大2センチの大きさの降ひょうに見舞われた小清水町。タマネギやビートなどの畑約1000ヘクタールで茎葉の損傷や土砂の流入が発生し、被害の大きい畑は370ヘクタールに及びます。

 昨年9月に大規模な降ひょうがあり、今年5月上旬には、風害があり、ビートの植え替え、補植をしたばかりで、組合員は「風害の次は、ひょう害でガッカリだー」と大きく肩を落とす一方、「農薬代が増えるけどガンバルよ」と決意もしています。

 農業資材の高騰に、国の対策と天の恵みに、期待しています。

(北海道・小清水農民組合 工藤孝一)

(新聞「農民」2022.7.11付)
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2022年7月

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