日本国憲法のもつ意義と私たちの活動
弁護士・全国革新懇代表世話人 杉井静子
改憲勢力を減退させ、憲法を守る野党の躍進を
ロシアのウクライナ侵略は、明らかに国連憲章違反だし、民間人の虐殺を含めて戦争犯罪です。
全世界で国連憲章違反の一致点でロシアを包囲し戦争をやめさせるための大運動を続ける必要があります。
徹底した非武装平和主義に立つ
ただ、戦争は始まったら止めるのが難しいことも事実です。だから、戦争を起こさないように努力する、それが一番大事です。「軍事力(対抗力)」を強めると、それに輪をかけた「軍事力(対抗力)」が立ちはだかります。
わが日本国憲法は、過去の侵略戦争を反省し再び戦争を起こさないように徹底した非武装平和主義に立っています。9条を素直に読めば、自衛のための軍備も、集団的自衛権も認めていません(その後の経過の中で自衛隊が発足しますが、あくまでも専守防衛です)。
前文に、「諸国民の公正と信義に信頼し全世界の国民に平和のうちに生存する権利があることを確認する」との文言があります。
憲法9条は24条とセット
そこには軍事力による力の支配を排し、対話と外交による紛争解決を目指していることが明らかです。また、9条は24条とセットです。憲法が差別を禁止する14条のほかにわざわざ24条を設けた意義は戦前の家制度の下で家族間でも力の支配と差別が公認され人権が無視された歴史があります。そんな銃後を支える家族が絶対的天皇制と軍国主義を支えていたのです。
24条には個人の尊厳と両性の平等の上に立った民主的家族が民主国家の基礎であるとの理念がこめられています。ジェンダー平等は平和と一体のものです。
それに対し、「家族の絆」を強調し「自助・共助」を唱え「公助」をないがしろにする保守派の家族観は憲法に反するものです。
だから改憲派は9条と共に24条を目の敵にした改憲を目論んでいるし夫婦別姓にも反対します。
私たちは9条、24条はもちろん、25条の生存権や各種の自由権を保障する憲法を守り生かす運動を強める必要があります。
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国会前で声をあげる集会参加者=6月8日 |
「自衛隊明記」をねらう岸田首相
参議院選挙が公示されました。党首討論で岸田首相は改めて「自衛隊明記」を含む改憲4項目について「極めて現実的で緊急を要する」と主張し、改憲発議に必要な3分の2の勢力の結集を呼びかけました。軍事費についてはすでにGDP(国内総生産)の2%にするという倍増方針を示しています。衆議院では改憲勢力がすでに3分の2を超えていますので、参院選の結果いかんで改憲が強行される危険性があり、憲法は最大の危機を迎えます。
さらに国民を苦しめているのが“物価高”です。食料自給率が低い上にウクライナ危機で原材料費、飼料、資材等の値上がりが暮らしを直撃しています。平和と暮らしを守るためにも改憲勢力を減退させ、憲法を守る立場の野党を躍進させなければなりません。
食料自給率向上、食料大増産を訴え「平和でなければ農業はできない」と運動をしてこられた農民連のみなさんの活動に敬意を表し、さらなる運動の広がりを期待します。ご一緒に「戦争につながるあらゆる策動に反対し、憲法が輝く民主的で尊厳のある社会」を目指して頑張りましょう。
(新聞「農民」2022.7.4付)
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