食料増産へ生産者守れ
農民連が農水省に要請
畜産
飼料高騰は危機的事態
抜本的支援強化を早急に
「今回の飼料高騰は未曽有の危機的事態だ。畜産農家の現場の声に耳を傾け、日本の畜産を守る手だてを早急にとってほしい」――農民連と畜全協(畜産農民全国協議会)は6月15日、農水省に要請を行いました。
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要請書を手渡す笹渡副会長(右) |
要請は、(1)高騰する配合飼料対策、(2)畜産農家の経営赤字を補てんする牛・豚マルキン制度の発動と拡充、(3)生産費の増加を乳価や畜産物価格へ転嫁する対策、(4)畜産農家への金融支援、(5)国産飼料への支援強化と、水田活用交付金の見直しの中止、などの8項目。
群馬農民連副会長の上原正さんは、「年間3万頭の豚を出荷しているが、補てんされてもエサ代が1億1千万円も増えた。このまま高騰が続けば補てん基金も枯渇してしまう。国の拠出を増やしてほしい」と要望。また「この期に及んで豚マルキンが発動されていないのは、発動基準の算定に問題があるからではないか」と改善を求めました。
しかし農水省は、「値上がり分全額を補てんしていたら、制度が破たんする。マルキンなど経営対策は充実している」と強弁しました。
千葉県の酪農家、中村種良さんは「酪農家の経営が大変なのに過剰在庫解消が優先されている。自給率37%なのに、わずかな過剰で生産抑制されることは大問題。生産費も賄えない状況では、酪農家は離農してしまう」と、実態を訴えました。
これに農水省は、「収入保険など生産者を支える制度はいろいろ用意してきた。収入保険には入っているのか。自分の経営ではどんな制度を使えるのかをよく考え、その上で乳価交渉をがんばってもらいたい」と、暴言ともいえる自己責任論むきだしの回答をしました。
すかさずオンラインの参加者が「この経費高騰のなかで懸命に続けている畜産農家を目の前にして、よくそんなことが言えるものだ」と強く抗議。
福島県農民連の佐々木健洋事務局長は、国が飼料自給率向上を目標に掲げながら、水田活用交付金の見直しで永年牧草への支援を3分の1以下に引き下げることを批判。「見直しを中止すべきだ」と訴えました。
農民連の笹渡義夫副会長は、「この危機的な状況は従来の制度だけではカバーできない。生産者支援がなければ、食料自給率向上など実現しない」と重ねて要請しました。
ひょう害
収穫皆無の農家も続出
営農あきらめぬよう支援を
5月末から6月上旬にかけて関東や東北などで、ゴルフボール大のひょうが降り、農作物やハウスのビニール・ガラスなど大きな被害が出ました。埼玉県は被害額38億4867万円と公表しましたが、県特別災害に指定される被害額に到達したもので、さらに被害額は増える見込みです。
農民連は6月15日、緊急に農水省・内閣府に要請を行いました(写真)。福島、群馬、埼玉、長野の各県代表が被害の実態を訴え、農業共済や、収入保険に加入していない農家も含め、被災したすべての農家への支援を求めました。
農水省は「被害の実態把握がまだできていない。把握でき次第対策を検討する」と回答。各県の農業共済組合に対し、14日に迅速な被害把握と早期支払いを求める通知を出したことを紹介しました。
埼玉農民連の立石正義会長と関根耕太郎事務局長は被害を受けた麦の穂を持参。「ある農家は18ヘクタールの麦が全滅し1800万円の被害。野菜も1000万円の被害と1軒で約3000万円になる。しかし、共済も収入保険も未加入で何も補償がない。こうした農家がたくさんいる。すでに離農を決断した農家も出ている。次期作に向けて、とにかく現金が必要で手厚い支援が必要だ」と施設整備補助が割増しになった2014年の大雪被害時並みの支援を訴えました。
福島県北農民連の服部崇事務局長は果樹の被害写真を持参。農水省に示しながら、「一昨年の病虫害、昨年の霜害、今年のひょう害と3年連続で被害を受けている。昨年の被害で仲間の農家は、収入保険に加入しようと青色申告に挑戦しているが、青色申告にしても1年間は加入できない。これでは農家は救われない。白色申告者も加入させてほしい」と訴えました。
最後に笹渡義夫副会長が「コロナ・ウクライナ危機で価格下落・資材高騰に苦しむ農家に『何十年に一度』の気象災害が毎年のように襲い掛かっている。農水省は現実を直視し、農家が営農をあきらめないための特別の対策を講じよ」と強く求めました。
(新聞「農民」2022.6.27付)
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