明治用水の大規模漏水
愛知
国が責任をもって生産者に補償を!
5月17日、愛知県豊田市の明治用水頭首工で大規模な漏水が発生し、豊田市、安城市などの8市1町、5400ヘクタールの農地に水を供給する農業用水が止まりました。水田では早生のコシヒカリの田植えが終わり、晩生(おくて)のあいちのかおりの田植えの準備をしているところで、農作業がすべて止まってしまいました。
仮設ポンプの設置で19日には工業用の給水が始まりましたが、農業用は停止のままでした。現在は162台のポンプで毎秒約8〜9トンの取水量が確保され、25日から農業用の試験通水、30日からは受益地域を4ブロックに分け1日通水、3日断水という「ブロック割通水」が始まりました。
愛知農民連では23日、東海農政局に(1)一刻も早い通水再開(2)機敏な情報提供(3)被害に応じた補償を求める要請書を提出しました。
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要請書を手渡す笹渡副会長(手前)ら |
さらに、27日には農民連本部とともに農水省への要請を行いました。
愛知・明治用水
少しでも水が届けば
がんばって作物作る
交渉では、農民連本部から笹渡義夫副会長らが参加し、日本共産党の武田良介参院議員、本村伸子衆院議員、井上哲士参院議員が同席しました。
農水省の担当者から現状の説明があり、「工業用が優先されたのはなぜか」との問いに「愛知県企業局と土地改良区の調整の結果」と説明。オンラインで参加した、豊田市の稲作農家の野田美香子さんは「昨年から漏水が指摘されていたのに十分な対策がされてこなかったことが問題で、明らかな人災。現状では大幅な減収も予想されるが、農家は少しでも水が届けばがんばって作物を作る。影響が明らかになったときに補償してほしい」と訴えました。
大豆への転作は水稲共済対象外
28日に地元で開かれた説明会では、減収分は農業共済、収入保険の対象になるとの説明がありました。しかし、大豆に転作した場合には、水稲共済の対象にならなくなり、廃棄した苗の補償が受けられません。災害を対象にした、農業共済や収入保険による補償ではなく、規模の大小を問わず、すべての農家を対象に被害に応じた補償を、国が責任をもって行うことを強く要請しました。
すでに田植えが終わった水田では、水が枯れたことで雑草が増え、除草剤を再度使用する費用も発生します。育苗中の苗への給水も4日に3日は水源からタンクで水を運び、ポンプで給水する作業が必要です。今回の漏水で新たに資材、燃料、労賃の負担も生まれており、これも併せて補償が必要です。
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水が枯れた田んぼの様子 |
これらの要請に対して農水省は「今後検討する」との答弁にとどまりました。
本来、明治用水の受益水量は、農業用水が毎秒約41トン、工業用水が4トン、水道水が1トンです。8月には最低20トンが農業用に必要と言われ、現状では全く足りません。
愛知農民連では引き続き行政や、農政局への要請を行う予定です。
(愛知農民連事務局長 本多正一)
(新聞「農民」2022.6.20付)
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