「農民」記事データベース20220620-1509-01

埼玉 トウモロコシ、小麦、メロン…

収穫期の農作物を直撃

東北から関東に
甚大なひょう被害発生

 6月2日から3日にかけて、関東から東北の広い範囲で雹(ひょう)が降り、農産物やハウスなどの農業施設に甚大な被害が発生しています。
 福島や群馬、千葉などでは梨や梅、桃などの果樹に、埼玉、群馬などでは小麦や野菜などに大きな被害が出ています。埼玉農民連の立石昌義会長、関根耕太郎事務局長とともに、現地を取材しました。


離農させない!

こんな時こそ農民連の出番

運動起こし再建への支援をかちとろう

 無利子でも融資は支援にならず

 「いやー、がっかりですよ。参りました。ちょうど収穫適期だったんですよ」と、壊滅的な被害を受けたトウモロコシの畑に案内してくれたのは、深谷市の野菜農家の関根照雄さん。「これでも直後より立ち上がってきた」と言いますが、根元からなぎ倒され、葉も茎もズタズタに破れています。

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多少もち直した畑に立つ関根さん

 一見すると大丈夫そうな実もありますが、皮をむくと、ひょうが当たった粒は白くつぶれてしまっています。被害のない部分の粒は黄金色に輝いていて、「ひょう害さえなければ立派なトウモロコシが出荷できたのに…」という関根照雄さんの無念が伝わってきます。

 全部で1・6ヘクタールあるトウモロコシ畑は、どれもひょう害を受け、「普通なら反収27〜28万円のところ、10万円にも達しないのではないか」と関根照雄さん。鶏ふんを活用して化成肥料を使っていないため、「資材高騰の影響は比較的少ない」とは言いますが、「10年前の台風被害の時には化成肥料にしか補助が出ず、結局何の支援もなかった。支援も融資ではたとえ無利子でも返せない。多くの農家がやめてしまうのではないか」と、支援の大切さを訴えました。

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降ひょう直後のトウモロコシ畑。1メートルほどの草丈がなぎ倒された(関根さん提供)

 大規模な農家ほど被害も大きい

 隣の本庄市でもゴルフボールより大きなひょうが降りました。イチゴとメロンを栽培する小賀野勝男さんの農場では、大型ハウス2棟、単棟建てのパイプハウス13棟がすべて被災。ビニールなどの被覆材は穴が開き、突風で破れました。

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ひょうに直撃された実を見せる小賀野さん

 毎年250から300万円ほどの売り上げがあったアムスメロンも全量、出荷を断念する被害です。「あと2週間で出荷の予定だったんですよ。これからが甘みが乗ってくる大事な時期で、被害は致命的でした」と肩を落とす小賀野さん。ハウスは農業共済に入っていましたが、作物は掛け金が高く加入していませんでした。

 資材の価格高騰と不足も深刻です。ハウスの張り替えには高騰前でも400から500万円がかかり、共済が出ても張り替え時の値上がり分は生産者の負担となります。さらに9月半ばには大型ハウスでイチゴの苗の定植が始まりますが、資材も業者も少なく、それまでに張り替えが間に合うかは危うい状況です。

 「国は大規模化しろと言いますが、大きくなればなるほど被害も大きい。こういう被災時には支援なしでは、雇用者もいるのに、規模拡大した専業農家はやっていけません」と小賀野さんは話してくれました。


野菜は共済未加入が大多数

ひょう被害
再建へ抜本的支援強化を
埼玉

 日本でも有数の二毛作地帯の埼玉県北部では、ちょうど収穫目前だった小麦も軒並み壊滅的被害を受けています。

 家族4人で麦類を18ヘクタール、水田15ヘクタール、ハウスでキュウリも栽培する本庄市の坂爪裕さんの農場では、小麦11ヘクタールが収穫皆無の被害となりました。「今年は本当に順調で、最高にいい出来だったのに、ひょうで穂がすべて落ちてしまった」と話す坂爪さん。1〜2カ月の収穫期間を残すキュウリのハウスも穴が開き、「ハウスの中で雨カッパを着てもずぶ濡れになったのは初めて。収穫皆無ではないが、品質低下・減収はさけられません。8月の植え替えまでに張り替えが間に合うかどうか」と不安をにじませました。

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穴だらけになった大型ハウスの屋根

 埼玉農民連では降ひょう翌日にも現地調査に入るなど、連日、県連3役を中心に会員宅を訪問し、被害調査と激励をしています。また県議会議員を通じて、県に万全の対策を求める要請書を提出。

 県北部では、小麦だけで1800万円、ほかにも露地野菜が全滅した大規模農家や、牛舎の屋根が大破した酪農家、春日部市などの東部では果樹など、被害の報告が相次いでいます。

 関根事務局長は、「今は多くの作物が出荷や育成期間の真っ最中で、今回のひょう害はハウスだけでなく中の作物や、露地作物が甚大な被害を受けている。しかも野菜や果樹では共済に入っている生産者はごくわずか。資材も肥料も2倍近くに高騰しているなかでの被害で、さらなる支援がどうしても必要だ。こんな時こそ農民連で運動を起こして、気落ちした多くの農家を励ましていきたい」と、話しています。

(新聞「農民」2022.6.20付)
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2022年6月

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