オンライン併用で100人以上が参加
持続可能な農漁業の再生を
全国食健連が学習交流会
日本の食料・地域を考える
国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)は5月28日、オンラインで全国を結び、「食料危機打開へ・持続可能な農漁業の再生で日本の食料と地域・社会の明日を考える」をテーマに学習交流会を行いました。全国から100人以上が参加しました。
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各分野から示唆に富んだ実践の報告がありました |
食料増産支援で国内自給高める
全国食健連代表幹事の長谷川敏郎・農民連会長が開会あいさつ。コロナ禍とロシアによるウクライナ侵略が世界の食料危機と飢餓を広げているもとで、食料増産に思い切った支援を求める世論を大きくする食健連の役割を強調。「参議院選挙でも、食料問題を一大争点に押し上げることが重要」だと述べました。
「国内自給を高めるうえでも、従来の工業的農業からアグロエコロジーへ、大規模化・法人化から家族農業へ農政を大きく転換する必要がある」と指摘し、「そのためにも、学校給食など公共調達から流れを変えることが求められる。その理論と実践を学習交流しよう」と呼びかけました。
持続可能社会へ 公共調達拡充を
愛知学院大学教授の関根佳恵さん(家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン常務理事)が「家族農業と地域を元気にし、持続可能な社会をつくる―各国の事例の紹介と日本農政の課題―」と題して基調講演。
貧困・格差、栄養不良、地域農業の衰退など食と農をめぐる危機が広がるなかで、公共調達が世界で持続可能な社会に移行する梃子(てこ)の役割を果たしていることを強調。「工業化された農と食のシステムからの脱却の道を開き、栄養・健康、地域経済などへの波及効果が大きい」と述べました。
公共調達の各国の取り組みをブラジル、アメリカ、韓国、フランスを例に紹介。とくにフランスでは、有機食材率が5年間で3倍に増え、農業生産者の所得向上、安全性・環境への配慮、ネオニコチノイド系農薬の禁止、動物福祉の向上などに取り組み、安全で、持続可能な食料を全ての人に届けることを目標にしていると紹介しました。
地域農漁業再生 国民運動の展開
各分野からは、「協同組合運動と地域農業再生の取り組み」について、いわて平泉農協の佐藤一則専務理事が報告。大幅な人口減や高齢化の進展などの実態を述べ、地域の農業を再生させるためにも、「農業者戸別所得補償制度」の復活・拡充、農業を志す次世代の若者へのきめ細やかな指導・援助体制が必要だと指摘し、食料自給率引き上げを柱にした国民的運動を呼びかけました。
千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合の鈴木正男組合長と今井和子さんが「持続可能な漁業の取り組み」のテーマで報告。日本の漁業経営体の94%を占める沿岸漁民が、国土や海の資源を管理し、地域経済と日本の水産業を守る役割を果たしていることを強調。「国連小規模漁業年の今年、沿岸漁民の役割を再認識することが日本漁業を持続可能なものにする最大のポイントだ」と語りました。
食の安全を学び有機米給食実現
長野県・松川村農民組合組合長の宮田兼任さんは、仲間とともに学校給食に地元の有機米を導入する取り組みを発言。松川村と池田町で行政、議会を巻き込んで有機農産物を学校給食で扱うための懇談会を開催するなど、「有機農産物を学校給食に、とりあえず米を」と動いた保護者、議員、若い地域おこし協力隊員、関心がある住民らの運動を紹介。宮田組合長は、池田町の矢口一成さんとともに、有機米の取り組みをさらに広げる決意を述べました。
農業問題を学ぶ消費者の取り組みについて、全大阪消費者団体連絡会の米田覚事務局長が報告。食の安全と日本農業を守り食料主権を確立する運動、食品表示制度の改正、輸入食品の安全対策など食の安全確保を求める運動を紹介し、「引き続き、農業問題・食品問題の学習を広げて、深めるよう取り組みたい」と述べました。
まとめと閉会あいさつで全国食健連の衛藤浩司事務局長は、「国産食料の増産、食料自給率向上、家族農業支援強化を求める請願署名」に取り組むことを提起しました。
(新聞「農民」2022.6.13付)
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