農水省
「国産小麦の需要はない」
と言うが…
戦後、輸入自由化で
日本人の味覚と胃袋変える戦略
国内では国産小麦振興の努力
農民連は5月13日、国会内で「原油価格・物価高騰等総合緊急対策の事業概要」について、農水省から説明を受けました。
政府売渡価格値上げ 輸入小麦への不安
資料に沿った説明の後、各地から具体的な質問がありましたが、あまり目新しい回答はありませんでした。
そんななか、今年4月に小麦の政府売渡価格を17%値上げしたことや、輸入小麦の安全性への不安から、「国産小麦の要求が高まっているが振興策は?」と質問。農水省は、国産小麦への切り替えや製造ラインの変更など業者向けの対策と、集団化や機械の導入への補助など従来の政策を繰り返し、「実需者が国産を好まない。国産小麦を増やしても余っている」と述べ、さらに「国産は良いよねと言える品質のものを生産してほしい」と答えました。
農産物輸入自由化で178万トンから20万トンへ
戦後アメリカは、食料援助として余剰小麦を日本に輸出し、日本人の味覚と胃袋を変える戦略をとってきました。
日本は、日米安保条約締結後の1961年、多くの農産物の輸入自由化を受け入れます。
その結果、小麦の生産量は、61年の178万トンから、73年には20万トンまで激減しました。
しかしその年、オイルショックやアメリカの大豆禁輸などから、食料自給率の向上を求める世論が高まり、さらに80年代には、輸入農産物の安全性への不安から、「国産小麦のパン」を求める世論が広がり、パン用小麦の品種改良も進みます。
パン用小麦の生産者も増え、国産小麦を積極的に製粉する「江別製粉」や、パン屋さんなど国産小麦を中心とした提携も広がります。
増産と消費拡大で食料自給率向上へ
小麦の主要産地の北海道帯広市では、中小企業家同友会や商工会議所、民主商工会などが求めていた中小企業振興基本条例が、2007年に制定され、様々な取り組みが始まります。その一つ、十勝産小麦の「麦チェン」プロジェクトは、地元に製粉工場を立ち上げ、パン屋さんは共同で製パン技術の研究開発など、十勝産小麦の消費拡大に取り組んでいます。
いまこそ政府は、全国に広がるこうした取り組みを奨励し、国産農産物の増産と消費拡大を進め、食料自給率向上への援助を強めるべきです。
(S)
(新聞「農民」2022.6.6付)
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