国連が新たに警告
3.2億人が「急性飢餓」
日本を襲う「値上げ」ラッシュ
「やったふり」ではなく
国民生活を守れ!
ウクライナ危機のもとで深刻化する食料危機に対する国連機関の警告が相次いでいますが、岸田政権は危機感も有効な対策も持ち合わせていません。
3億2300万人が「急性飢餓」
FAO(国連食糧農業機関)は5月6日、4月の食料価格指数が158・5を記録したと発表しました。特徴は、▽ロシアのウクライナ侵攻直後の3月に続いて過去最高になったこと、▽21世紀に入って食料価格が3倍にはね上がっていることです(1)。
世界銀行は食料価格高騰が24年末まで続き「今後、価格はさらに上昇し、激しく変動することも予測される」と警告しました(4月26日)。
さらに「世界食糧計画」(WFP)は、今年初めの時点で2億7600万人が、生命が緊急の危険にさらされている「急性飢餓」状態にあるとし、ウクライナ危機により3億2300万人に増えると警鐘を鳴らしています。
プーチンが仕掛けた「食料戦争」
5月13日には、世界第2位の小麦生産国であり、ウクライナ・ロシアの穴を埋めると期待されていたインドが小麦の輸出停止を発表。小麦の国際相場は、ウクライナ侵攻直後に次ぐ水準に跳ね上がりました。インドの異常熱波、アメリカの大干ばつは警戒段階に入っています。
ロシアの港封鎖・機雷敷設によって「輸出できないウクライナ産小麦穀物は2500万トン、20年の輸出量の半分に上っている。とんでもない異常事態だ」(FAO)――これはウクライナ締め上げというだけでなく、「プーチンが世界に仕掛けた『食料戦争』」(ドイツのベーアボック外相)です。
不安定で投機的な食料市場
問題なのは、食料価格高騰が短期間で終わるはずがないことです。アメリカ農務省は5月12日、ウクライナの小麦生産量は2150万トンと前年から35%減るという予測を公表しました。
小麦の世界輸出量は世界生産量の25%、米は同じく10%。もともと穀物は生産の大部分を国内で消費する底の浅い市場です。
世界の小麦輸出の90%は7カ国、トウモロコシ輸出の87%は4カ国で占められており、世界の穀物貿易の70〜90%は、4社の巨大穀物商社がコントロールしています。
今日の高騰は、こういう不安定で投機的な市場をコロナ禍やウクライナ侵攻ショックが襲った結果です。
さらに、「アメリカのトウモロコシ消費のうち、エタノール向けは内需の43%を占める。輸出量の2倍強の規模だ」(日経、4月25日)という事情が追い打ちをかけています。
トウモロコシは発展途上国の主食でもあります。約3・2億人が「急性飢餓」に直面しているのを尻目に、食料を燃料に使うなどというやり方が許されるはずはありません。
ウクライナ侵攻に関するG7農相会議(3月11日)は「人為的な価格高騰を許さず、いかなる投機的行為にも立ち向かう」という共同声明を発表しましたが、この約束を今こそ厳正に実行すべきです。
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東京都内のスーパーのラーメン売り場 |
庶民を襲う「値上げ」ラッシュ
4月の消費者物価上昇率(前年比)は生鮮食品16・3%、電気代25・8%、都市ガス27・6%と、庶民ほど打撃が大きい食品や光熱費で特に深刻です。
信用調査会社「帝国データバンク」の調査によると、食品大手105社の飲食品値上げは、8385品目超に及び、値上げ幅は9〜15%(2)。値上がりしていない食品はないといってもいいぐらいの値上げラッシュです。
しかも、これは「序の口」です。3月以降の急激な円安は「今年後半から来年にかけて消費者物価を押し上げる可能性がある」(伊藤忠総研)――。
政府は輸入小麦の売渡価格を4月から17%引き上げました。これは急上昇した国際小麦相場も、3月以降の円安も反映していないもの。岸田首相は「9月までは据え置く」と苦しまぎれの弁明をしていますが、10月に大幅引き上げは必至です。
政府の「総合緊急対策」は全く不十分で役にたちません。私たちは要求します。
(1)消費税は5%に緊急引き下げを
生活必需品の高騰に対しては消費税引き下げこそ最も効果的です。世界では85の国が引き下げを実施するか、予定しています。
(2)異常円安の是正を
異常円安はアベノミクスの結果です。「物価上昇は非常に良いこと」「円安は日本経済にプラス」(日本銀行・黒田総裁)などという「異次元の」国民生活破壊政策を転換すべきです。
(3)飼料・肥料・燃油の抜本的な高騰対策を
政府の無策にしびれを切らして、静岡・愛知・鳥取・福岡県は高騰対策に着手。「やったふり」ではなく、補正予算も含め急いで手だてを打つべきです。
(新聞「農民」2022.5.30付)
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