「農民」記事データベース20220516-1504-02

福島原発事故 生業訴訟
最終口頭弁論

二度と事故を起こさぬよう
国は責任を認めよ

関連/入廷前集会 命大切にする国に


原発事故が奪った人生を返して

 福島第一原発事故の被災者が国と東京電力の責任を問う集団訴訟のうち、4裁判が現在、最高裁判所でたたかわれています。4裁判ではすでに東電の上告は棄却され、東電の責任と賠償を認めた高裁判決が確定し、国の責任の審理が続いています。

 多くの福島県農民連会員が原告として参加している「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)の口頭弁論が4月25日に開かれ、統一行動が国会・最高裁周辺で行われました。

 国会内では模擬裁判が弁護団の熱演で開かれ、国と原告団の争点が説明されました。国は「原告の主張する津波予測は信頼できず、津波の予測は不可能で、国に責任はない」と主張。

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模擬裁判では国の無責任ぶりが明らかに

 原告団は「国の専門家機関が出した予測は十分信頼性がある」と指摘。「国民の命と健康を守るため、規制権限を行使する責任がある。経済性を優先し、対策を先送りした東電の姿勢を受け入れ、権限を全く行使しなかった国の責任は重大」と主張しました。

 口頭弁論では原告の深谷敬子さん(美容師=富岡町)が意見陳述し、「国はチェルノブイリ原発事故後も『日本の原発は安全』と言い、それを信じてきました。事故当日も、すぐに家に戻れると思い仕事着のまま、何も持たずに避難しましたが、まさか10カ所以上を転々と避難を続け、避難生活が11年以上にも及ぶとは考えもしませんでした」と陳述します。

 「事故が奪っていった人生そのものを返してほしい。できないのであれば、事故がどうして起き、だれの責任だったのかをはっきりさせてほしいのです。そうでなければ同じことがまた起こってしまいます」と裁判官に訴えました。

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最高裁に入廷する原告団と弁護団

 裁判後の記者会見で弁護団の馬奈木厳太郎事務局長は「今回の公判では国の責任の根拠となる部分を弁論しました。裁判官は発言した原告代理人に向き合い、集中して弁論を聞いていた印象です。6月には判決が出る見込みですが、必要な安全性の水準や規制のあり方について、どんな利益を第一義に考えるべきなのか、歴史的な判決が下されることは間違いないと確信しています」と述べました。

 報告集会では、行動に駆けつけた各地の訴訟団から激励のあいさつが行われました。


入廷前集会
命大切にする国に

 福島原発訴訟の支援のために全国から集まった参加者は最高裁での弁論の前に、最高裁正門前集会を開きました。

 弁護団共同代表の菊池紘弁護士は「地裁、高裁では、原発事故の責任は国にあることを認め、国と東電を批判し、断罪した。今回の裁判で、国の原発政策のあり方を根本的に改めさせなければならない」と訴えました。

 原告団の中島孝団長は、「国民の命を大切にしない国の姿勢を大本から変えなければならない」と呼びかけました。

 参加者は、弁論に参加する原告団・弁護団を先頭に、最高裁への入廷行進を実施しました。

(新聞「農民」2022.5.16付)
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2022年5月

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