「農民」記事データベース20220502-1503-01

肥料 飼料 資材
すべて高騰

関連/休刊のお知らせ


北海道 畑作地帯

5月以降の肥料供給ひっ迫

JA 必要量の確保に躍起
受注分を供給できない 商社

 北海道では使う肥料の量が多いことから、ホクレンが使用量を各農協から前年のうちに取りまとめ、業者に直接発注しています。

 昨年注文した今年分の肥料についてはホクレンが基金を活用し緊急対策を行い、値上げは避けられました、しかし5月以降の来期分についてはホクレンの会長が定例会見でも述べているように、値上げは不可避の状況です。

 JA小清水では来年分の肥料の注文書を1カ月ほど早めに各農家に配布しました。必要量を早く把握して、早めに確保する狙いです。一部商社は受注した肥料を供給できず、ホクレンがその分をカバーもしています。

 ハウスのビニールなどの資材も3割ほど値上がり。わが家でもポリカーボネート製の育苗用ハウスを20数年ぶりに張り替えましたが、約280平方メートルで420万円もしました。

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収穫に忙しいキャベツ農家(豊橋市)

 天候被害覚悟で直播きする人も

 中には、これ以上ハウスにお金はかけられないと、ビートを直播(ま)きで作付けする農家も出てきました。芽が出た後に風や霜にあたってしまえばダメになりますが、そうした賭けに出るほど負担が重くなっています。ビニールも今年8月の価格改定では、昨年の2倍になるのではと危惧しています。

 農業用機械も値上がりです。家畜のふん尿のスラリーのポンプなど、輸入が必要な機械は何カ月も納入が遅れています。

 小清水農民組合ではオイルや尿素水など必要な資材の注文を取りまとめて注文していますが、在庫がなくて困ったメーカーからも購入の相談が寄せられる事態になっています。

 その他細かい資材も値上がりし、値下がりしているものは一つもない状況です。

(北海道農民連副委員長 大沢稔)


愛知県東部

肥料高騰 キャベツ産地に打撃

県独自に支援策実施 飼料対策

 愛知県の東、豊橋市、田原市は11月から4月に出荷するキャベツの主産地で、肥料価格の高騰が経営を圧迫しています。

 キャベツの10アール当たりの経費は、種代、農薬代、肥料、燃料、資材などを合わせて最低でも10万円以上はかかります。そのうち、肥料代は3万円程度でしたが、昨年からの肥料の高騰で5万円程度にまで上昇しています。経費の中で肥料の占める割合は、キャベツが土地利用型の作目であるため、他の品目に比べても大きく経費全体を押し上げることになっています。

 愛知県の慣行栽培ではキャベツの窒素投入量は10アールあたり33キロですが、密植で栽培している畑では50キロ、渥美半島の先端部で砂や礫(れき)の多い畑では100キロ近く投入しています。

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収穫に忙しいキャベツ農家(豊橋市)

 豊橋市や田原市は畜産農家も多いので、多くの農家は堆肥の投入量を増やし、夏にソルゴーを播(ま)いて緑肥にするなど肥料投入量の削減に努めていますが、肥料だけでなく、段ボールや燃料も高騰しており、この秋さらに肥料が上がればどうなってしまうのかと心配しています。

 畜産の配合飼料は、直近で1トンあたり2万円も値上がりしています。安城市の養豚農家は、「これまでも何度か高騰があり、経営努力で乗り切ってきたが、今回は先がみえない。価格安定制度の基金も底をつくのでは」と心配しています。

 愛知県では、昨年10月から12月は4400円、今年の1月から3月は7900円の県独自の飼料の支援事業が実施され、4月以降も実施される見込みですが、先がみえない状況は同じです。

 田原市で非遺伝子組み換えの飼料を使っている養豚農家は1トンあたり2万5千円の値上がりで、円安も続く中、今回は一過性のものではないことを心配しています。

(愛知農民連事務局長 本多正一)


群馬県

飼料高騰が畜産経営を直撃

このままでは“令和版畜産危機”

 配合飼料価格の高騰が畜産経営を直撃し、このままでは“令和版畜産危機”に陥る事態に直面しています。

 世界的な穀物価格の高騰を受け、2020年10月以降の飼料価格の値上げは2万1450円にも及び、1トン4万円の飼料を買っていた農家は50%以上もの値上がりとなります。私が役員を務める下仁田ミート(繁殖豚1400頭、肥育豚1万6500頭)でも、飼料代はこの1年間で1億7000万円余の値上げとなりました。

 配合飼料価格の高騰時には、生産者と飼料メーカー、国が拠出する基金から補てんする制度がありますが、実質的に値上がり幅の50%程度しか補てんされません。母豚100頭の家族経営の場合だと、年間で約900トンの配合飼料が必要ですが、これでは補てんされても450万円ものコストアップとなってしまいます。

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離乳舎の子豚たち

 補てんの基金が枯渇する恐れも

 しかも今年に入ってからもさらに7250円以上も値上がりしており、このまま飼料価格高騰が続くと、基金の積立金が底をつき、補てんすらされなくなってしまいます。政府からの積み増しがどうしても必要です。

 また養豚農家の経営が赤字になった(販売価格が生産費を下回った)場合には、その差額の9割を交付する豚マルキン(豚肉経営安定交付金)制度があります。しかし豚マルキンも赤字分全額は補てんされず、赤字幅が小さくなるだけです。

 交付額計算の土台となる生産費も、飼料代や人件費が安く算定されるなど、きわめて発動しにくい制度となっており、これほどの飼料高騰に見舞われた昨年度も発動しませんでした。

 今残っている畜産農家は、2008年の飼料高騰による「平成の畜産危機」を乗り越えてきた人たちです。その時は1年で飼料価格は下がりましたが、今回は下がる見込みがありません。もう黙っていてはいられません。独自の飼料高騰対策を実施している県もあります。国や都道府県に対して、「国産の畜産物を守るためにも緊急対策を実施してほしい」との声を上げていきましょう。

(群馬農民連副会長 上原正)


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 次週号(5月9日付)は休刊にします。
新聞「農民」編集部

(新聞「農民」2022.5.2付)
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2022年5月

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