島根県の担い手づくり
島根県農林水産部農業経営課 課長
田中千之さんの講演から
認定農業者にこだわらず
「多様な担い手」を地域に
半農半Xが島根に定着した理由
半農半Xが定着した理由としては、農業地域振興部の産業体験事業という1年間のお試し移住も含めた重層的な支援があると思います。
また島根県はもともと養蚕やたたら製鉄が盛んでした。なだらかな中国山地の中で、小さな農地と養蚕や紙すき、炭焼きなどの合わせ技で生活してきました。こうした土壌も受け入れがスムーズだったポイントではないでしょうか。
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炭焼きの様子を見る、浜田市の西森隆さん。かつては県内で盛んに行われていました |
集落営農組織への支援策など
21年の集落営農組織数は663組織で、うち法人組織は260法人です。近年、設立数が鈍化傾向にあります。
集落営農については法人化の推進、水田園芸推進による多角化、集落営農や認定農業者が広域に束なって人材育成や機械の共同利用などを進める取り組みなどを支援しています。
企業参入は18年までの20年間で108社が参入していますが、参入5年後に黒字化しているのは約4割で残りは赤字か撤退になっています。現在は単なる企業参入ではない、地域の農業者を巻き込んで産地化を進めるような、地域をけん引する経営体の確保を進めています。
半農・半集落営農や
定年帰農者も掘り起こし
今後の展望は
認定新規就農者の確保など農業のみで十分な生計を立てられる担い手の育成という産業振興的視点と、「半農半X」など地域振興的視点の支援がされてきましたが、この中間領域に空白があるのではないかと考えています。
そこで県では「半農半X実践者」から認定農業者への誘導にこだわらず、「直ちに認定農業者を目指せるわけではないが、将来、地域農業の担い手となりうる人」を「地域が必要とする多様な担い手」と位置づけ、半農半集落営農や定年帰農者の掘り起こしを進めています。
21年から始めた具体策としては、県内1100カ所ある担い手不在の集落・地域で営農を始める人に対し、当面は兼業を認めて支援をしています。半農半集落営農の場合は県内の人でも支援を始めました。
またXの部分の選択は実践者の自由ですが、半農半農雇用が地域の労働力不足の解消に役立っている場合もありますので、労働力不足の農業法人等を、市町村が掘り起こして就農希望者に提案していく取り組みを進めています。
こうした取り組みは、国の特定地域づくり協同組合にもリンクしていると思います。
(おわり)
(新聞「農民」2022.4.25付)
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