「農民」記事データベース20220425-1502-02

アグロエコロジーの
実践を被災地から

家族農林漁業プラットフォーム
ふくしま浜通り


地域循環を目指す
堆肥と土のワークショップ

 一昨年スタートした家族農林漁業プラットフォームふくしま浜通りは、3年目を迎え、4月2日に「地域循環を目指す堆肥と土のワークショップ」を開催しました。

 福島大学食農学類の金子信博教授を講師に、その地域でとれる有機農産物を原料にした堆肥がテーマ。開催場所は、南相馬市小高区。東日本大震災の津波と原発事故による避難を強いられた地域で、今年から私たち家族で営農を再開し、68ヘクタールまで規模拡大する予定の地区です。

 化学肥料の供給不足の不安も募っている中で、今後、農業を続けていくために必要不可欠になることが予想されるため、規模拡大を図っている農家、有機農業を始めようとしている農家に小高区で農業に関わることを目指している移住者のみなさん等が参加して、にぎやかにモミガラ、ワラ、米ぬかと畑の土を一定割合で混合する作業や切り返し作業を体験しました。

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米ぬかと土を混合する堆肥づくり

 地域循環ということで、田んぼでとれる植物性の原料のみの堆肥です。何度か切り返して半年ほどで完成の予定です。秋に、実際に使ってみて、効果を検証していきます。


オーガニック委員会を設置

家族農林漁業プラットフォームふくしま浜通り

 同日午後には、小高区の山際にあるNPO法人野馬土が運営する交流施設グリーンヴェイルドに場所を移し、プラットフォーム・オーガニック委員会の設立総会を開催しました。総会では、記念講演として金子教授からもう一度堆肥の作り方やその堆肥の農作物への効果、地域循環や不耕起などの講義を受けました。

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堆肥づくりについて講演する金子教授

 また、福島県の浜通り有機担当の高津顕一さんから、浜通りの有機農業の現在の技術の到達点と除草対策やJAS有機認証制度、今後の拡大方法としてスマート農業との組み合わせなどの情報を提供していただきました。

 総会では、設立趣意書、申し合わせ事項が承認され、組織としてオーガニックの推進に取り組むことになりました。年間活動計画が話し合われ、先進農家への視察やスマート農業体験、田んぼの生き物調査、稲刈り後のモミガラ堆肥つくりワークショップなど参加者のやりたい企画が提案・承認されました。役員も選出され、南相馬市の豊田寿博さんを委員長に、20代〜40代のこれからの農業を担う皆さんが中心の構成になりました。

 農林水産省も「みどりの食料システム戦略」で2050年を目標として有機農業を現在の40倍に拡大する等の目標を掲げていますが、どうやって進めていくのかという展望は開けていません。世界的には人口爆発やコロナ禍、戦争や農地の減少などによって、今まで大手を振っていた自由貿易は行き詰まっています。

持続可能な農業へ、地域のベースに

 家族農林漁業プラットフォームふくしま浜通りオーガニック委員会は、東日本大震災や原発事故の被災地であるからこそ、様々な研修やワークショップ、各参加者の実践や情報交換を濃く着実に進め、この地域での持続可能な農業を確立し、学校給食も含め安全で安定したおいしい農産物を消費者と一緒に作り、供給を続けていくためのベースづくりを進めていきたいと思います。
(福島・浜通り農民連事務局長 三浦広志)

(新聞「農民」2022.4.25付)
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2022年4月

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