全国沿岸漁民連がフォーラム
最高裁は小規模漁民の
生活と経営守る判断を
クロマグロの漁獲規制めぐり
北海道の沿岸漁民が司法に訴え
日本人の食卓に欠かせないクロマグロ。しかし近年は漁獲量が激減し、2015年からは漁獲割り当て制度が実施されています。
一方、今年は国連が定めた「国際小規模漁業年」です。SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて、国連は世界の漁業経営体の9割を占める小規模漁民の生活と権利を守る政策を各国に呼びかけており、漁獲規制にあたっても小規模優先とすることが世界的な潮流となっています。
しかし日本のクロマグロ漁ではこうした国際的な動向とは全く逆の規制が行われています。企業・資本漁業の漁獲枠を優先し、小規模・沿岸漁民にはマグロを捕らせない規制制度となっているのです。
クロマグロの代表的な漁法 |
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◎定置網漁のメリット
一度に大量に水揚げできる。
金庫網による出荷調整ができる。
◎定置網漁のデメリット
入網する魚種、数量をコントロールできない。
決まった魚種だけを漁獲できない(狙った魚種以外の魚もとれてしまう) |
実際に北海道では、企業漁業などによる定置網漁の規制は極めて不十分で、大幅な漁獲枠超過があった一方で、国や道からの「行政指導」を順守して、漁獲上限を守っていた沿岸漁業者には連帯責任を負わせて、6年間漁獲割り当てゼロの罰則が与えられるという事態が起き、訴訟に発展しています。
しかし札幌地裁と高裁は、「農水大臣の裁量権の範囲だ」と正当化する不当判決を下し、原告漁民は現在、最高裁に上告し、たたかい続けています。
JCFU全国沿岸漁民連絡協議会はこの問題で、3月22日に国会内でフォーラムを開催。原告のマグロ引き縄漁の漁師、熄シ亮輔さん(焼尻島)や、行政法に詳しい神戸大学教授の島村健さんらが報告しました。
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報告する原告の熄シさん |
「私たちは資源管理そのものには大賛成だということを、最初に強調したい。やり方が問題なのだ」と口火を切った熄シさんは、提訴までの経緯を語り、定置網漁での混獲が北海道の漁獲枠を大幅にオーバーする原因となったことなど、規制の問題点を指摘しました。
コーディネーターを務めたJCFU事務局長の二平章さんは、「改定された漁業法では、マグロ以外の多くの魚種でも同様の規制を行うことが計画されている。この訴訟は全国の小規模・沿岸漁民にとって大きな意味を持つ」と述べ、全国からの支援を呼びかけました。
(新聞「農民」2022.4.11付)
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