「農民」記事データベース20220314-1496-10

アニマルウェルフェアから
ゲノム編集考える

第24回大豆畑トラスト運動交流会

 「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」は2月23日、都内で第24回大豆畑トラスト運動交流会を開き、会場参加とオンラインで全国を結びました。


運動を広げ、遺伝子組み換え・
ゲノム編集食品を拒否しよう

 生命もてあそぶバイテク動植物

 キャンペーンの小野南海子さんが開会あいさつ。「1996年に遺伝子組み換え大豆の輸入が始まり、私たちの食卓に登場したときに、国産の安全な大豆の生産を生産者・消費者の手で高めようと98年にスタートしたのが大豆畑トラスト運動です。大豆の自給率向上をめざしてさらに運動を広げましょう」と呼びかけました。

 第1部は、科学ジャーナリストでキャンペーン代表の天笠啓祐さんと、NPO法人アニマルライツセンター代表理事の岡田千尋さんとが「アニマルウェルフェアとゲノム編集」のテーマで対談。

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アニマルウェルフェアについて語り合う天笠さん(右)と岡田さん

 はじめに、アニマルウェルフェアとは何かについて、岡田さんが「動物における5つの自由」((1)飢えや渇きからの自由、(2)痛み、負傷、病気からの自由、(3)恐怖や抑圧からの自由、(4)不快からの自由、(5)自然な行動を行える自由)を列挙し、「5項目すべてを満たすことが必須」だと述べました。

生命操作は動物に
無用な負担をかける

 天笠さんは、鳥インフルエンザなど疫病が毎年のように起きている現状を示し、日本の飼育の現場がアニマルウェルフェアとは相いれないものになっていると警鐘を鳴らしました。

 次に「バイオテクノロジーとアニマルウェルフェア」のテーマに進み、生命操作されたゲノム編集動物をアニマルウェルフェアからどうみるかについて議論しました。

 天笠さんが、すでに日本で実用化・市販されている肉厚のマダイやトラフグをはじめ、実験段階にある筋肉隆々の豚やペット用のミニ豚、飼育しやすいように改良された角のない牛などゲノム編集動物の例をあげました。

 岡田さんも、人間の都合で不自然な肉付けになるよう品種改良されてきたブロイラー(肉用鶏)などの例を示し、「生命操作はアニマルウェルフェアと相いれない」と強調しました。

 遺伝子組み換えのための大豆畑

 最後に、世界の大豆畑について話が進み、「いま、遺伝子組み換え大豆はどうなっているのか?」について討論。天笠さんが、日本は遺伝子組み換え大豆の輸入大国であり、大豆の自給率が低い現状を批判。岡田さんも、南米アマゾンで広がる大豆畑が、遺伝子組み換え大豆栽培のためであり、除草剤を大量にまくことによる健康障害がアルゼンチンなどで深刻化している現状を批判しました。

 天笠さんが、アメリカで流通している高オレイン酸のゲノム編集大豆について、「バイエル社(モンサント社)が開発を進めた除草剤耐性大豆だが、まったく売れずに失敗に終わっている」と指摘。一方で、「日本はゲノム編集動植物実用化の動きが世界でも突出している」と語り、「大豆畑トラスト運動など、遺伝子組み換え・ゲノム編集食品・動植物はノーの運動を広げて歯止めをかけよう」と訴えました。

 開放型の畜舎と自給飼料の酪農

 2人の討論を受けて、コープ自然派兵庫理事長の正橋裕美子さんが、放牧で自給飼料の酪農、開放型の鶏舎や豚舎の畜産の取り組みを紹介し、生産者と組合員とが学習を積み重ねながらアニマルウェルフェアについての理解を深めていることを報告しました。


コロナ禍と天候に左右されるも
負けずに収穫

各産地からの報告

 第2部は、大豆畑トラスト運動生産地からの報告がありました。

 みのう農民組合(福岡県うきは市)と東総農民センター(千葉県匝瑳=そうさ=市)の報告の要旨を紹介します。

 コロナ禍のもと3回の交流実施

 みのう農民組合の坂本恵子さん

 昨年、トラスト運動は24年目を迎えました。参加費等を値上げし、参加者の減少が心配されましたが、前年と変わらない参加人数でよかったです。

 種まきは順調でしたが、お盆の時期には豪雨に見舞われました。幸い被害はなく、天候不順のなかでも無事収穫できました。イベントも、みそづくり、枝豆収穫祭、そして収穫祭の3回実施できました。

 収穫祭では、フランス出身で自然農に取り組んでいる山手ジェゴムさんによるお話し会が行われました。隣が不耕起栽培、無農薬・無化学肥料に取り組んでいる山手さんです。

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みのう農民組合の坂本さん(右)と山手さん

 雪の中で収穫 若手の手伝い

 東総農民センターの寺本幸一さん(生産者)

 大豆づくりは毎年天候に左右されます。いつもは年内で大豆の収穫は終わりますが、雨や雪で正月になりました。雪のなかでの収穫は初めてです。

 大豆づくりは、去年から息子に任せています。都会からの若い就農者も増え、コンバインで大豆の収穫を応援しています。収穫した大豆は、私のところに持ってきて、乾燥させ、選別機で大中小の大豆に分けます。

 刈り遅れた大豆は、鞘(さや)がはじけ、実が落ちてしまっているものも多く、収穫できない畑もあました。今年は、早めに収穫できるようにしたいと思います。

 今井睦子さん(東総農民センター職員)

 トラスト運動は24回目を迎えました。当初より、参加者は半分ほどになりましたが、自然の中で一緒に交流しましょうと参加を呼びかけ、楽しく交流できればと思っています。きなこやしょう油も値上げせざるをえませんでしたが、がんばって続けていきたいです。

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東総農民センターの寺本さん(右)と今井さん

(新聞「農民」2022.3.14付)
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2022年3月

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