東日本大震災
福島原発事故から11年
福島原発生業訴訟
最高裁原賠審の“中間指針”
上回る損害を認定
“国の責任”は今夏に判断
福島県北農民連 事務局長「生業を返せ、地域を返せ!」
福島原発訴訟原告団事務局次長 服部 崇さんに聞く
世界中の原発なくすまで、たたかい続ける
最高裁が東電の賠償責任を確定
国と東京電力の事故責任を問い、たたかっている「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)には福島県農民連の多くの会員が参加しています。
3月4日には最高裁で判決の一部が出され、東電の上告を棄却し、東電の賠償責任が確定しました。不十分ではありますが、原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)の「中間指針」を上回る損害が認められ、さらに原告以外にも共通して被害があることも認められました。これは原告だけでなく、被害者全体の救済や、賠償基準の改定にも弾みとなる画期的な成果です。
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首相官邸に抗議する服部さん(左から2人目)=2018年4月26日 |
汚染された農地に対策と支援を
しかし、国の責任は今夏に判決が下される見通しで、たたかいはさらに続きます。
私たちは、お金ではなく、原発事故への国の責任を認め、そして故郷をもとに戻し、二度と同じ事故を起こさないでほしい、という思いで訴訟をたたかってきました。
県北農民連のエリアは果樹栽培が盛んな地帯です。事故から11年たちますが、いまだに事故前の農産物価格には戻りきっておらず、毎月請求会を開催して、東京電力に賠償請求を続けています。
生産者は事故前の水準に戻そうと懸命に努力しており、中には努力が実って売り上げが戻った人もいます。しかし、東電はそうした農家の思いに向き合わず、賠償に不誠実な姿勢を取り続けています。
また、農民連は、農地の土壌の放射能測定を県内約1600カ所で行っています。特に果樹園は農地を耕さないことから、やや高線量になる事例があります。放射線管理区域以上の線量になる所も多く、国への要請行動でも毎回、農地一筆ごとの検査を国の責任で行うことを求めてきました。農家はこうした農地での農作業を余儀なくされており、対策を求めていますが省庁間でたらいまわしにされているのが現状です。
4月25日には国の責任を明らかにする口頭弁論が行われます。国の責任が認められれば、農地の汚染調査や農家の健康保障、条件不利地域となってしまった福島での農業生産への保障と支援制度を確立する運動にも大きな力となります。何より、原発ゼロの日本と世界を実現させる大きな力です。
ぜひ全国の農民連のみなさんにも注目していただき、支援をお願いします。
汚染水の海洋放出は許さない
今一番の問題に汚染水の海洋放出問題があります。国と東京電力は、多くの県民の反対を無視して来年の3月からALPS(アルプス、多核種除去設備)処理水を海洋に放出しようとしています。処理水といってもこの水には放射性物質のトリチウムが含まれています。
そもそも原発の敷地に流れ込んでいる地下水対策を強化し、処理水となる水量を減らせば、海洋放出は不要です。東電は地下水対策こそ早急に行うべきです。
全国のたたかいに力をもらって
長期にわたり放射能の影響が残る農民の立場に立ってたたかえるのは、農民連があるからです。新日本婦人の会との産直運動では、コロナ禍で直接の交流はできていませんが、電話やオンラインでの学習会でつながりを実感しています。
そして全国各地で今も行われている反原発のたたかいを聞き、あるいは3・11の学習会などに呼ばれるたびに私たちも励まされ、「福島の私たちも負けていられない」と力をもらっています。
終わりの見えないたたかいですが、世界の原発全てをなくすまでたたかうのが私たちの責任だと思っています。
(新聞「農民」2022.3.14付)
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