「農民」記事データベース20220307-1495-07

ゲノム編集トマト苗
学校に配布やめよ

各地で反対運動がすすむ


 ベンチャー企業のサナテックシードとパイオニアエコサイエンス両社は2022年から全国の福祉施設対象に、23年からは小学校を対象にゲノム編集トマト「シシリアンルージュ・ハイギャバ」の苗を無償配布する計画です。

 これに対して、この計画への反対を求めるオンライン署名を「OKシードプロジェクト」が募り、各地で苗配布に反対する取り組みが行われています。1月16日までに第1次集約として9195人分を両社と全都道府県知事、教育長、福祉担当者に署名を郵送し、27日にオンライン記者会見を開催しました。オンライン署名は継続中です。

 記者会見では、各地の取り組みが報告されました。要旨を紹介します。


知事・教育長・福祉施設・担当者に
署名集め、要望書、資料送付…

 “受け取る”の 回答自治体ゼロ

  久田徳二氏(北海道食といのちの会)
画像  2つのニュースを報告します。

 北海道当麻町でゲノム編集されていない従来のシシリアンルージュを年間4トン有機栽培してきた農業生産法人「当麻グリーンライフ」が、交雑がすでに起きた、または今後起きることを否定できないとして、今年からその栽培を全面中止すると決定しました。代表者は「遺伝子操作品種と交雑したら有機トマトとは言えない」と話しています。

 もう1つはゲノム編集トマト苗の配布を止めてほしいという運動の中間集計結果です。北海道の全179市町村に要望書を送付し、回答を求めた結果、1月中旬までに42自治体・50部局が回答し、14自治体・16部局が「受け取らない」と答えました。「受け取る」とした自治体はゼロでした。

 受け取らない理由として「安全性が確認されていないこと」等があげられています。これまでの回答記述は多様ですが、予防原則に基づいて自主的判断をしている自治体が多いことがわかりました。情報を伝えれば「受け取らない」という判断になるでしょう。知らせていくことが重要です。

画像
「ゲノム編集トマトは配布するな」と記者会見をする「北海道食といのちの会」=2021年12月2日


 トマト生産盛ん 交雑心配の声も

  國本さとこ氏(くまもとのタネと食を守る会)
画像  安全性が確かめられていないものを子どもたちに提供することには反対です。熊本がこのゲノム編集トマトの産地になったことをニュースで知って、パイオニアエコサイエンス社に問い合わせをして生産の様子を見学させてほしいと申し入れましたが断られました。

 熊本はトマト生産が盛んで交雑を心配する声があり、パイオニアエコサイエンス社にも多く問い合わせが寄せられましたが、いかなるときも同社は答えないことに驚きました。

 後日、ウェブサイトに返答が掲載されましたが、交雑しても法的に何も問題ないという趣旨のものでした。

 熊本は有数のトマト産地で、有機JASの生産農家が200戸以上います。パイオニアエコサイエンス社は「法的問題がない」で終わらせずに誠意ある対応を求めたいと思います。


 説明資料を配布 署名運動も予定

  中里千恵氏(菊池市の学校給食を考える会・熊本)
画像  菊池市内の福祉施設にゲノム編集トマトを受け取らないことを求める要望書とゲノム編集の問題をわかりやすく説明した資料を配布しています。

 配布した2つの施設の方たちからは共感していただき、そうした危険のある苗は受け取らないという返事をいただきました。4月からは小学校に苗を受け取らないことを求める署名運動も開始する予定にしています。


 食の安全と種子 条例制定求めて

  佐久間雅子氏(種子を守る会香川)
画像  香川で食の安全と種子条例の制定を求めて活動しています。ゲノム編集トマト苗の配布には疑問を持っています。子どもや障がいのある方に提供するのはなぜなのか?

 トマトの苗を育てるだけで終わらせずに食べることになるでしょうが、子どもたちで高血圧のケースは少なく、何のためなのか疑問です。会の親の中には自分の子どもの小学校の校長先生と直談判している人もいます。

 県内の三木町の教育長は町議会で受け取らないことを明言しました。香川17市町村すべてに要望書と回答書の2つとOKシードプロジェクトのガイドブックを提出する予定です。


 要望書・回答書 全市町村へ配布

  後藤咲子氏(食べもの変えたいママプロジェクトみやぎ〈食べママみやぎ〉代表、あいコープみやぎ理事)
画像  食べママみやぎは米国で遺伝子組み換え食品に反対する活動を行っているゼン・ハニーカットさんとの交流から生まれた団体です。

 あいコープみやぎではOKシードマークを11月から使い始めました。生産者の方とは密にやりとりしてきたので、可能になりました。そして宮城県内すべての市町村にゲノム編集トマトの苗を受け取らないことを求める要望書・回答書を配布する活動を始めました。3月1日提出をめざして活動しています。

 教材はおとなが選ぶもの。子どもには選択の余地がありません。福祉施設のみなさんも同じです。食品としての安全性調査や環境影響調査すらしていないものを受け取らせようというのはあまりに強引です。子どもをまきこまないようにしてほしいです。


23自治体に送付「受け取る」は0

徳島

 記者会見では、資料として「食と農を守る会徳島」(柴田憲徳代表)による「ゲノム編集トマト苗を受け取らないように、また学校給食にもゲノム編集した材料は使用しないことを求める要望書」が配布されました。

 徳島県農民連の天羽生美さんのコメントを紹介します。

 「食と農を守る会徳島」には、県農民連の会員も個人会員として参加しています。

 パイオニアエコサイエンス社がゲノム編集トマトを開発し、教育施設への配布を計画しているもとで、「食と農を守る会徳島」は1月24日付で徳島県の23の自治体と教育委員会に対し、ゲノム編集トマトの苗を受け取らないようにとの要望書を送付していました。県農民連もこの要望に賛同団体として加わっています。

 2月18日までに回答を求めていましたが、回答の内容は「受け取らない」が12、「その他」が11、「受け取る」はゼロでした。

 「食と農を守る会徳島」は今後、それぞれの地域で保護者や市町村、教育委員会へ働きかけることを呼びかけています。

(新聞「農民」2022.3.7付)
ライン

2022年3月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2022, 農民運動全国連合会