参議院選挙に向けて
市民と野党の共闘の
発展をめざして
(下)
渡辺治・一橋大学名誉教授に聞く
各分野・地域から
運動を積み上げよう
政権共闘をめぐる本格的な攻防が始まる
総選挙での立憲民主党の議席後退は、野党共闘のせいだという宣伝をマスコミは繰り返し流していますが、共闘のせいではありません。自公の合計得票率に対し立憲単独はもちろん野党4党合計でも上回ることができたのは、全都道府県でみても、伯仲の沖縄(自公44・63%、野党4党44・37%)を含めてゼロでした。ですから、共闘がなければ大惨敗していたことは明らかです。
立憲民主党の議席の大幅後退の要因は比例議席の大幅減にあります。立憲は、小選挙区では共闘のおかげで48から57へと増えたのですが、比例で62から39へと23議席も減らしたからです。立憲は昨年、国民民主党や無所属議員との合流で議員数を倍近くに増やしたにもかかわらず、国民の支持は増えませんでした。
選挙直前での政権共闘の成立で、支配層は本格的に危機感を抱き、メディアも動員し、政権を挙げての共闘攻撃が行われました。自治体首長、議員、企業、ゼネコンを総動員し、小選挙区でのテコ入れと巻き返しを図ったのです。こうして、今度の総選挙では、政権共闘をめぐる攻防の時代が始まったと言えます。
改憲勢力の3分の2を許すな
総選挙を踏まえた市民と野党の共闘の課題
総選挙後、改憲問題は新局面を迎えています。
総選挙で日本維新の会が伸長し国民民主が共闘から離脱するなど、改憲への積極的な発言も相次いでいます。
これに勢いを得て、岸田政権の改憲、9条破壊の策動が一層強まっています。
1月の日米2+2会談で、敵基地攻撃能力保有をはじめ日本の防衛力を「抜本的に強化」するなど日米軍事同盟の強化の合意がされ、それに沿った国家安全保障戦略改定、防衛計画の大綱改訂の作成が準備されています。22年度予算での「敵基地攻撃能力」保持の装備、防衛費の大幅増額とともに、辺野古基地建設、南西諸島への自衛隊ミサイル部隊配備などの動きも強まっています。
明文改憲を進めるため憲法審査会の定例開催の動きも加速しています。
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「改憲を許すな」と声をあげる総がかり行動の参加者=2月19日、国会前 |
共闘をめぐる逆流やジグザグは必ず起きますが、改憲を阻み、自公政治を変えるには共闘の道以外にありません。
まさにいま、政権を目指す共闘の第2ラウンドが始まったといえます。
当面の焦点は、岸田政権による改憲、9条破壊に市民の運動と共闘で立ち向かうことです。総選挙での国会の力関係の変化を踏まえると、市民の運動、共闘が決定的に重要になります。
そして今年7月に予定されている参議院選挙で改憲勢力3分の2を許さないためにも、改憲阻止をめざす市民の運動を積み重ね、地域・草の根から共闘を強化していくことが求められています。
農業分野での共闘へ農民連に期待
参議院選挙は、共闘の運動にとっても試金石だと思います。自公と野党の力関係ひっくり返すには、まず野党各党の支持=得票を増やす活動が重要です。
そして、共闘を支える改憲阻止の市民運動をはじめ、労働、医療・社会保障、農業など各分野の運動を強めることが必要です。
さらに、地域での個々の運動でも、自公政権に代わる政治のあるべき姿を早くから国民の前に示し、それを目指すことが求められます。
そのためにも共闘の運動を強化し、市民連合などが地域を変える共同の構想づくり、地域政策をつくること、改憲阻止のための共同の運動から共闘をつくり直すことが重要です。
農民連のみなさんには、新自由主義的な農政に代わる農業政策を示し、それに向けた農政を実現していく運動と力を強めることが求められています。
野党共闘のなかでの農業分野で果たす農民連のみなさんの役割に期待しています。
(おわり)
(新聞「農民」2022.3.7付)
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