「農民」記事データベース20220214-1492-01

農民連女性部第33回総会

持続可能な農村と社会へ
農村女性の輪を広げよう

環境脳神経科学情報センター
木村―黒田 純子さんが講演


食べる人にも、作る人にも、
環境にもやさしい農業を…

 農民連女性部が1月29日、第33回総会を開きました。新型コロナウイルスのさらなる感染拡大により2年連続でのオンライン開催となりましたが、全国27都道府県、240人が参加・視聴し、笑いあり、涙あり、前進あり、悩みあり…と、各地域での奮闘と模索を交流しあい、ほろりとしながら全国みんなでつながり合った総会となりました。

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笑顔でエールを交換する参加者たち

 消費者と一緒に考え学び

 環境脳神経科学情報センターの木村―黒田純子さん(医学博士)が、「食べる人にも作る人にも、環境にもやさしい農業を〜ネオニコチノイド、グリホサート問題から考えよう〜」をテーマに、記念講演しました。

 木村―黒田さんは、日本での農薬の使用状況や、急増している子どもの発達障害とネオニコ系農薬やグリホサートとの関連などを、豊富なデータを使って紹介。2つの農薬がどのようなしくみで人や生き物の健康に毒性となるのかをていねいに説明しました。

 さらに、世界の農薬規制をめぐる動きや、日本の農薬の安全基準の決め方の問題点などにも言及しつつ、「農薬は“薬”ではなく、何らかの生物を殺す殺生物剤で、基本的に毒物。そのため生態系を破壊したり、人間にも毒性をもつことがある」と強調し、農民連の食品分析センターとアグロエコロジーの取り組みに、大きな共感を表しました。

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木村−黒田純子さんの講演資料から。
「グラフの一致は、相関性を示すもので、因果関係を示すものではありませんが、無視できません。調べてみると、有機リン系農薬をはじめとする農薬ばく露は、脳の発達に悪影響を及ぼす疫学研究や動物実験が多数報告されています」(木村-黒田純子さん)

 農民連女性部から、3人の農業女性が、自らの環境に配慮したもの作りの実践と模索の様子を、事前に撮影された動画で報告しました。

 愛知県豊橋市の柿農家の原田愛子さんは、害虫被害のある実は商品価値が下がってしまう実態を語り、農民連分析センターでの残留農薬検査の活用などの工夫を紹介しました。

 埼玉県さいたま市の野菜と稲作農家の浅子紀子さんは、除草シートやマルチを活用した無農薬の野菜作りと、平飼い養鶏を紹介し、気候変動が深刻化するなかで、生産農家として環境に配慮した農業への熱い思いを話しました。

 神奈川県大和市の野菜農家の煖エマス子さんは、周囲が宅地化するなか、消費者との産直で農薬に依存しない栽培ができている様子を報告し、「環境にやさしい農業を実現していくには、消費者にもっと農業の現場を知ってもらい、一緒に考えてもらうことが必要」と訴えました。

 今こそ“一人ぼっち”なくそう

 女性部事務局長の藤原麻子さんが、議案を提案しました。

 市民と野党の共闘が大きな力を果たした総選挙や、米を守る運動など昨年からの動きを振り返りながら、女性部でもアグロエコロジーや、「女性による女性の相談会」などへの食料支援、ジェンダー学習会などに取り組んできたことを報告。

 今後もこれらの運動を発展させるとともに、種子を守る運動やジェンダーアンケートの実施などを提案。「いま農村でもコロナ禍で身も心も傷ついて悩んでいる女性はたくさんいるのではないでしょうか。“一人ぼっちの農村女性をなくそう”が私たち農民連女性部結成以来の呼びかけです。一人でも多くの女性に声をかけ、持続可能な農村の実現をめざして、政治を変える力にしていきましょう」と呼びかけました。

 女性のつながりが地域を変えた

 討論では、10人が発言しました。

 埼玉農民連女性部の伊澤潔美さんは、埼玉農民連東部センターで取り組んだ米価下落対策を求める運動について報告。請願採択を拒んだ自民・公明両党候補は衆議院選挙で苦戦を強いられる原動力となったこと、加須市独自の10アールあたり3500円の次期作支援金へと結びついたこと、さらに現在では同様の自治体による米農家支援が県内35市町へと広がっていることを報告しました。

 福島県の安達地方農民連の野地友子さんは、一昨年の持続化給付金申請の取り組みで、会員数が240人から621人へと増加したことを報告。「昨年の総選挙に決起するなかで、女性部であらためて新しい会員さんを訪問した。女性同士、すぐに打ち解けて要求や思いを聞くことができ、野党統一候補の復活当選の力にもなった」と語りました。

 また、消費者を招いた「あだたら食農スクールファーム」にも触れながら、アグロエコロジーの学習にも取り組んでいくほか、3年後には農民組合の役員の半数を女性にする目標にも挑戦中だと抱負を語りました。

 また福島県農民連女性部の横山真由美さんが、学校給食に地元産の有機農産物を使用させる取り組みについて、会津農民連女性部代表の渡部よしのさんの発言原稿を代読しました。

 困窮する女性たちに思い寄せて

 女性相談会への物資協力の取り組みも相次ぎました。奈良県農民連女性部の宮本静子さんは、昨年12月の女性相談会に向けて、集落の人から分けてもらった獅子(しし)ユズを使って、レシピをみんなで試作し、7人の女性部員で手分けしてジャム加工したことを発言。

 山口県の世良えみ子さんは、相談会のたびに地域の女性たちに声をかけ、山へワラビを取りにいったり、台風に備えて急いで収穫したキュウリを提供したり、みんなで少しずつ農産物を持ち寄って、「少しでも困窮した女性たちの力になれば」と送り出してきた取り組みを報告しました。

 総会の最後に、参加者みんなで画面越しにプラカードを掲げて元気にエール交換し、閉会しました。

(新聞「農民」2022.2.14付)
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2022年2月

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