米価問題で対談
MA(ミニマム・アクセス)米の
見直しを
長野県松川村 平林明人村長と
農民連 長谷川敏郎会長
農民連の長谷川敏郎会長は12月21日、信州安曇野に位置し、北西部には北アルプス連峰がそびえる農業と観光の村、長野県松川村を訪れ、平林明人村長(県町村会副会長)と米問題で対談しました。
米づくりで村を元気に
長谷川 昨年10月31日投開票の衆議院選挙は、米価暴落など米危機のなかで行われました。私たちは、過剰米を買い入れ、食べたくても食べられない人々への食料支援に回すことを政府に求めて運動を展開し、各地で野党統一の候補者と政策協定を結び、米問題を争点に押し上げてたたかいました。
11月25日には、東京で米危機打開中央決起集会を開催しました。聞くところによると、翌日の26日に長野県町村会のみなさんが上京し、国会議員要請をされたそうですね。
その場で平林村長が米価の問題で発言され、堂々とミニマム・アクセス(MA)米を批判されたと、国会議員の方々からお聞きして、懇談をお願いしました。
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米づくりで対談した平林村長(左)と長谷川会長 |
減反するしないは村民の判断で
平林 私も自分で田んぼをやっています。4年前に国が自治体に生産調整(減反)の割り当てをしてきましたが、それに伴う交付金などは何もなかった。それならば、国の政策に乗らないで、自分たちでつくりたいものをつくろうではないかと考えました。
村は、生産数量目標を示すけれども、減反をやる、やらないは村民のみなさんの判断にお任せするということで、同意していただいています。
長谷川会長がおっしゃるように、とくに昨年は、米価が2000円も下がるたいへんな状況でした。町村会の要請の中で、国会議員を前に「米は余っているけれども、足りないところがいっぱいある。そんなときに無理にMA米77万トンを輸入しないで、足りないところに回してほしい」とお願いしました。
国会議員にどう思われようと、村民のためになれば何でも言うべきだと思っています。
長谷川 衆院選では、岸田内閣も「15万トン特別枠」を言い出さざるをえない状況に追い込まれました。MA米も全量輸入義務ではないのです。それが主食米やみそ、せんべいなどの加工品に使われ、米の需給に大きく影響を与えています。
「米プラス米」で農家所得を安定
平林 米が本当に必要な国があるのだから、MA米はそこに回せばよいのです。松川村は米でここまで発展してきました。国は「米がだめなら他の作物がある」と言い、「米プラス他の作物」を推奨します。
しかし、農家にはさまざまな事情があります。村は兼業農家が多く、「米プラス他の作物」と言われてもできません。米づくりをやめてしまえば離農が増える。こうして荒廃農地が増え、美しい景観が崩れてしまいます。
そのため、私たちは「米プラス米」とも言っています。これまで基盤整備をして米をつくるようにしてきました。機械もすべてそろっていますし、米でやらせてもらえれば一番ありがたい。主食用米や酒米を維持しながら、加工用米に産地交付金を活用するなど、農家の所得を安定させてきました。
村の酒米で造られたお酒は即売会などのイベントではすぐに完売になるほど人気で、ラオスや台湾などにも輸出しています。
国にはっきりもの言う姿勢に共感
長谷川 田んぼがなくなれば里山もだめになり、生態系、農村の風景が破壊されます。農水省は「みどりの食料システム戦略」を発表しましたが、その中身は田んぼの中しか見ていない。念頭にあるのは、大規模な有機農業であり、AI(人口知能)やドローンを使った、農民のいない農業です。
平林 村はいま松川村の米を食べてもらおう、消費してもらおうと努力しています。一昨年11月から学校給食に有機米を2カ月に1度提供してきましたが、昨年11月、子どもたちの要望や生産者との懇談を受けて毎月1回に増やしました。有機米の生産には、村の農民連のみなさんにも協力してもらっています。
長谷川 村長が農家に寄り添って、生産を刺激する方策を実施するとともに、農家の声を国に届けているのはすばらしいことだと思います。
平林 言いたいことは言っておかないといけない。先の選挙で地元から野党統一で当選した下条みつ衆院議員(立憲民主党)にも米の問題を国会で取り上げてもらえるように働きかけています。
米価下落対策、MA米の見直し求めて農家のみなさんとともにがんばります。
(新聞「農民」2022.1.17付)
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