地球の気温上昇を1.5度に抑えよう
今後10年が決定的に重要
温室効果ガス排出
2030年までに45%減
50年までに実質ゼロへ
「洪水や干ばつなど気象災害の件数が過去50年間で5倍に増えた」「2010年代の気象災害による経済損失額は、1970年代の7倍に及ぶ」「今後、気候変動によって気象災害はより頻繁に、より激しくなる」――今年6月、国連の世界気象機関(WMO)がこんな内容の報告書を発表しました。気候変動の影響をいかに小さく抑えるのか。イギリス・グラスゴーで10月末から11月にかけて開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を中心に、気候変動対策をめぐる世界と日本の動きに注目しました。
“首の皮一枚”でつないだ人類の未来
温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」では、産業革命前からの世界の気温上昇を2度未満に抑えることを目標に、1・5度を努力目標としてきました。しかし「1・5度の方がはるかに被害は小さくなる」と明らかにしたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告書や、水害や森林火災など近年の気候危機ともいえる脅威が深刻化していることを受け止め、COP26では事実上、1・5度に目標を強化することが合意されました。
また、1・5度未満を達成するには、2030年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を10年比で45%削減し、50年頃には実質ゼロにする必要があることも合意文書に書き込まれ、不十分ながらも重要な一歩を踏み出すことになりました。
この1・5度目標を達成するには今後、10年という短期間に急激で大規模な削減がされなければなりませんが、現在の各国の削減目標では2・7度も上昇してしまいます。1・5度目標に見合うよう、いかに各国が目標を引き上げるか――これも大きな課題でしたが、こちらは不十分なままの閉幕となりました。
「1.5度目標」言及せず 石炭火発増の日本政府
そしてCOP26では石炭火力発電も大問題となりました。議長国イギリスのジョンソン首相は、COP26の前に石炭火力発電について、「先進国は30年に廃止、途上国は40年に廃止」を要請。最終的な合意文書では「段階的に削減」という文言に弱められましたが、それだけ石炭が温暖化の最大要因だと世界中で認識されていることを示すものでした。
こうしたなか、日本の岸田首相が3日目に議場で演説しました。ところが1・5度に向けた目標強化への言及もなければ、石炭火力の廃止にもふれず、むしろ現時点では化石燃料からつくられるアンモニアや水素を火力発電で混焼し、それを国内だけでなくアジア諸国にも展開すると発言。
これは事実上、石炭火力発電を延命させようとするもので、国際的に猛批判にさらされ、交渉の足を引っ張る不名誉な国へ送られる「化石賞」を受賞してしまいました。
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「化石賞」の授賞式 |
そもそも日本で石炭化発が増えたのは、自民党政権のもと90年代から拡大が始まり、2000年代に入って規制改革会議の成長戦略で原発と高効率石炭火力発電が輸出戦略に位置づけられ、福島原発事故後もこの輸出戦略が維持されてきたからです。
「先進国は30年までに廃止」が訴えられている今なお、日本では大規模石炭火力発電所の新設計画が多数、進行しており、10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画の30年の電源構成でも石炭火力が19%も残る計画になっています。まさに驚くべき「石炭中毒」(グテーレス国連総長は昨年2月、日本を名指しでこう批判した)です。
日本政府は今こそ、第6次エネルギー計画を見直して、石炭火力発電を段階的に廃止し、再エネ・省エネを飛躍的に推進させる政策に転換すべきです。
気候変動は民主主義の問題だ
社会システムの変革求める青年たち
気候変動問題の前進を求める世界の人々の運動も、大きく発展しています。
青年グループ「フライデーズ・フォー・フューチャー」の代表として、COP26の市民行動に参加した高校2年生の原有穂さんはNGOの報告会で、「グレタ・トゥーンベリさんのようなヨーロッパ人よりもラテンアメリカやアフリカなど、気候変動で最も影響を受ける人々が運動の中心を担っていたのが、とても印象的だった」と言います。
同じくCOP26に参加した大学2年生の酒井功雄さんは、「気候難民や南北格差など、気候危機の影響は貧しい人々に、不平等に表れている。気候危機を引き起こしたのは、自然も人も収奪してきた植民地主義的経済システムだ。民主主義や人種問題など根本的、構造的なところからの是正を求める声が市民集会には渦巻いていた」と報告しました。
休刊のお知らせと新年号のお届け
次号の12月27日付は休刊にします。
次週は2022年1月3・10日付合併号(新年号)を1週間早くお届けし、年末年始の配達はありませんのでご了承ください。
(新聞「農民」編集部)
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(新聞「農民」2021.12.20付)
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