滋賀
来年度から100%県産小麦を使用
学校給食パン
県内全小中学校など約300校で実施
滋賀県内の学校給食で提供されるパンの原料が2022年度から全量県産小麦となります。提供されるのは、県内全19市町の公立小中学校、特別支援学校、定時制高校の計約300校です。保護者や生産者らの思いが実現しました。県産100%を求めてきた関係者の歓迎の声を紹介します。
安心して食べさせられる
新日本婦人の会滋賀県本部
篠崎由紀さん
「輸入小麦からグリホサート」記事読み
県や市に県産小麦をと要請
新日本婦人の会滋賀県本部と大津支部は、新婦人しんぶんに載った、農民連食品分析センターが検出した「輸入小麦のパンからグリホサート」という記事(2019年8月29日号)を読み「これは大変」と、大津市の学校給食課に懇談に行きました。
対応してくださった担当者によれば「子どもたちに安全・安心なものを食べてほしいが、県の学校給食会のパンを使っているので、市では変えられない」ということでした。
そこで、県の学校給食会に給食のパンを滋賀県産もしくは国産にできないかと要望に行きました。お母さんと小さなお子さんも一緒に行ったこともあり、温かく迎えていただきました。その時は「県内産100%をめざしているが、小麦粉の供給量の関係で、今は11カ月のうち、2カ月間は国産8割・県産2割のパンを提供している。20年度からは3カ月間に増える。いずれ100%にしたいけれど、小麦の供給量と価格が上がることが課題」と返答してくださいました。市と県で実際に担当してくれている方は「子どもたちに安全な食べ物を」という気持ちでお仕事をしておられ、目指すところは同じだと感じました。
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みんなで県に要請に行きました=2019年11月27日 |
その後、19年、20年の年末の滋賀県民要求実現実行委員会の個人請願運動では保護者・元教員の方が「学校給食のパンを県産小麦を原材料としたもので実施できるよう、材料費補助や栽培の推奨など、県の補助をしてください」という請願を出しました。
また、各市の教育委員会に要望書を出し、輸入小麦の農薬の問題を訴えました。
その後は、コロナの感染拡大で要請には行けていませんでした。今回の県産小麦100%使用のニュースにはびっくりしました。準備を進めてくださった県や農協のみなさんに感謝です。
保護者・生産者らの思い実る
保護者から歓迎の声続々、ツイッターでも反響
保護者から寄せられた声を紹介します。
「実現のために動いてくださった方に『ありがとう』という気持ちがいちばん。安心して給食を食べさせてあげられるのでうれしい」
「関西でも珍しい小麦の生産地、滋賀ならではの味を子ども達に食べさせてあげられるのがうれしいです!」
「子どもたちのパンは国産小麦のものを買うようにしてきました。給食は9年間の楽しみであり、体を作るもの。パンを通して、子どもたち、保護者が滋賀の小麦農家に思いをはせるはず」
「学校でこのような配慮をしていただけることはうれしい。農家の潤いになればなお喜ばしい」
「農薬やポストハーベストも気になっていました。国産、しかも地元の小麦粉100%は安心」
また、ツイッターでつぶやくと、全国から予想以上に反応があり、「うれしい。素敵」「これは、素晴らしい」などのコメントもあり、600以上リツイートしてもらいました。
今も毎日少しずつ“いいね”が広がっています。
県産選んでもらえる喜び
生産仲間を増やしたい
農業法人「株式会社イカリファーム」
代表取締役 井狩篤士さん
来年度から学校給食に県産小麦が100%使われるようになりましたが、これまでは少量では製粉業者が扱ってくれないことなど、苦労がありました。
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井狩さんは約70ヘクタールのほ場で小麦を生産しています |
パン用の小麦「ミナミノカオリ」と「ゆめちから」を作っていますが、もっちりと甘みのあるパンができます。他の生産者にも声をかけて、生産する仲間を増やしてきました。
なによりも子どもたちが輸入小麦でなく、ポストハーベスト(農薬の収穫後散布)のない安全・安心な県産の小麦を選べるようになったことがうれしいですね。国産食材を食べ、自給率向上にも貢献するという食育にもつながります。
私もニーズに応えられるよう、生産量を増やし、保管倉庫も新たに建設中です。多くの生産者に呼びかけて、増産していきたいと考えています。
小麦の自給率向上に貢献
県産使用へ引き続き運動
滋賀県農民連
田口源太郎会長
県内の学校給食パンに県産小麦が100%使用されることになったのは新日本婦人の会のみなさんや県食健連をはじめ農協、各団体の運動の成果です。
県内でもパン用の小麦の品種が限られているなかで実現したことは大きな意義があります。
小麦の自給率が低いもとで、さらに自給率を上げるとともに、他の農産物でも給食に県産のものを使うよう、引き続き運動していきたいと考えています。
(新聞「農民」2021.12.13付)
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