維新は単なる「補完勢力」
ではなく「悪政の突撃隊」
新自由主義政策目白押しの
「維新八策2021」(選挙公約)
総選挙で41議席を獲得し、自民党、立憲民主党に次ぐ第3党になった「日本維新の会」。大阪を拠点とし、農村ではなじみが薄い「維新」とは、一体どんな政党なのか?
維新の選挙公約「維新八策2021」「日本大改革プラン」を見て驚くのは、自民党以上に自民党的な政策を列挙していること(表)。同党の合言葉は「身を切る改革」ですが、これでは“国民と農民の身を切る改革”です。
「自助・共助・公助」
まず、維新が「目指す国家像」としてあげているのは、菅前首相とウリ二つの「自助・共助・公助」。そして「公助」による支援は「既得権を排し真の弱者支援に徹する」ことを、わざわざ強調しています。国民に冷たい新自由主義むき出しです。
コロナ感染拡大で医療がひっ迫した際に、菅前政権は「自宅療養」を基本とする「自助」方針を打ち出し、病院にもかかれずに自宅で亡くなる方々が相次ぎました。また、維新幹部が知事・市長を務める大阪はコロナ死者数ワーストワンでした。入院という「既得権を排し」た結果なのかと言いたくもなります。
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「日本維新の会」衆院選マニフェスト |
「農業つぶしの突撃隊」
農業政策では、単なる「自公政治の補完勢力」にとどまらず、「悪政の突撃隊」として、自民党もビックリするほどの政策を列挙しています。安倍・菅政権が強行した官邸農政は、規制改革推進会議などにアメリカと財界の要求をストレートにぶつけさせ、自民党がそれに「抵抗」するふりをして落とし所を探りながら、戦後農政解体に導くというものでした。
しかし、維新はもっと露骨に家族農業経営と日本農業の解体を要求しています。まさに「悪政の突撃隊」です。
(1)米政策
自民党でさえ「15万トン特別枠」というインチキ対策を打ち出していますが、維新の政策には米価暴落対策は全くありません。それどころか「減反政策の廃止を徹底」すると主張しています。
2018年に政府が米の生産調整から撤退して、米の需給と価格安定の責任を放棄したところにコロナが襲ってきて需要が激減し、米価が暴落した――これが事態の本質です。
しかし、維新の政策は、暴落に耐えるのは農家の自己責任、さらに減反政策の廃止を徹底して米生産そのものを崩壊させてもかまわないという無責任な主張だといわなければなりません。
(2)貿易自由化
米過剰のさなかにミニマム・アクセス(MA)米を77万トンも輸入していることについて、維新の政策は一言もふれていません。維新お得意の言葉でいえば、MA米はアメリカの「既得権益」ですが、国民には「身を切る改革」を求めてもアメリカには一切求めない――この党の本領発揮です。
それどころか、「TPP(環太平洋連携協定)を基軸に世界規模での自由貿易を推進する」とまで主張しています。
(3)農協改革
家族農業経営と日本農業を守る戦後農政の大きな柱は農地法と農協法ですが、維新は、これに対する攻撃を執拗(しつよう)に行ってきました。
とくに農協改革では▼地域農協から金融部門を分離し、株式会社化して農協を解体する、▼農協に対する独占禁止法の適用除外を廃止する――ことを要求しています。
農協は家族経営農家の協同組合です。地域農協にとって金融は不可欠な部門であり、利益本位の株式会社化は協同組合の自己否定にほかなりません。協同組合に対する独占禁止法の適用除外は、国際的に当たり前に認められています。
アメリカと財界は長年、日本の農協の貯金や共同購入・販売事業を奪うことを狙ってきましたが、この要求を丸呑(の)みにしたのが規制改革推進会議答申でした。維新の政策は、この答申のモノマネにすぎず、農家・農協の強い反発で半ば以上は否定された“古い歌”の蒸し返しにすぎません。
維新の本質を明らかに
維新は、暴言、汚職、セクハラ事件で除名処分者を続出してきた政党です。19年5月には「北方領土を返還するには戦争をしなければならない」と暴言して丸山穂高衆院議員が除名され、20年1月には下地幹郎衆院議員が、統合型リゾート施設事業の汚職事件で除名処分になったのは、その一端です。
いま維新は「憲法改正に正面から挑む」と叫び、「来年の参院選投票日に憲法改正の国民投票を実施すべきだ」と主張しています。
いかがわしさとはったり、新自由主義の牙城、改憲策動の後押し――維新の本質をしっかりつかみ、来年の参議院選挙に向けて国民に広く明らかにするときです。
(新聞「農民」2021.11.22付)
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