TPPプラスを許さない共同行動「学習会」
「みどり戦略」の背景と問題点
農政ジャーナリストの会会長 行友 弥さん
「TPPプラスを許さない!全国共同行動」は10月28日、オンラインを併用して「みどりの食料システム戦略」を考える学習会を開きました。講師は、農政ジャーナリストの会会長で農林中金総合研究所の行友(ゆきとも)弥さん(元毎日新聞記者)です。
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報告する行友さん |
生産力の向上と持続性追う戦略
行友さんは、農水省の「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)が「生産力向上」と「持続性」の二兎(と)を追う戦略だと述べ、「それは『食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーション(技術革新)で実現』というサブタイトルに本質が言い表されている」と述べました。
次に、みどり戦略が掲げる現状と課題として、農業・農村の衰退(生産者の減少・高齢化、地域コミュニティーの崩壊)や地球温暖化とそれを背景に頻発する大規模自然災害への対応、SDGs(国連持続可能な開発目標)や環境問題への対応などをあげました。
さらに、国際ルール策定への参画という理由から国連食料システムサミット(9月)を意識し、環境対応でも欧米に主導権を奪われるという農水省の「焦り」があることを述べ、「生産力の向上をうたった新旧の『食料・農業・農村基本計画』の路線を接ぎ木した上に、脱炭素、SDGs、コロナ禍といったさまざまな要素を盛り込んだ“モザイク”的な内容だ」と指摘しました。
スマート農業で企業農業に有利
さらに、行友さんは、「イノベーション重視路線は企業的農業に有利ではないか」と問題提起し、「スマート農業(AI〈人工知能〉・ロボット・ドローン・リモートセンシング・GPSやGIS・農業クラウドなど)で農薬や化学肥料の使用を抑制するとあるが、そうした設備投資にお金をかけられる大規模農業者や企業が優遇される結果になるのではないか」と懸念を表明しました。
最後に、行友さんが考える「もう一つのみどり戦略」として、(1)生産から消費までの時間と輸送距離を縮め、貿易は輸入だけでなく輸出も減らす、(2)「地産地消・地消地産」の推進で極力「地域内自給」を目指す、(3)生産者と消費者がモノ・カネだけでなく人間的につながる、消費者は「援農」も含め生産者を支え、生産者もそれに応えて良いものを作る、産消提携やCSA(地域支援型農業)など、社会全体で「農業と環境の調和」を支えていく態勢を作る――などの提言を述べて結びました。
農薬企業と市民とのせめぎ合い
続いて、食政策センタービジョン21の安田節子さんが「食料システムサミットは農薬削減をめぐる闘い」と題してコメントし、「サミットが農薬企業と市民とのせめぎ合いの場」だと指摘。サミットに農薬企業連合が参画し、企業間または官民連携で遺伝子組み換え作物やゲノム編集技術を推進し、デジタル技術や知的財産の強化などで食料・農業支配を企んでいることを批判しました。
(新聞「農民」2021.11.15付)
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